楽譜からのメッセージを読む
2024年6月24日
1日中降り注いだ雨も止みました。
すっかりグレーな空の始まり。
とりあえずこの時期厄介なのは洗濯物が捗らないこと‥でしょうか。
終わりを予告されていたかのような洗濯機、どうにか昨日我が家に新品が入りました。
「こんなに脱水のときって静かに回ってるんだ〜」
と感心してしまい、お世話になった前の洗濯機がいかに終末期、頑張りすぎていたかを実感・・・トホホ。
先月、炊飯器も買い替えておりました。
終末を迎えるとき騙し騙し使いながら、家電の買い替え地獄に出くわさぬよう、お財布と相談しながら買い替えのジャッジを下す家電の存在。
お次は、掃除機を買い替える時だけは、生徒様に兼ねてより進めていただいたドイツ製Mieleの掃除機にするぞ!とブックマークしております。
それにしてもこうやってボタンひとつで便利に快適に過ごせる時代には有難いばかりですね。
さて6月最終週となりました。
先日のレッスンで、《自分の練習中の曲の音源をよく聴いているかどうか》というお話をちらっと挙げました。
それで私はある一定の時期まで聴かないようにしていること。
かくいう私も、昔は何遍も何遍も聴いていました。
今のように身近に動画を開ける時代ではなかった頃、
CDを何回もトラックを合わせて再生して。
それこそ、子供の頃、そして大学の頃もまだ、お世話になった先生方から
「アシュケナージのこれが良いわよ」
「ポリーニを聴きなさい」
「ケンプのこの演奏がおすすめだよ」
・・・
当時、レッスンにて持っていっていた曲において、先生目線でおすすめの演奏を音源にて手にし、それ一択で向き合っていたことを思い出します。
まだまだ情報収集に乏しかった当時、それが正解のように、聴き入っていました。
それがこうして、今、大人の生徒の皆様のピアノライフに寄り添う時・・・
生徒の皆様それぞれの持ち味と価値観、感性、そしてもちろん求めるところ、があります。
そしてその音楽を選んだご自分なりの人生背景や心情。
私自身が、理想の演奏に凝り固まっているだけでは決して良くないことに日々気づきながら今に至ります。
私が伝えることは何か。
楽譜からのメッセージを読み解くこと。
作者が書き上げた音の世界、旋律の流れ、音楽記号、表現記号、時には作者の時代背景。
言ってしまえば、生徒の皆様の方が、ご自身で選んだ曲だけに想いが強いのです。
そしてむしろ曲のことに詳しかったりします。
もう感心するほど、いやお恥ずかしいほどに、私の方がピアニストの名前に詳しくなかったりするシーンにも出会します。
それでも、その度に興味を持つことが大事で。
「へぇ〜なになに?」と聞きながら、メモをします。
そして私も後で調べます。
以前にも何度か綴っていると思いますが、私の手帳は殴り書きで、生徒様から得た色んな情報が書かれています。
だからこそ、手書きのアイテムがやめられません。
スマホを開いて、どれどれ、とメモアプリに打っておくよりも、さっと開いて、さっと自分の殴り書きを見て、「あ、そうだ」と隙間時間に調査できる。
そんな大人の生徒の皆様とのレッスン。
私からはトータル的なことを伝える。
楽譜に書いてあること、そしてそれを理解して自分の手で形にするために、その歩み方、練習の仕方を伝えること。
生徒様ご自身が理想とする演奏があるならば、それに近づけるよう努めるのではなく、あくまでその演奏に惹かれている生徒様とピアノに共に向き合って、演奏において大切なこと・・鳴りの良い音を出すこと・小さな音を鳴らすこと・テンポ早く動かすにはどうしたら良いか・もっとレガートに弾くには・もっとドラマチックに弾くには…、そしてイメージすること、今目の前にあるピアノと思い描く演奏と共に、自分の身体や思考をどうすると自分らしい演奏が実現できるかを、常にひとつ線を引いた状態で向き合うこと。
先日のレッスンで、ある生徒様からこういったお声がありました。
そう、これ。
ある程度イマジネーションにおいて線を引いて、楽譜とまず真摯に向き合ってみることをお勧めしました。
まずは自分の魂と心で、その音楽に向き合うことを忘れないように。
楽譜に書いてあることを丁寧に読み取ること。
それを生徒の皆様へ意識的にレッスンにて伝えている日々です。
そして練習のクライマックスにて、もう一度様々なピアニスト達や時にはアマチュアの世界中の方達の演奏を聴いて、発見や刺激を得て、最後の最後まで《自分らしい演奏》を目指すこと。
生徒の皆様とのレッスンライフ、それこそほぼ毎年、ショパンのノクターン作品9-2とベートーヴェンの悲愴ソナタ第2楽章は、レッスンによく挙がります。
次いで「愛の夢」、「別れの曲」、モーツァルトのピアノソナタ作品545・・・
曲は同じでも向き合う生徒様は十人十色。
今度はどんな演奏に向かっていこうかな?
そんなふうに考える楽しみでもある、と捉えています。
そういえば、長年お世話になった恩師の教室のピアノ発表会へ、大学を卒業してから何度か、演奏にて携わらせていただいた時、当時習っていた子供達の演奏は、私が同じような年頃に恩師から教わっていた音楽の作り方そのものでした。
ショパンのワルツ作品64-2も、幻想即興曲も、
「そうそう、先生はこんな風な音楽の作り方で教えてくれた」
と。
子供達の柔軟な感性で、先生の長年変わらぬ教え方を注ぎ込まれた形。
はて、大人の生徒の皆様へ、そこを求められるかどうか。
それがいつも私の心に響く問いかけです。
だからまずは、楽譜からのメッセージを読み解き、伝えること。
そこに常に重点を置きます。
そんな私も、自分らしい演奏を求めて、今もピアノに向き合います。
今日も素敵なピアノライフを!