平岩弓枝著 「ものは言いよう」 講談社 2000年9月5日発行
「大衆文芸」に1994年5.6月号~2000年4月までに乗せていた
ものをまとめた59編のエッセイ集である
平岩弓枝さんは小説家、脚本家で長谷川伸門下の人である
文化功労者、文化勲章受章者でもある
代表作は「御宿かわせみ」や「女の顔」、「女の河」上・下などがある
平岩弓枝さんは戦前生まれで91歳の長寿迄生きられたので
戦後の日本の変わり様をみてこられたので
エッセイからも学ぶことが出来る
文中から引用してみると 「お正月」より
-それにしても、神社のお正月風景も随分、さまがわりしている
一昔前までは初詣のピークは除夜の鐘が鳴ってから、元旦の正午頃までであった
この節、一応、除夜の鐘のあとが混雑するが、それは午前二時あたりまでで、あとは
ひっそりする。再び、参詣の人があふれるのは元旦の正午から夕方までで、参道に
長い行列が続く。
要するに、人の出方が遅くなって来た
もう一つ、晴れ着姿の若い人が社務所で求めるのは、もっぱら破魔矢が多くなった
考えてみると、破魔矢を持って歩くというのが一つの正月のファッションになって来て
盛り場へくりだ出して行く若い人には、四角い御神札なんてのは邪魔なのだろう
「地図」より
-ベトナムのホーチミン市の小さなレストランで、日本人の団体客が給仕人を呼んで
ビールが冷えていないと英語で注意した。が、給仕人は英語を理解せず、ただ
困ったように愛想笑いをした。するとその日本人は必死の形相で再び、ビールの
冷えているのを持って来いと繰り返した。それでも、給仕人は当惑したままである。
遂に日本人達は口々に日本語でこの国はよろしくない、給仕人は不親切だの、
気が利かないだのと悪口をいいはじめた。
現在のベトナムでは、まだ電気冷蔵庫がそれほど普及していないという事実である
当時の面白い話がいろいろ書かれているが、ほぼ私と同じ時代に生きた方なので
納得して楽しめた話である
小説も身を入れた読むと面白いが、最近は短いエッセイがサッと読めるので
手に取る回数が増えている
最近は知識を得るために読むよりも活字を読むのが楽しいので
日本語の良さをつくづく実感する