音と音を紡ぐ
2024年5月17日
珍しく強い風の音、新潟の冬を思い出すような音で朝を迎えました。
今日のレッスンは10名の生徒の皆様と♫
昨日のレッスンでのこと・・・
と仰って始まった、ある生徒様とのレッスン。
兼ねてより譜読みはしておりましたが、およそ3ヶ月ぶりに再び本腰を入れて10月の発表会に向けての曲を今月より練習し直しております。
「後退しているかも・・」
そんな時は、最後に弾いていた時と同じ感覚で聴かない練習をすること。
レッスンでそれをまず促します。
昨日のその生徒様とは、レガートに弾くことと、強弱の関係について、せっかくの機会なので深く追求しました。
ラフマニノフの前奏曲op.32-12
右手に細かく刻む16分音符。
比較的動かしやすい音型なので、楽に速く指を動かせます。
・・・・
が、それが穴になります。
ペダルに頼って、指はパタパタ…、ボタン信号のように単音の連鎖になっているだけのようになってしまいます。
そうすると、クレシェンドやデクレジェンドといった強弱をつける際に、どんなにペダルをつけていたとしても凹凸のある音と途切れ途切れの広がりに聴こえます。
この曲の特徴的な右手は、常に一つの景色として、空気として、ハーモニーとして、小さな波の連続がうねりを見せながら彩って欲しいところです。
そして左手にメロディ。
左手の旋律は右手ほど細かく激しくは展開しないので、だからこそピアノの特徴である音の減衰を感じながらメロディをしっかり自分の指先で綺麗に繋がなくてはなのです。
なので、生徒様と、うんとゆっくりのテンポでペダル無しで、レガートに弾くということを追求しました。
音と音がほんのり重なり合うくらいをイメージして音を紡ぐように指を運びます。
そうして、そこから次はそのテンポとノンペダルで強弱をつけてみる。
左手は、右手の細かな動きのうねりを感じて、左手自身の旋律の一音の減衰を感じながら滑らかにフレーズを感じて弾くこと。
それからペダルを付けてみると、とても豊かな響きと強弱の立体感が出ます。
練習の初めから「ペダルを使う」と、大切なことを見落とします。
ピアノ本来の音をよく聴くこと、丁寧に聴くこと。
愛を持って聴くこと。
今日は、ピアニスト辻井伸行さんがロイヤル・リヴァプール・フィルと一緒に新潟公演に来られるのだとか♫
生徒様からも行かれるとの声を数名聞いております。
辻井さんにはいつもどんなふうにピアノの一音一音が鳴り響いているのだろうか…と考えます。
私たちも目を瞑ってそれを味わうまでなくとも、ピアノの音一つ一つに意識を持つことはとても大切なこと、と私も日々痛感しています。
よく聴くこと。
ちなみに鍵盤釘付けになると、その感覚が尚更薄れます。
昨日は何度か、他の生徒の皆様にもそんなレッスンがありました。
ドビュッシーの「月の光」を練習中の生徒様へも。
冒頭の1ページ。
音がタイになっているところが両手にたくさんあるので、ペダルに頼らず再現すること。
先週のレッスンからそれをしっかり意識して、ペダル無しで弾いてくださいました。
加古隆さんの「黄昏のワルツ」を練習中の生徒様へも。
スラーのかかっている右手のフレーズは、和音の移動だからとペダルに頼って鍵盤の上を指がジャンプしないように、繋げられる音は必ず指で繋ぐこと。
そしてリストの「コンソレーション3番」を練習中の生徒様とも。
3度の和音の移動は私たちピアノ弾きにとって難関の一つ。
それにはやはり脱力。
3度の指を打鍵している指以外も鍵盤から指がピンと離れずに添えられているか。
そしてこちらもペダルに頼って、ノンレガートに弾いてしまわないように。
音と音を紡ぐように、弾きます。
「ペダル無しで繋がるように、ね」
それぞれの生徒様と同じことを約束して、レッスンを終えました。
それにしても私の持っている「コンソレーション」の楽譜。
ふ、古い。
もう表紙がほどけています。
恩師から昔いただいたピースの楽譜でした。
60円。。。。
この前、ショパンのバラード集を持ってきてくださった生徒様の話を思い出します。
それでも、昨日の生徒様が使っていらっしゃるリストの楽譜と同じハーモニーとメロディが流れます。
リストの音楽が今もこうして愛され続けていることに、私もまたピアノ愛が増しました。
音と音を紡ぐこと。
ぜひ皆様も意識してみてください。
今日も素晴らしいレッスンライフとなりますように!