米国東海岸にあるボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston、略称はMFA)は、頻繁に来日展覧会を行っていて、2017年8月現在も「ボストン美術館の至宝展(鑑賞メモはこちら)」が開催されています。
あまり(一度も?)来日していない作品にも沢山良いものがあるので、いくつかご紹介しようと思います。今回は、アメリカ絵画特集です。
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チャイルド・ハッサム Childe Hassam (1859–1935)
アメリカ印象派の中心的な画家です。
マサチューセッツ州ドーチェスター生れ。ボストンに出て木版画や油彩を手がけたのちに、パリに二度滞在し、本場フランスの印象派を学びました。米国に帰国後、ウェアJulian Alden Weir・トワックトマンJohn Henry Twachtman・ターベルEdmund Charles Tarbell・ベンソンFrank Weston Bensonらとアメリカ印象派のグループ〈ザ・テンThe Ten〉を立ち上げ、その中核として活動しました。
画面左の家路を急ぐ人々と、雪の積もった静かな公園が対比されています。
《アザレアと林檎の花の静物画》
シャルル・コールマン Charles Caryl Coleman (1840–1928)
英国で1870-80年代に興った唯美主義に影響された作品。
ペルシャの家具、ヴェネツィアの花瓶、トルコ絨毯、日本の扇など、いろいろな国からの要素を取り入れているのがこの画家の特徴です。
《慈愛》 Caritas 1894–95
アボット・テイヤー Abbott Handerson Thayer (1849–1921)
伝統的な美徳である「charity=慈愛(ラテン語でCharitas)」を擬人化した作品。彼は、ルネッサンスや古典主義の作品にしばしばインスピレーションを得ていました。
モデルは、ハーバード大学の地質学者の娘Pumpelly嬢。彼女はサージェントと同時期にアイルランドのダブリンで避暑を過ごしており、その際にモデルになってもらったそう。ギリシャ風のクラシックな衣装に身を包み、女神のように理想化された彼女の足元に、純粋さを体現した子供たちがたたずんでいます。
なんと美しい~♥
ボストンでは発表直後からたいへん好評でしたが、画家本人はあまり気に入っていなかったようで、「春」または「朝」へのタイトル変更や、ほかの作品との差し替えを美術館に何度も申し入れていました。
《エドワード・ダーレイ・ボイトの娘たち》
1882年
彼の関心は近代生活の心理と光の効果にありました。
同時代の画家たちと同じく、ベラスケスを尊敬しており、本作は「ラス・メニーナス」の画面構成から影響を受けた作品です。
パリのお洒落なアパルトマンにて。中央と右端に大きな壺が描かれているのが目立ちます。サージェントは日本や中国の陶磁器の収集家でもありました。
サージェントは最晩年に、この美術館の天井画も制作しています。
Architecture, Painting and Sculpture Protected by Athena from the Ravages of Time
1921
ちなみに、ボストン公共図書館(Boston Public Library)やハーバード大学向けにも壁画を制作しています。
ボストン公共図書館 「サージェントの間」
出典:http://www.sargentmurals.bpl.org/site/murals/index.html
《エレアノーラ》 Eleanor
フランク・ウェストン・ベンソン Frank Weston Benson 1907
ノースヘイブンにある別荘で娘を描いた作。
ベンソンは、郊外の自然の中なか陽光を浴びて元気に遊ぶ子供たちを描いて人気を集めた画家です。本作は彼の作品の中でもっとも好評だったものの一つ。
パリで画家としての修養を積み、前述のThe Tenのメンバーに加わりました。伝統的な画壇の枠組みにのっとって作品を広めることを嫌い、NYやボストンで独立した展覧会を開いて独立独歩で作品を世に出そうと努めました。
《ボート上の母娘》 Mother and Child in a Boat 1892
エドムンド・シャルル・ターベル Edmund Charles Tarbell (1862–1938)
同じくThe Tenのメンバーです。
印象派の…というかモネの影響が濃く出ていますね。
印象派はアメリカ、とくにボストンでは本国のフランスよりも早くから受け入れられ、モネなど、あまりにもアメリカ人に自分の作品が購入されるので、”ヤンキー”たちアメリカへの作品流出を嘆いたほど。
アカデミックな画風がヨーロッパほど厳しく確立されていなかったこともあるようです。
《桟敷席にて》 In the Loge
メアリー・カサット Mary Stevenson Cassatt
印象派のなかでは数少ない女流画家。
こちらは、2016年に横浜&京都で行われたメアリー・カサット展に出品された作品です。
女性はオペラグラスで熱心に舞台を見つめていますが、画面奥の男性は、舞台ではなく彼女の姿をのぞき見しています。
女性(とくに良家の女性)は男性同伴でないと外出できませんでしたが、この時代には、昼間のマチネ公演には一人で来る女性も増えてきました。
男性から「見られる(品定めされる?)」立場である女性が主体的に「見る」側にもなってゆく近代の社会変化をワンシーンでうまく表現しています。
カサットは、身近な人々や家庭の情景を主題に制作をし、特に母子をとらえた心温まる作品を多く残しました。しかし、自身は生涯独身を貫くました。
参考文献
MFA Highlights: American Painting, 2003, MFA Publications
美術館外観(個人撮影)。
そのほか、注記のない作品画像は全てMFA公式サイトより。
【美術館情報】
Museum of Fine Arts, Boston
Avenue of the Arts
465 Huntington Avenue
Boston, Massachusetts 02115
617-267-9300