剣道では「練習」のことを一般に「稽古」という言葉を使っている。「練習」も「稽古」も本質的には相違はないと考えられるが、「稽古」には、古(いにしえ)を稽(かんがえる)という字義がある。つまり、すぐれた多くの先人達が精進努力して次第に築き上げてきた常道の真義を極めようとするような意味が含まれていると思う。したがって、日常の剣道の練習は「正しい構え」「正しい間合い」から「理合のある」「正しい基本に則った攻め合いや打突」の練習、すなわち「基本に準じた剣風」の追求のための「稽古」が中心になって行われなければならない。

  試合や互格稽古での攻め方や打突の方法は本人の個性とともに相手によって、また時と場合によって千変万化、あらゆる方法が用いられる。それでも、結局、一番安定していて最後に強さを発揮するのは「基本に準じた方法(常道)」であるということを充分念頭において考えたいものである。