Episode.8（みなみ）【運命の人】

「…わかった。あっちゃんのことはあたしに任せて。」
「ごめん…。こんなこと頼めるの、高橋さんだけだから。」
「いや、逆に連絡くれてありがとう。」
補習で居残りのぱるとわかれて１人で帰っていると、珍しい人から電話がかかってきた。
その電話に出れば、あっちゃんと別れた報告と１人でいるあっちゃんを心配している内容だった。
それを聞いてあたしが出す結論は1つだけ。
「それじゃ、今からあっちゃんのところに行ってくる。」
「ほんと、ありがとう。」
「そっちもぱるのこと頼んだから。もう絶対に離すなよ。」
「二度と離さないよ。」
大島さんの力強い言葉にあたしは安心して電話を切ると、あっちゃんの学校へと向かうために
家に帰る電車とは逆の電車に乗った。
きっとあっちゃんのことだから大島さんの前では強がったに違いない。
そういう優しさをあっちゃんは持っているから。
そう考えるだけで最寄り駅に到着するまであたしはソワソワ落ち着かなかった。
“まもなく△△駅に電車が到着致します。”
そんな中、最寄り駅に到着するアナウンスが流れ、あたしはドアの前に立つと今か今かと

ドアが開くのを待った。
そして駅へと到着した電車のドアが開くと同時に飛び出すように電車から降りると、

あっちゃんの学校へと駆け出した。

駅からノンストップで学校に向かって走り続けた。
そのせいか、駅に向かうあっちゃんと同じ学校の学生とすれ違うたび少し怪しげな目線を向けられる。
だけどそんなことは気にせず走り続けていると、学校近くの公園にあっちゃんらしき姿を見つけた。
ブランコに揺られているその姿はかすかに震えているようにも見えて、あたしは方向転換すると
一目散にブランコの方へ駆け出した。
「あっちゃんっ！」
走りながら大声で叫べば、両手で覆っていた顔をあたしの方へ向けたのはやっぱりあっちゃんで
息を切らしながら駆け寄っていくとあっちゃんは驚いた表情を浮かべていた。
「たかみな…？」
「よかった、見つかって…。」
「どうしてここに…？」
額から流れる汗を拭い、あたしは出来るだけいつも通りに振舞おうと思った。
それがあたしにできる唯一のことだから。
「…あっちゃんが泣いてるような気がしたから。」
「えっ？」
「言ったでしょ。いつでもあたしを頼ってって。話でも愚痴でも文句でも全部聞くからさ。」
それに…、あっちゃんにはいつだって笑っていて欲しい。
あっちゃんの笑顔があたしは好きだ。
その気持ちが恋なのか友情なのかはまだ分からないけど、今はそんな曖昧なままでもいいと思ってる。
「たかみなのくせに生意気ー。」
「え“ぇぇぇぇ！！？？」
だから、憎まれ口だってなんだってあっちゃんのためならあたしは全部受け止めるよ。
キミの気が済むまで、いつまでも…。