小さな音を鳴らすには
2024年6月3日
爽やかな空で月曜日を迎えました。
5月の連休明けより、お問合せを再びいただくようになりました。
例年の流れのように思います。
3月、4月に一旦お問合せが鳴り止む。
お会いできる方もいらっしゃれば、お待ちいただくようお願いしなければならない方もいらっしゃるのですが、それもやっぱり、全てが必然的なご縁とタイミングと思っております。
改めて当教室を選んでくださり、ありがとうございます。
さて、今日は《小さなを音を鳴らす》ことについて。
皆さん、経験があるのではないでしょうか。
小さく小さく・・・
弱く弱く・・・
と思いすぎて、慎重に打鍵したら、「スカ・・・」と音が鳴らなかったこと。
もはや強弱を通り過ぎて、無になってしまうケース。
その瞬間に、あっ(汗)とかえって慌てる、力が入る、と負の連鎖。
特に曲の冒頭や終わりの部分。
決めのところでそうなると「チーン。」と自分でがっかりしてしまう。
私も学生時代まで、よくありました。
これはまず、弱く鍵盤を押そうとしているのも一つの原因なのではないでしょうか。
指先に全集中しているつもりが、かえって体全体に力が入っていたり。
そして手の甲にも力が入っていたり。
ピアノは、私たちが鍵盤を押すと、その先でハンマーと呼ばれる気球のような形でフェルトに覆われた部分が弦に当たり、音が鳴ります。
強弱を決めているのは、このハンマーが弦に当たるスピードでしかないのですよね。
そしてピアノの鍵盤とハンマーまでの間にある精密なからくり。
鍵盤は私たちから見えている部分のあと2.5倍ほどの長さがあります。
そしてそのちょうどど真ん中のあたりを支点にして、シーソーのよう動いてはハンマーが上がるよう促しています。
一つの音を鳴らすのに、こんなに細かな部品同士が支え合って成り立っているんですね。
それでもって、弾き手によって音色が変わると思うと、本当に奥が深いです。
そんな鍵盤。
シーソーになって動いてるわけです。
鍵盤の支点を感じて、しっかり下まで下ろしてあげて、ピアノの音を響かせたいところです。
どんなに小さな音でも。
たくさんの部品同士が重なりからくりとなっているので、自分自身が力んでそーっと鍵盤を押してしまうと、ハンマーが弦を打つまでの勢いに届かず、それまでのからりが上手く作動してくれず音が抜けてしまいます。
まずは鍵盤を必ず下まで下ろす。
そして小さな音を出したいのであれば、ハンマーの上がるスピードをゆっくりにしてあげれば良いので、ゆっくりと下まで確かに下ろす。
ここで何度も言葉にしてる《下ろす》というのが大事ですよね。
押すんではなくて、指を下ろす。
シーソーに乗っている自分をイメージしてみてください。
力まずに、指先に自分の重さを温かく預けて、ゆっくり下ろす。
ぜひ皆様もやってみてください。
上手なピアノ弾きかどうかは弱い音で決まる、と昔言われていたことを思い出します。
私は小さな音といえば思い出すことがあります。
子供達がまだまだ小さかった頃、夜の寝かしつけのために寝たふりをしてもはや私が先に寝ていたんじゃないか…と思えるほど寝落ちする日々の中で、奇跡的に寝ずに子供達の寝顔を見届けられた時、そーっとベッドから部屋を出ようと足音に気をつけている瞬間、足の指先までガチガチになって音を押し殺そうと必死・・・そしてなぜか関節がパキっと鳴ってしまったり。
コンテンポラリーダンサーのように指先までしなやかに動いた方がむしろ床の音も関節の音も鳴らさずに華麗に無音の空間を作れたかもしれない。
静かにー、、、と思えば思うほど力む感じ。
ピアノの音の時も、小さな音と向き合うときの力みもきっとそんな感覚。
鍵盤をシーソーに。
今日も皆様素敵なピアノライフを!