29日に東京・日本武道館で行われた全日本柔道選手権…
石井 慧選手が2年振り2度目の優勝を遂げ、日本男子柔道の頂点に立ちました。
会場は異様な盛り上がりを見せてましたね。
今回は純粋に柔道日本一を決める以外に
北京五輪100kg超級の代表争いが加わりましたから…
今大会の注目度が非常に高かった事を証明した盛り上がりでした。
また1回戦から試合内容も非常によく、これも会場を盛り上げる一因になってましたね。
五輪代表の座を争う3人…
棟田 康幸選手、石井 慧選手、井上 康生選手…
これにこの大会の連覇を狙う100kg級五輪代表の鈴木 桂治選手を加えた4強に
高井 洋平選手、生田 秀和選手ら伏兵陣も多彩で
それぞれのぶつかり合いはとても激しいものでした。
石井選手は緒戦の庄司 武男選手戦で隙をつかれて押さえ込まれる場面も…
ヒヤリとしましたが何とか体勢を入れ替える事に成功し難を逃れると
逆転の大外刈りで1本勝ち。
これで実戦感覚を取り戻したのか、その後は泥臭くも『負けない柔道』に徹して勝ち上がります。
棟田選手は準々決勝の生田 秀和選手との1戦で
生田選手の小外刈りであわや1本かという際どいところを辛うじて凌ぎ(生田選手の技あり)
ポイントを追いかける展開になりますが、直後に得意の支え釣込み足を豪快に決め
逆転の1本勝ちで場内の大観衆を震わせました。
鈴木選手は実力通りに危なげなく勝ち上がります。
4強の1角が崩れたのは準々決勝の事…
井上選手は準々決勝までオール1本勝ちと好調をアピールしており
この準々決勝でも巨漢の高井 洋平選手に対してどのように勝つかが見所だったのですが
残り時間僅かで勝負を賭けて仕掛けた内股を
待ち構えていた高井選手にすかされ、そのまま押さえ込まれての1本負け…
大観衆が悲鳴をあげ、そして落胆の溜息をついていたのが画面を通じてもよく分かりました。
これで代表争いは準決勝で直接対決する棟田選手と石井選手に絞られた訳です。
注目の準決勝は組手が喧嘩四つという事もあり、組手争いに終始する中
石井選手が不十分な組手から先に先に動いて積極性を見せる戦術が功を奏し
組手にこだわって後手にまわってしまった棟田選手を指導ポイント1つ差で注意優勢で破りました。
場内の観客からは激しい技の攻防を期待していたのが一転地味な戦いに終始した為に
ブーイングまでは行きませんでしたが不満を示す溜息が漏れていました。
しかし、代表争いの直接対決ですから、両者共に慎重になるのは仕方ない事だと思います…
決勝は石井選手と準決勝で高井選手を鮮やかな小外刈り1本で破った鈴木選手の一戦になりました。
この両者の決勝は3年連続で2006年は石井選手、2007年は鈴木選手が勝ち、日本一になっています。
手の内を知り尽くした両者…
試合後「一発飛び込んで攻めようと思っていた」と語った石井選手が
試合開始から前に出る展開…
片や「闘争心が足りなかった」と振り返った鈴木選手は石井選手の突進に一方的に防戦に回る形…
そして石井選手が放ったのは対鈴木選手戦用の「秘策」大内刈り!
ダミーの大外刈りを何度も繰り返した後で同じ入り方で大内刈りを繰り出し
有効を得た後、すかさず押さえ込みに入ります。
決ったと思ったんですが、鈴木選手が意地を見せて28秒で返したのは凄かった!!
この場面は鳥肌モンでした…
押さえ込みが解けて石井選手の技ありとなり、ポイントリードした石井選手は
開始から見せた積極性を放棄し、残り時間を守りに徹する試合運びを見せます。
審判からは警告まで受けましたが、ポイント差と時間を冷静に計算した試合運びと云うところでしょうか…
後半は見ていて少しばかり物足りない内容でしたが
石井選手が逃げ切り、優勝を果たした訳です。
この優勝で逆転といっても過言ではない代表の座を獲得した石井選手…
優勝インタビューでは人目も憚らずに大泣きしていたのが印象的でした。
大会終了後の代表強化委員会で北京五輪代表に選出された石井選手。
綺麗な柔道をするタイプではないので、人気はありません。
石井選手自身が「俺は国内戦ではヒール(悪役)」と言うように
自分の形を固定せず相手や状況に合わせた戦い方で強敵から勝ちをもぎ取るスタイル…
『勝つ為に手段を選ばず』型の柔道ですので、日本人の理想とする柔道からは離れていると見えますし
実際あまり見栄えはよくありません。
しかし、とにかく『練習の虫』といわれる石井選手…
こと『勝負』にいって勝つ事が出来る選手でもあります。
オリンピックに向けて自己管理に努めて、怪我なく本番を迎えれば結果は自ずとついてくる…
五輪の頂点に一番近い選手だと思っています。