ワールドカップ(W杯)は、スペインの優勝で1カ月の日程を終えました。
スペイン代表は早くも帰国し、熱狂的な歓迎を受けたとのことです。
全世界的に見れば、スペインの攻撃サッカーが頂点に立ったことや、ヨーロッパのチームが史上初めてヨーロッパ大陸以外でのW杯で優勝したことなどが最大の話題ですが、
日本国内では、もちろん日本代表の決勝トーナメント進出が最大の話題です。
大会前、代表チームが現地に向けて出発したときには、あきらめムードが大勢を占めていただけに、思わぬ健闘に多くの人が熱狂したのだと思います。
これまで、期待しながら裏切られることが多かっただけに、はじめて期待以上のものを目の当たりにして、興奮した気持ちは僕も良く分かります。
そこで、日本代表の戦いを振り返って、今後の展望を書いてみたいと思います。
今大会の日本代表の試合のうち僕が目を見張ったのは、第3戦のデンマーク戦でした。
カメルーン戦の1対0の勝利も、オランダ戦の0対1の敗戦も言わば想定内の出来事で、十分考えられることでした。
なぜなら、敗戦は喫していましたが、大会前のイングランドとコートジボワールとの強化試合で、日本の復調は見えていましたので、この程度の成績は残せるのではないかと思っていたからです。
この2試合では、むしろ対戦相手の不調ぶりの方が僕には気になりました。
しかし、デンマーク戦の3対1という結果には、正直言って驚きました。
2点はFKによるものとは言え、あのディフェンスの堅いデンマークから3点を取るということは、決定力不足に悩んでいたチームでは考えられないことでした。
また、決勝トーナメント進出がかかるというプレッシャーの大きな試合で、それだけの結果を残したことに、これまでにはないたくましさを感じました。
イギリスのBBCのこの試合の実況を少し見たのですが、BBCのアナウンサーが「素晴らしい勝利」と賞賛していました。
あのような手放しの賞賛はあまり聞いたことはありませんので、デンマーク戦の勝利は世界中にかなりのインパクトを残したようです。
そこでやはり気になるのが、日本国内ではあれほど勝てなかったチームが、なぜ急に変わったのかということです。
今では、選手だけでミーティングを開き、意見のぶつかり合いの末、自分たちに合った戦い方を見つけると同時にチームワークが出来上がっていったことは有名になりました。
確かに、これは大切なことですし、チームが変わるきっかけとなりうるものだと思います。
しかし、選手たちにそのような気持ちを起こさせたのは、日本国内での余計なプレッシャーから解放されたからではないのでしょうか?
そこに岡田監督の、本田を生かすためのチーム作りが加わってチームが変貌したのだと思います。
具体的に言えば、まずは失点を避けること、攻撃はカウンター中心とすること、本田を1トップにすることなどです。
これらの変更が功を奏した結果が、決勝トーナメント進出に繋がりました。
しかし、岡田監督にしてみれば、このような戦い方をすれば、ある程度の好成績を残せることは分かっていたのではないかと思います。
本田の1トップは苦肉の策でしょうが、他のものは、理想とするサッカーが結果を出せなかったときの最終手段として、ある程度頭にはあったはずです。
なぜなら、守備を固めてカウンターにかけるというのは、強豪と対戦するときの弱小チームの常套手段だからです。
岡田監督は、そうではなく、あくまで日本独自の攻撃サッカーで世界に挑みたかったのではないかと思います。
しかし、結果を求める周りの声と、そのプレッシャーに耐えかねた選手が、それを許さなかったのではないでしょうか?
そこで次に問題となるのが、今回の好成績が将来に繋がるかどうかということです。
それは、今後の代表監督の方針によるのではないでしょうか?
現在のカウンターサッカーに磨きをかけるのも1つの道ですし、オシム前監督や岡田監督が目指した、激しいプレスによる攻撃サッカーを目指すのも一つの方法です。
しかし、どちらにしても1つ課題があります。
それはこれまでも言われてきたFWの育成です。
本田はあくまでMFであって、トップに入る選手ではありません。
本田が2列目から飛び出すようなチームにならなければ、日本の将来はありません。
そのために、森本や平山が成長するのか、新たな選手が出てくるのかは分かりませんが、ストライカー育成は最重要課題です。
今大会の大活躍で、多くの選手がヨーロッパをはじめとする海外クラブからのオファーを受けて海外に移籍しそうです。
彼らには経験を積んでもらいたいですし、代表チームに貴重なものをもたらしてほしいと思います。
そして、マスコミや僕たちサポーターも、代表チームが世界レベルである程度通用するようになったのですから、サポーターの意識もワールドクラスにならなければいけないと思います。
それがブラジル大会でのより良い成績に繋がるのではないでしょうか?