夜が好きだ。


街は寝静まり、昼間の騒がしさが闇の中に閉じ込められたかのように感じる。


どこか寂しげな少し冷たい風が、わたしを包みこむ。


この世界にたった1人のような、そんな感覚。





わたしは家を出た。


夜風はやはり心地良い。廃れた心をすっぽりと包みこんで、そのままどこか遠くへ流していってくれそうで。



こんな日は、このまま夜に溶けてしまいたくなる。 



社会のしがらみも、人との関係も、全部。

全部放り捨てて、たった1人で。





海を漂う海月のように


ぷかぷかと


ゆっくりと。



風に乗って、どこか遠くへ。






あぁ、このまま

夜を漂えたらいいのに。






ぽつりと零した言葉は


夜風に乗って消えていった。