令和2年7月、私は真夏の日差しが容赦なくコンクリートに照りつける日本にいた。

 

安倍首相による、国外からの入国者に義務付けられた「2週間の自主隔離」を終えた初日に向かったのは、都道府県が運営する、とある就職支援機関だった。

 

ここは、様々な理由から就職が困難な人に向けた支援を行ったり、企業と求職者とのマッチングを行っている場所である。

 

早く就職させようと急かしてくるタチの悪い転職エージェントに比べ、ここは過去の経験にとらわれず、フラットな目線で自分の適性を見てくれ、現状取りうる選択肢をあらゆる角度から提示してもらえるからいい。

おまけに、このキャリアカウンセリングは無料だ。

 

30歳を目前にした今、私にはもう20代のように、後先考えず仕事を選んでいる余裕なんてない。

だからこれだけ慎重になっている。

ある意味、今までの人生で一番、自分の将来について真剣に考えている時期かもしれない。

 

求人サイトを見てはどれも似たり寄ったりなものばかりでパッとしないし、

相変わらずニュース番組はコロナ禍で企業も求職者も厳しいと言い、

この経歴ではご希望の求人は紹介できないと暗に言われて落胆し、

面接に進んだわけでもないのに、選考に落とされたわけでもないのに、もうすでにこの状況に嫌気がさしている・・・今日この頃だ。

 

帰国からひと月も経たないのに、頭の中はもうすっかり「日本モード」になっている。

いや、こんなマインドで生活をしているのだから、いやでもこうなっていると言ったほうが適切か。

 

ちょっと前まで、本当にヨーロッパのオランダにいたのかと思うぐらい、あそこでの生活がすでに昔のように感じる。

 

もう憧れの海外で、好きなことだけをして遊んで暮らす「毎日お花畑生活」は終わった。

28歳やそこらの若さで、自分の力で勝ち取ったものでもないのに、あの水準の暮らしを覚えてしまうとは、さぞかし私はいいご身分だったものだ。

 

次第に薄れゆく(ついでに英語力も泣)オランダでの記憶と、あの時感じていたことを忘れないうちに綴り、2年間でのべ300記事以上も書いてきたこのブログを締めくくろう。

 

 

 

 

 

 

今までヨーロッパの色んな場所を訪れたが、やっぱり地元・アイントホーフェンはいいなあと改めて思う。

どれだけ有名で素晴らしい他のヨーロッパの街よりも、私はこの街が好きだ。

ご縁があったのか、夫の仕事で2年前から住むことになったオランダ。
「ぜひ蘭学を学んできて!」なんて送り出してくれた友人らに手を振り、はるばるアイントホーフェンまで来た。

 

あの頃は、これから出会うすばらしい人々の存在をまだ知らなかったし、在住生活を終えるころには、ここがすっかり第二の故郷になってしまうなんて、夢にも思わなかった。

何を隠そう、移住当初は、ヨーロッパのくせに近代的な建物ばっかりで、友人もおらず、言葉もわからないからboringな街だとしか思っていなかったのだから。

でも今は違う。
ここにくれば、私をあたたかく迎えてくれる人がいる。
ここにはたくさん、気の置けない友人たちがいるのだ。

 

そのような愛すべき友人たちの存在がなければ、私の海外での生活は本当にboringなものになっていたんじゃないかと思う。

英語では、ふるさとのことを単純に「home town」というが、日本語の持つ「故郷」や「ふるさと」には、それ以上のものが込められているように思う。

出生地だけを指すのではない、人生それぞれの時期、それぞれの場所で、幸せも悲しみも、いろんな思い出が詰まった大切な場所、それが「故郷」なのだと思う。

 

私がこの地で学んだことは実に多く、たった2年間ではあるものの、やはりアイントホーフェンという街は、私にとっては大変美しい心のふるさとである。


アイントホーフェンだけではない、オランダはとても美しい国だ。

 

厳しい寒さを乗り切った春は、小鳥のさえずりや草花の芽吹きをあちこちで感じ、人々の往来も増えて街中が賑やかになり、

一年で最も晴れの日が多い夏は、爽快な青空に太陽が輝き、風にたなびく緑樹の隙間から木漏れ日が踊る。

秋は野菜にフルーツに、たくさんの収穫物がマーケットを彩り、訪れる人々の目を楽しませ、

凍えるような冬の到来には、美しいインテリアに囲まれた温かい部屋で、大切な人とGezelligな時間を過ごす・・・

 

※Gezellig(ヘゼリヒ)は、多言語に翻訳できないオランダ語として有名だ。

単純に心地いいのではなく、心が満たされた状態を伴った居心地の良さを表す素敵な言葉だ。

店の雰囲気的には居心地いいけど、仕事の付き合いなどで同席する飲み会などはまさにヘゼリヒでない。

 

オランダにいた際に知り合った方の言葉をお借りするなら、私にとってオランダは、まるで桃源郷のような場所だった。

日常の生活の延長上に、ハッと息をのむような美しい光景を見せてくれる。

 

世界には、こんなにもきれいな場所があるなんて・・・

四季折々の風景だって、生活の豊かさだって、日本が優れていると思っていた私は、なんと未熟だったことか。

 

世界はまぎれもなく、きれいな色彩にあふれている。

 

 

日本の都会は、過剰にマスクをした人で溢れ返り、窓を開ければ工事の音がうるさく、街の通りは広告や看板であふれ、ごちゃごちゃしていてうっとおしい。

かつては鳥のさえずりで目を覚ますような生活が、今となっては工事現場に冷たく鳴り響く機械音に変わった。

気分転換に外出しても、散歩するところがまるでない。

 

このままでは、オランダで芽生えたせっかくの美しい自然を愛でる心が衰退していくような感じがする。

 

そうだ。私の実家、京都・大山崎へ行こう。

 

私はどうにかして、次第に薄れゆくオランダで過ごした思い出と現在の自分とをつなぎとめておきたかった。

天王山のふもとに育まれた緑豊かなこの地に身を置いていると、今でもオランダとつながっているような感じがしてうれしい。

 

桜ふぶきの中に現れるインクライン、嵐山の竹林の小道、深紅に染まる光明寺、この美しい景色が見たくて、わざわざ世界中から人が来るのだ。

 

かつては何もない、不便な田舎町だとばかり思っていたのに、今ではそんな素晴らしい場所に、第一の故郷があってよかったと生まれて初めて思った。

 

けれども私は、ずっとここにいていいわけではない。

次のディスティネーションを目指さなければならない。

でも、そこがどこかはまだわからない。

 

 

 

 

 

長い旅の果てに、もう一度見つけられるだろうか。

 

 

 

 

 

 

boringだと思っていたところが、かけがえのない場所へと生まれ変わるような、そんな居場所が。

 

 

 

 

<アイントホーフェン写真館>

 

2年の間に撮り溜めた写真を一気に放出。

アイントにある一番有名な教会「カタリナ教会」

 

 

ピカソの作品も展示される「ファン・アッベ美術館」

トワイライトのアイントホーフェンス運河

 

 

ゴッホの「星月夜」をイメージして作られた夜になると発光るする不思議な道

 

 

 

 

 

 

森林の中にひっそりと佇むエッカート城

 

一風変わったお店が並ぶグルーネワウト地区

 

 

赤い車体が目印の市バス。

アイントホーフェン駅のバスターミナルがすべてのバスの終着点だ。

 

 

 

UFO型がひと際目を引くアイントのランドマーク「エフォルオン」

 

 

 

 

 

 

 

老人ホームの上空では雲の輪郭が輝いていた

 

本日はオランダの祝日、国王の日なり

 

ロックダウン化の閑散としたセンター

駅前にデーンと一つだけそびえる我らがスチューデントホテル。

住宅需給が逼迫する中で、マイホームにありつけなければいったんここに駆け込むのもあり。

北ブラバント州一(たしか)長いと言われる飲み屋街。

夜になると景色が一転。特に、TGIF(サンクスゴッドイッツフライデイ=花金)は、多くの人々でにぎわう。

 

 

 

 

そういえば駅名が、ただのアイントホーフェンからアイントホーフェンセントラルに昇格したこともあったなあ

ホームでは、自転車で往来する人の姿も頻繁にみかける

 

少々残念な完成度のアイントホーフェンのカーニバルだが、カーニバル自体、プロテスタントが主な北オランダにはないお祭りなので、いつも注目されがちなアムステルダムに対してなんとなく優越感。

でも、見に行くとしたらデンボスとかマーストリヒトとかかな。

 

 

 

私だったらなんて書くだろうか

 

 

みんな大好き!ナチュラルキッチン雑貨を扱う通称「ディレカミ」。

 

 

 

 

オランダの焼き菓子、一口食べたらおなかいっぱいに

落ち葉のじゅうたん。どんどん秋が深まっていく・・・

 

 

 

引っ越し先はかわいいティピカルなダッチハウス

 

 

さあ、春の味覚をいただこうか

春はオランダ国花、チューリップのシーズン

まだ現役のゲネペル水車。

 

友人宅訪問後、夜空に見えた閃光のバックライト。

闇夜とのコントラストに友人が思わず「mooi」とつぶやく。 (モーイ。「美しい」のオランダ語)

 

 

 

 

 

オランダに来てから、お花がすっかり好きになってしまった

海外でバイトさせてもらう貴重な経験がつめたASLM本社(の社員食堂)

 

 

毎年やってくる移動遊園地「ヒラリア」

 

おしゃれなストライプS地区にある「フィッシュアンドチップス」さんのキベリング(白身魚のフライ)は絶品

 

天に突き刺さるように伸びる自転車専用ラウンドアバウト「ホーベンリング」

欧州サッカーの強豪、PSVアイントホーフェンスタジアム

ベルギーの9歳の天才児が入学したことで話題となったTU/e(アイントホーフェン工科大学)

 

アイント一歴史的でおしゃれなクライネ・ベルク通り。

マカロン専門店、ミシュラン獲得のレストラン、ブティックなどが軒を連ねる。

 

アイススケートも毎シーズンいったなあ

カフェでもなくコーヒーショップでもなく、ここはコーヒー「ハウス」です。@東方行近く

オランダ中でみかけるスーパー「アルバート・ハイン(AH)」。日本のどこかでAHのロゴ入りショップバッグ下げてるやついたら迷わず声かけるわ。

駅前の小規模店ですらチーズは充実のラインナップ。

さすが乳製品自給率300パーセント越えのオランダだ。

激安スーパー「ネトラマ」

全部同じ肉に見えるんやけど・・・

日本人は本当にお世話になります

 

エキナカのおしゃれカフェ。ここでよく開かれていたミートアップで自身の交友関係が広まったんだ

 

光の祭典「GLOW」。2020も第二波がヨーロッパを襲わなければ開催されるな

 

 

 

曇りがちな北ヨーロッパの冬。こんなに晴れた冬空はかなりレアだ。

 

アイントホーフェンの情報があまりネット上になかった2年前、少しでも自分の経験を文字にして伝えることで、アイントホーフェンやオランダにご縁がある方の一助になればと思い立ち上げたこのブログ。

 

以来、ブログを通していろいろな方との出会いがありました。

トラベルライターとして、お仕事もいただけるようになりました。

最初は一日3人からはじまったアクセス数も、今ではのびにのび、「アイントホーフェン」の1キーワードで検索するだけで、自分のブログがトップページに表示されるまでになりました。

 

自身の24歳からの執筆人生で、こんなにも書き続けてよかったと思ったことはありません。

 

書いて、書いて、ひたすら書いて、生きた情報を届ける。

趣味で始めたこととはいえ、何事も追及すると、それなりのものにはなるのだと思った次第です。

 

末筆になりましたが、オランダ生活をサポートしてくれた友人たちへ、このブログを読んでくださった皆さまへ、たくさんの感謝の気持ちを込めてオランダ風に・・・

 

Dank u wel!