昇段審査や大会の試合に自分から申し込みができる現代と異なり、天文時代からの一刀流には厳しい掟があった。現代においては、掟はないものの、昇段審査を受験等する際には、少なくとも所属する道場の師範等の許可を経てから受審することが礼儀ではないでしょうか。
1 一刀流の掟
一刀流を学ばんとする者は、まず良師を訪ね二心なく随身し、懈怠なく精進することを天地神明に誓い、流儀の教を守り、絶対に他に見せず他に言わず、秘密を厳守し、親子兄弟にでも伝授の秘書類などは決して洩らさないという約束の起請文を認めて呈することを掟としている。
入門した上は、純真な誠心で師の教に遵い、師の許可がなければもだりに仕合せず、自流の名おたれになるようなことはしない。師の免許がなければ、他国に行っても決して自らその流の師とならない。
2 一刀流兵法初心伝の和歌
・剣術は坂へ車を押す如く ゆるせはおとる元の麓へ
・剣術は油断をすれは新帰元 生死は精と無精とそ志れ
・分量の曲尺もたつねす長しなひ 刀と木の軽重をしれ
・執行には足をは留めす身を守れ 気は静にして業ははげ
しく
・相打の勝負に勝の有るのを こすく当るは負けと知るへ
し
・おのか業人に見せんと思うなよ 見得に引かれて業は出
ぬなり
・高上な理合をいうは後の事 唯一心に業に熟せよ
・進むをはゆるせゆるすな退くをゆるさぬ意味を第一とせ
よ
・まさかは死穴に入ると思ほへよ 唯身を捨てて浮ぶ瀬も
あれ
・極意とは何れの道みの有るなれど 無念無想に極意ある
へし
縦書きの古文をそのまま書き入れたが、最後の文には、
右拾二吟剣術執行の心得なり
恐驚疑惑は兵法の病なり
として、剣術の四戒を記されている。