70-80年代ロック/ポップスをこよなく愛する私だが、一方で日本の歌謡界においてお茶の間を賑わすことなくフェードアウトしていった数多くの歌手達に興味を持った時期があった。

 

しかしやっぱりというか、ほとんどは奇を衒っただけだったり二番煎じで新鮮味がなく歌も素人のカラオケ程度で、表舞台に出るにはあまりに芸が無さ過ぎというものばかり。

 

しかし後になって彼・彼女らのレコード・ジャケットを昭和の遺物として眺めるのは案外と楽しい。ここに2007年に発売された「歌謡曲番外地」なる本がある。結構面白いのでほんの一部だが抜粋して紹介したい。

 

 

トップバッターは 杉本エマ。

小山ルミ、ゴールデン・ハーフらと同じくフジTV「ビート・ポップス」のゴーゴー・ガールや「11PM」等を経て、雑誌モデル、女優、歌手としてまあまあ活躍した。CD化された彼女のシングル盤「好き(1975.4)」がオマケで付いている。

「歌唱はもちろんのこと詞も旋律もアレンジもジャケットも全てが完璧。歌謡曲の奇跡。または奇跡の歌謡曲」とベタ褒めで紹介されている。

 

果たして ”完璧な歌謡曲” かどうか、まずはお聴きあれ。

 

 

 

でしょう? こんなもんです。だから歌謡曲番外地。

 

「歌」はせいぜいこの程度だから、やっぱりジャケット写真で昭和歌謡の陰を眺めているのが楽しかろうと思う。

 

左:キューピット/テレパシーLOVE(1978.12)

ザ・ピーナッツの亜流、同性愛路線じゅんとネネへのオマージュ、ピンク・レディー等、見世物小屋風の興業路線を全て詰め込んでのシングル5枚をリリースした後に解散。

 

右:ラヴ・ウィンクス/恋のコマンド(1977.12)

子供騙しのライフル音が鳴り響く中、3人の疼き声が内から溢れる傑作。戦車を前に太腿露わの迷彩服でポーズを決めるジャケットもビッチ感全開で圧巻。

 

 

お次はNHK紅白歌合戦に出場したA級の御二人。

左:畑中葉子/後から前から(1980.8)

平尾昌晃とのデュエット「カナダからの手紙(1978.1)」で一躍有名になった後に結婚・離婚を経て日活ロマンポルノ出演。歌手復帰第一作のこの曲では、思わせぶりな歌詞を戸惑いながらも艶やかに歌う...ように見せている。次作「もっと動いて(1981.2)」でアフロヘアになるまで、彼女は物欲しげな男達を嘲笑うかのように乾いた微笑みを投げかけていた。

2014年8月、これまでリリースした4枚のオリジナル・アルバムを復刻した『後から前からBOX』を発売。本作はレアなカバー曲・アルバム未収録シングルなど大量ボーナス・トラックを収録、税抜6900円(ロック価格)、“後から前から取り出せる仕様”、高音質SHM-CD、など話題性もありディスクユニオン(2014年8月18日〜8月24日)の週間チャートにて1位を獲得。

タレント・デビューした娘の芸名は「後前(うしろまえ)杏奈」

 

右:中村晃子/裸足のブルース(1971.1)

やさぐれ歌謡名曲中の名曲。この頃よく雑誌広告で「南極探検隊も使用」と宣伝されていたダッチワイフにそっくりな顔に熱くなる殿方もいるのではw

「虹色の湖(1968)」、細川俊之とのデュエット「あまい囁き(1973)」は皆さんご存じの大ヒット曲。後に三原順子がカバーした「じゃじゃ馬ならし(1978)」も秀逸。現在千葉で豪邸暮らし。

 

 

きりがないのでそろそろ最後にしたい。

左:島津ゆう子/ヘイ♡モンロー(1969.12)

藤本卓也作曲のカルト歌謡。痩せた体に藤圭子顔、何とも貧相なヘイ♡モンロー。女優としても「女番長野良猫ロック」に出演。ビニール袋片手にシンナーを吸引していて、梶芽衣子に「バカヤロー!またラリってんのか。帰れ(けえれ)」と怒られる役。1949年生まれ群馬県太田市出身、現在75歳。

 

右:サンとロペ/夜泣き女(1970.11)

髪もお化粧もお召しもの全てが bitch感溢れる素晴らしいヴィジュアル。しかしそれら全てを上回るあばずれ歌唱にはひたすら敬服する...と紹介されているが、私はまずコンビ名に目が行った。サン・トロペ  じゃなく  サンとロペ。素晴らしい!!!

ヒデとロザンナ、さくらと一郎 ... 等の直球ではなく、ダルビッシュ級の変化球だ。加えて、埼玉・栃木・茨城あたりから出て来たんだろうと思われるカッペフェイス&オーラの無さは正にB級の鑑。

 

ピンク・フロイドの「おせっかい(1971)」収録曲「サン・トロペ」から拝借したと勘ぐるのは的外れだろうか。というのも洋楽ポップス・カバーばかりではなくロックを取り入れた頃に重なるから。あのザ・ピーナッツもユーライア・ヒープ「対自核」、キング・クリムゾン「エピタフ」、C.C.R.「プラウド・メアリー」等をカバーしていたし。

 

 

 

今回紹介した上記6曲は全てYouTubeで聴けるのでお暇な方は是非どうぞ。たぶん時間の無駄 ... いやいや、素敵なひとときになるでしょう。

 

娘がレコード・デビュー... 数年後にはお手伝いさん付の豪邸暮らし ... を思い浮かべた親御さんの夢を空しくぶち壊したこの娘たち(畑中葉子、中村晃子を除く)に幸あれ! (あ、皆さんすでに高齢者か)

 

 

* 「歌謡曲番外地」はB級C級に特化した寄せ集めではなく、1960-70年代歌謡曲をジャケット写真と文字で楽しむ本であり、このシリーズでは、バッド・ガール/セクシー・フェロモン/やさぐれ  をテーマにしている。

従って、小山ルミ/ミミ/安西マリア/辺見マリ/津々井まり/篠ヒロコ/緑魔子/渥美マリ/范文雀/沢たまき/池玲子/大信田礼子...等々、有名人も数多く登場している。