彼が、役員の青年と握手をしていると、一人のアフリカ系アメリカ人の青年が駆け寄って来て、手を差し出した。その手を握ると、青年は、盛んに、何か語りかけた。傍らにいた正木永安が通訳した。 「山本先生。ワッツで騒ぎが起こっている、こんな危険な時に、アメリカにおいでいただき、本当にありがとうございます。その先生の行動から、私は〝勇気〟ということを教えていただきました。 また、人びとの平和のために生きる〝指導者の心〟を教えていただきました。 私は、勇気百倍です。必ず、いつの日か、私たちの力で、人種間の争いなどのない、人間共和のアメリカ社会を築き上げてまいります。ご安心ください」 こう語る青年の目から、幾筋もの涙があふれた。 伸一は言った。 「ありがとう! あなたが、広宣流布への決意を定めてくだされば、私がアメリカに来た目的は、すべて果たせたといっても過言ではありません。 一人の人が、あなたが、私と同じ心で立ち上がってくだされば、それでいいんです。大河の流れも一滴の水から始まるように、あなたから、アメリカの平和の大河が始まるからです。