既に終了してしまいましたが、恵比寿のEBiS303に『Re 又造 MATAZO KAYAMA』に行ってきました。

 

同展では、

・ 日本画家・加山又造(1927-2004)の原画と、

・ 映像演出家や陶版画制作企業など現代のアーティストたちが最新技術で加山の作品を

  復元・アレンジした作品

を見ることができました。

 

 

京都生まれの加山又造は、父親が西陣織の帯の図案家でした。又造が生まれたときには、弟子を抱える人気でした。

祖父は旅絵師。

幼いころから京都の伝統の中で着物の世界を見て育ち、その後、画家として歩みだした又造は、現代の琳派といわれる装飾的な画風で注目を浴びました。

 

京都の保守的な画壇に限界を感じて、東京藝大に進学。

当時は戦争の火種が高まっていたので、非難も受けたそうです。

同大日本画科を卒業後は、主に東京で活躍しました。

 

尾形光琳のように、陶器や振袖の手描き、水墨画なども幅広くてがけました。

 

先端技術に肯定的な進歩的な方だったそうで、生前から、ほとんどの作品をスキャンして残ししたり、陶板の複製製作に協力していたそうです。

 

加山氏のお孫さん、加山由起様によるギャラリートークがあったので参加しました。

各回30分とのことでしたが、実際は45分以上じっくりお話を聞けました。

 

 

《おぼろ》 

1986年 紙本彩色 四曲一隻

大塚オーミ陶業とのコラボレーションによる陶板作品。加山氏本人も制作に参加し、満足していたそう。

大塚オーミ陶業は、徳島県の大塚国際美術館にある原寸大のシスティーナ礼拝堂やキトラ古墳の原寸大再現なども手がけています。

 

2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットでは、首脳会談会場の前に展示され、手で触れながら鑑賞してもらったそうです

100年後も劣化せず、雨の中でも鑑賞できるほど耐久性に富むそうです。

本展では、水面に立てられた陶板をかがり火が照らし、桜の花びらが舞い散る映像演出もあり、夜桜の幻想性が表現されています。
これぞ日本の春の儚い美しさ。。風情を感じました。 

 

 

目玉は、終盤にある龍の天井画の複製。

身延山久遠寺の天井画「墨龍」(山梨)
敷き詰めた金箔の上に巨大な龍が墨一色で描かれています。

 

 

 

臨済宗大本山・天龍寺の天井画「雲竜図」(京都・嵯峨野)
法堂(はっとう)天井に、平成9年(1997)、天龍寺開山夢窓国師650年遠諱記念事業として描かれたもの。
 

 

原寸サイズで会場天井に再現されています。 .
宙に飛び出すようにうねる巨体、鼓動を感じさせる輝く鱗、生きているようにぎょろついた目で鑑賞者を睨みつけてきます…。

大迫力です!


この2体の龍を並べて飾ることのできる大きな天井のある会場を探すのも大変だったそうです。 

この会場でもぎりぎりだったそうです。

 

 

《黒い鳥(からす)》

1959年 紙本彩色 額装

加山氏は、背が低い自分にコンプレックスを感じていたそうです。

枯れた木の枝にうつむいて停まる烏。盲目で首が取れそうな悲しい姿で、足が太いのが特徴です。

自分を投影していたのではないかともいわれているそうです。

 

また、戦後の混迷の時代を描く、若者の心情を表現したものと解釈することが出来ます。

 

東京美術学校で学生時代を過ごした彼は、上野の森に集まるカラスの様子に共感を覚えていったそうです。晩年まで、度々カラスの絵を描いています。

 

この写真ではわかりにくいのですが(すみません)

間近で見ると、真っ黒ではなく青みがかった「カラスの濡れ羽色」であることがわかります。

 

 

 

《倣北宋寒林雪山》

1992年 紙本墨画、六曲一双

 

加山氏は、日本画の潮流として脈々と流れる東洋画の伝統とむきあうため、水墨画も研究していたそうです。

40代になって大病をして手術を経験、色彩を超えた表現=墨に関心が高まったといいます。

 

その成果として、こうした「倣北宋」=「北宋に学ぶ」作品を製作しました。

 

中国・北宋時代の絵画は、水と墨という素材を、筆の技術によって緻密に制御する技法を基礎にして、大画面、かつ複雑な構成のなかで、よりテクニックの高い描画が探求されました。

 

加山は「黄山」の山を描いた北宋の複数の名画から、山の様子や樹木の描き方などを抜き出して、コラージュしたそうです。

この屏風には胡粉が密に塗られていて、全体にマスキング処理を施すことによって、墨の濃淡は生まれていて、それが加山氏の水墨画の特徴とのこと。

 

 

 

 

 

陶版画のなかには、なんと触れる作品もあります。

 

《華扇屏風》

本物は、山種美術館所蔵 1966年、絹本着色。

本展では、絹の上に描かれたこの「華扇屏風」をもとに制作した陶板美術作品が展示されています。

扇に四季の花を描き画面全体に舞い散らせる構成と、金銀箔の華やかな装飾によって、加山は「現代の琳派」と呼ばれるようになります。
 

普段、美術館で作品を触ることなんてないので、不思議な気持ちです。笑

ざらざらした部分とつるつるした部分とが混在しています。

 

 

屏風絵の《春秋波濤》をもとにした体感型アート。

本物は国立近代美術館所蔵。

1966年、絹本着色、六曲一双。

 

「春の山」「秋の山」など絵のパーツがレイヤーに分けられ、天井から吊り下がっています。

その中を通ってもOK。絵の中に入り込んだ気分を味わえます。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、撮影自由でした。

私は手持ちのiPhoneで撮影しましたが、一眼を持参しなかったことを激しく後悔しました…。

薄暗いので携帯だとどうしても手ぶれしてしまって、画像品質が下がってしまいました。

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【展覧会情報】ー終了ー

『Re 又造 MATAZO KAYAMA』

2018年4月11日(水)- 5月5日(土・祝)

会期中無休
EBiS303イベントホール(恵比寿駅徒歩5分)
公式サイト: https://rematazo.tokyo/