この感情に慣れてしまうことなどないだろうと本気で思っていた。が、私の心はこれ以上すり減らされることを嫌うようで、嫌でも慣れてきてしまっているであろう事実に危機感を覚えつつも、苦しむことを恐れていることもまた事実である。


最近とても寝付きが良くなったこともそのおかげだろう。じくじくとした痛みを抱えることに心が慣れてしまって、常日頃感じていたあの息苦しさも、もう感じることも少なくなってきた。


代わりと言ってはなんだが、なんのトリガーもなく、ただふとした瞬間に、古い昔に感じた痛みを鮮明に思い出し、消えてしまいたくなることが増えた。

だがそれも一過性のものであり、抱え続けることはない。なんの前触れもなく嵐のようにやってきて、気がつけば通り過ぎている。嘘だったかのように空は晴れているし、なんとも心地よい風が吹いているのだ。ただ足元にのみ、荒れた痕跡を残して。


苦しみたくないという心と共に、苦しまなければならないという心、その両者が存在していることで起きていることなのだろうか。なんとも都合の良い、便利な道具である。その道具に散々振り回された挙げ句涙を溢してしまうのならば、いっそ統一してしまえたらと感じたこともあるが、きっとそうではないのだ。いや、そうであってはならないのだ。


常に揺れ動き多面体であるこれとどのように向き合えばよいのだろうか。その答えを導き出すのには、私にはまだ生きた時間が足りていないらしい。


両手に収まりきらないこれを一生抱えて、私は一体どこへ行けるというのだろうか。






「解」