意味が分かると●●な話

母がいなくなってから、もうすぐ7年が経つ。
当時はまだ子どもだった俺は、父さんから「母さんは失踪した」と聞かされていた。
実際、あと数日で7年間が成立する今、父さんは「失踪宣告」を請求し、母さんを死んだことにするつもりのようだ。
でも、俺は信じている。
いなくなった理由は分からないが、母さんはどこかで生きていると。
ひょっとしたら、俺が有名人になったら、連絡の一つも寄越すんじゃないか。そんな根拠のない希望もあったのだが、今から世に名を馳せるのは難しい。
それでも俺は、わずかな可能性に賭けて、行動を起こした。
数日後。俺は、母さんと再会した。
穴あきガラスで仕切られた、面会室で。【作品集】 物置の奥から封筒が出てきた。
『深ーい井戸奥、出てきた宝は心盗む』と書いてあり、中には紙が1枚。
興味が湧いたので、井戸に入ってみることにした。
井戸の底には、何本もの横穴が。
ヒントは、壁に書いてある「この向きで読め」という文字。
封筒に入っていた紙を読んでみる。
『斜め右後ずさり
七十歩ばかり』
最初の2行はこうだ。
斜め右の道に七十歩後ずさり、ということだろう。
その通りに進み、空腹を感じながら紙を見る。
『飯も食わず下を向き
四文字目見よ』
気味悪さを感じながら下を見る。
文字が並んでおり、四文字目は「左」。
左に進むと、壁に絵が描かれていた。
紙を見ると、
『巳三つ目を右に進め』
巳=蛇。
三つ目の蛇の絵を右に進み、紙を見る。
『下にある見知らぬ名前の
六歩先見ろ』
下に、見覚えのある名前がたくさん書かれている。
知らない名前を見つけ、六歩先には、「右」の文字。
紙に書かれているのはここまで。
右に進めばゴールかと思ったが、
振り出しに戻ってきただけだった。【作品集】
私はいわゆる箱入り娘。
滅多に外に出ないし、同じ年頃の女の子達がどんなことをしているのか知らない。
両親は私にいろいろ買ってくれるけど、本当に欲しいものは俗物だと言って買ってもらえない。
ある時、興味本位でパパの部屋の押し入れに入った私は、その奥に妙な物を見つけた。
宝箱、と言ったらいいのか、両手でやっと抱えられるくらいの大きさの、木でできた箱。
中身は空だったけど、何となく興味がわいた私は、部屋に持ち帰った。
翌朝、寝ぼけていた私は例の箱につまずき、その拍子に、中からゴトッと音がした。
空っぽだったはずなのに。
不審に思い、ふたを開けると……
そこには、夢にまで見て携帯電話が入っていた。
もしかしてこの箱は、欲しいと思った物を出してくれる魔法の箱なのでは……?
そう思った私は、その日寝る前に、化粧道具が欲しいと箱の前で願った。
翌朝箱を開けてみると、中には願った通りの化粧道具が。
箱の力は本物だと確信した私は、両親に内緒で、欲しかった物をどんどん手に入れていった。
それでも、私の心の隙間は埋まらない。
理由は単純。
こんな私でも、人並みに恋をしてみたい。でも、そもそも出会いがない。
世間はもうクリスマスムード一色。
私にあるのは、昨日願って、今朝組み立てたクリスマスツリーだけ。
窓から外を見ると、雪がちらつき始めた。
カップルの姿もちらほらと見える。
私もあんな風に歩いてみたい。クリスマスだけでもいいから、恋人が欲しい。
そう願った時、ある男性が目に付いた。
窓越しに見える彼は、何よりも輝いて見えて……正直、一目惚れだったと思う。
彼と恋人になりたい。彼が欲しい。
その日の夜、私はそう願った。
この箱ならきっと叶えてくれる、と期待を込めて。
でも、翌朝、期待は絶望と恐怖に変わった。【作品集】
今日は、中国人のリーさんがホームステイにやって来る。
楽しみにしていた子ども達は学校に行っているけど、そろそろリーさんが来る時間だ。
「ゴメンクダサーイ」
「はーい」
ドアを開けると、そこにいたのは優しそうな青年だった。これなら、子ども達も大丈夫そう。
「ようこそ我が家へ。今は私とポチしかいませんが……」
「わんっ」
「ウワッ」
「もしかして、犬はお嫌いでしたか?」
「イエ。チョトオドロイタダケネ。イヌハダイスキヨ」
良かった。犬好きの人に悪い人はいないって言うし、何よりポチも懐いてるみたい。
その後、家の中を一通り案内したところで家の電話が鳴った。
内容は、私に急用を告げるもの。リーさんを1人にしておくわけにはいかなかったけど、どうしても行かなければいけない用事だ。
事情を説明すると、彼は笑顔で快く承諾してくれた。
「ごめんなさい、リーさん。子ども達が帰ってくる前には戻りますので。それでその、お昼は……」
「オーケーオーケー。ワタシリョウリトクイヨ」
「そうですか。じゃあ、その辺にある食材適当に使ってもらっていいんで」
「アリガトウゴザイマス」
「それじゃ、すいませんけどちょっと行ってきます」
「ハイヨー、イテラッシャイ」
超特急で用事を済ませた私は、急いで家に戻った。
家では、リーさんが相変わらずの笑顔で待っており、汗をかいた私に水まで用意してくれた。本当にいい人だ。
「すいませんでした。お昼は食べましたか?」
「イタダイタヨ。トテモオイシカッタネ」
「それは良かったです」
とは言うものの、何か食材を使った形跡はない。一体何を食べたんだろう。【作品集】俺はあいつを殺してやった。クラスのみんなが嫌ってる、いじめっ子のあいつ。
俺の計画と実行は完璧だった。きっと遺体も見つからず、行方不明扱いになるはずだ。
そう思っていたはずなのだが──
──最近、刑事が学校の周りを嗅ぎ回っている。まさか、見つかってしまったのだろうか。
もしそうなら、俺にはアリバイがない。まずいぞ、これは。
そう思っていたはずなのだが、あるはずのない俺のアリバイが、知らないうちに立証されていた。
なんでも、クラスメイトの数人が、あいつが殺された時間に遊びに出ていたという話を刑事にしたらしいのだが、何故かその中に俺の名前も含まれていた。
アリバイはできたが、俺は言い知れぬ恐怖にかられていた。
俺とそっくり──いや、同じ顔をした奴がいる……?
それとも、俺はあいつを殺してなどいなくて、本当はクラスメイトと遊んでいた……?
あまりの恐怖に、俺は刑事に全 てを話した。
真相を知るのは、その数日後のことである。【作品集】 最近、学校でメリーさんごっこが流行っている。
友達の家に行くときなどに、非通知で電話して声を変えて、自分の現在位置を教えたりする、下らない遊びだ。
俺はやらないけど、友達がたまにやってくる。
今日も、特に遊ぶ約束もしていないのに非通知電話がかかってきた。
『俺○○。今、電車の中にいる』
「電車? どっか旅行?」
『――にいく』
「え? どこに行くって?」
『――レビを――れば分かる』
雑音がひどくて聞き取りにくい。
テレビをつければと言っていたみたいだけど……
訳も分からないまま、とりあえずテレビをつけると、脱線事故のニュースをやっているところだった。
「○○! お前、今どこに!?」
『そういえば、メ リーさんの話ってさ』
「え?」
「最後振り向くと、どうなるんだろうな」【作品集】 『俺、小説家になりたいんだ』
そう話してくれた私の恋人は、去年ガンで死んだ。
ライトノベルが好きで、よく友人から、本名の御旅屋寛人(おたやひろと)という名前を略してオタヒロと呼ばれていた。
彼が書いていた小説もライトノベル調だったこともあり、今では私も、ハードカバーはほとんど読んでいない。
昨日、本屋で気になる本を見つけた。
作者は、鳳隼人(おおとりはやと)。聞いたことがない名前だ。新人だろうか。
タイトルは、リバース。
手に取って開いてみた。
私は中身を見る前に後書きを読むタイプだ。
よくある普通の後書きの最後に、意味不明な言葉が書かれていた。
『ウシアオウィミキンネイエ』
ますます気になった。
これはもう買うしかない。そう考え、別のことに使う予定だった予算を使ってしまった。
リバース。
とても感動的で、素晴らしい作品だ。
そして、読み終えた今なら分かる。
最後の言葉の意味が。
頬を熱いものが伝っているのは、物語に感動したからなのか、それとも――【作品集】 私の父は、いい年をしてイタズラ好きです。
休みの日は、タンクトップと半ズボン、ゴム草履というラフな格好でよく散歩をしているようですが、部活帰りの私を待ち伏せしていることもしょっちゅうです。
ある休日。
友達の家に遊びに行っていた私は、思いがけず長居してしまい、暗い帰り道を足早に歩いていました。
家まであと500メートルほどのところまで来た頃。
後ろから、カツンカツンと、自分のものとは違う足音が聞こえてきました。
立ち止まると音は止み、振り返っても誰もいません。
意を決して走り出すと、その足音の主も同じように走ってついてくるようでした。
息も絶え絶えに、何とか家の前にたどりついた時、油断してひざに手をついた私の肩を、何者かの手が――
――悲鳴をあげながら家に飛び込もうとすると、後ろから聞き慣れた声が聞こえました。
「おかえり。帰りが遅いから、お前を脅かそうと思って待ってたんだ。父さんの尾行はなかなかのもんだろう?」
振り向くと、イタズラっぽい笑みを浮かべた父が、いつも通りの格好でそこに立っていました。
「ば、バレバレだったよ」
「そ、そうか。100メートルくらいなら何とかいけると思ったんだが……そう言えば、向こうの角のところで、お前の前の彼氏と会ったぞ」
「えっ……」【作品集】 俺は、大分県のとある高校に通っている。
所属する部は、ミステリークラブ。そこの部長なんかをやっていたりする。
我が部は主に、校内や生徒の周りに存在する謎を解き明かしていくことを活動目的としている。
そうそう謎など転がっていないので、普段は部室でだべったり、黙してミステリー小説に読みふけっていたりするのだが。
現在は、目下調査中の事案がある。
その内容は、この学校に密かに存在しているという幻のクラブについてだ。
何を目的としたクラブなのか?
いつどこで、どんな活動をしているのか?
部員はどのくらいいるのか?
噂の出処はどこなのか?
そもそも、本当に存在しているのか?
調べれば調べるほど、疑問は湧いて出てくる。
部員総出で、教職員及び生徒のほぼ全てに聞き込みを行ったが、分かったのは1つだけ。クラブの名が「大分クラブ」であることだけ。その他の有力な情報は皆無と言っていい。
調査開始から既に1ヶ月近くが経ち、部内に諦めの空気が漂い始めた頃だった。
部室でこれまでの調査結果をまとめていたおかげで、すっかり帰りが遅くなってしまったその日。
俺は、不気味なほどに静まり返った校舎の中を歩いていた。
自分の足音だけが廊下に響く中、ふと、階段の前で足を止める。
帰るには下に行かなければならないのだが、なぜか俺は、吸い寄せられるように階段を上り始めた。
その先にあるのは、屋上しかない。
今は閉鎖され、誰も立ち入ることができない。
……はずなのだが、何故か少しだけドアが開いている。
誰かいるのだろうか。そう思って隙間から外を覗き込むとそこには、並んで立つ数人の生徒の姿があった。
俺は心の中で小さくガッツポーズした。
こんな時間に、どうやって開けたのか、こんな場所でたたずんでいる集団。
彼らこそが、求め続けてきた秘密クラブであると、そう確信したのだ。
はやる気持ちを抑えきれなくなった俺は、彼らの動向をうかがうこともせず、一思いにドアを開けた。
一斉に向けられる視線。
何の部活なのかは分からないが、少なくともその目からは、楽しいという感情は読み取れない。
楽しくなければ部活じゃない、というのは俺の持論だが、これが彼らのあり方なのだろうか。
兎にも角にも、まずは話をしてみなければ何も始まらない。
そう思って、胸ポケットから手帳を取り出そうとした時、列の真ん中にいた男子がこちらに歩み寄ってきた。
彼は右手を差し出しながら、虚ろな目で言った。
「我々の仲間とお見受けします。我々は来るものを拒みません」
「何を、言ってるんだ……? 俺はただ、あんたらの活動目的を聞きに……」
「“私”の目的はあなたが思っていることで間違いありません。しかし、私というちっぽけな人間にそれを独りで実行する勇気はありませんでした。だから私は同士を集めたのです。“我々”の目的は、この腐りきった世の中にかつてない衝撃を与えること。そのために私が想定した人数まであと1人。つまり……」
彼はそう告げると、呆ける俺の手を取り、部員たちのいるところまで連れて行った。
他の部員たちは何故か手をつないでおり、俺もその輪の中に。
もう片方の手を取った女子の手は、ひんやりと湿っている。
自分の手にもじんわりと冷や汗が出てくるのが分かった。
「あと1人」というのはつまり、俺のことだ。それはすぐ分かった。
しかし、彼らの目的は……
それを考えたとき、頭の中に1つの言葉が浮かんできた。
彼らについて唯一分かっていたこと。
「大分クラブ」という名称。
その本当の意味は……
それを理解した時には、もう手遅れだった。【作品集】 娘から再び手紙が届いた。
よほど急いで書いたのか、殴り書きで読みにくいが、内容は以下の通りだ。
* * *
この前お父さんが買った暖炉
役に立ってなかったよね、全く
ろくにまきも燃えないしさ
寒さ全然しのげないよアレ
早いところ売っちゃわなきゃ
レトロって価値しか残らなくなる
P.S
留守番電話にメッセージを入れるのは
くれぐれもやめてね。【作品集】