家族は私の決断に賛成してくれた。

「できる限りのことはしてあげたし、今までよく面倒を見てきた。きっと大吉も感謝しているよ。」

 その言葉を聞いて、私は人生最大に泣いた。ふと見ると、大吉は何事もなかったかのようにカラーを枕にして寛いでいる。その時、かつて絶望のどん底で苦しんでいた頃、唯一心の支えになってくれていたことを突然思い出した。

「ダメだ!安楽死なんて絶対にダメだ!」

 理屈ではなく本能的にそう感じた。すぐに獣医さんに電話をかけ、安楽死はしないと伝えた。正確には、母に途中で電話を代わってもらった。私はとめどなく流れる涙のせいで、言葉を発することができなかったのだ。

 数日後、再び獣医さんを訪れた。耳を短く切ってもらうために。何度手術を受けたことだろう。私も辛かったが、大吉も同様に辛かったに違いない。しかしこれからも、一緒に生きていく道を選んだのだ。ここまできたからには、何が何でも死ぬまで面倒をみる。もはや大吉は私の大切な一部分であり、ペットという存在を遥かに超えていた。

 大吉から多くのことを学んだ。それは決してあきらめない気持ちであったり、命の尊さであったり、どんな困難でも解決する方法が必ずあるといったことである。しかし一番の収穫は、私が再び自信を取り戻すことができたことに他ならない。

 過去の様々な経験から心はねじ曲がり、人の幸せを素直には喜べず、むしろ人の不幸を望んでいた。天狗にさえもなっていた。そんな自分がたかだか一匹の犬のために極限まで心を痛め、体調を崩しそうになりながらも尊い命を守ったのだ。

 そのような純粋な心がまだ残っていたことが、何よりも嬉しかった。今では大吉が我が身を削り、大切なことを教えてくれたと思っている。この出来事は非常に大きなターニングポイントであった。安楽死の道を選んでいたら、今の私はないに違いない。

 結局、中古車が買えるぐらいのお金と引き換えに、大吉はカラーを二つ身に付け、耳が短いミニチュアダックスフンドとなった。おそらく、世界中探してもいないのではないだろうか。しかし、姿かたちなどもはやどうでもいいのだ。いてくれるだけでいいのだ。それぐらい命は重く、尊い。この数か月間本当に苦しかった。だけど一言だけ言わせてほしい。

「大吉、私を選んでくれてありがとう。」