経験から生まれ行動を導く方法論
面白そうな連載在りましたので保存用にコピペ
あなたの「持論」は文章に書けますか?
「経験から生まれ行動を導く方法論」と共にプロへの旅を続けよう
「あの人はプロフェッショナル(プロ)だ」と言う場合、何をもってプロと呼んでいるのだろうか。
一般にはスキルとキャリアで語る傾向がある。
スキルについては「あの人の○○技術は凄い」(テクニカルスキル)、「難しいと言われる顧客でも必ず納得させる」(ヒューマンスキル)、「発想豊かな提案ができる」(コンセプチュアルスキル)といった具合である。
キャリアについては「どの地域を担当しても成果を挙げてきた」「10年間、売り上げを伸ばしている」といったように業績を含めて語ることが多い。
スキルもキャリアも欠かせないが、それ以上に重要なことがある。学び続けることだ。
あなたの周囲で何かのプロと目される人をじっくり観察してみてほしい。多くの仕事で成功を収め、周りを見ても並ぶ人がないくらい高いスキルを持つにもかかわらず、本人は色々なものを学び続けているのではないだろうか。
日々の仕事から常に何かを吸収する。立派なキャリアを持っていながら後輩から学ぶこともいとわない。直接仕事と関係ない活動にも取り組み、そこからも何かを得ている。
こうした人はおそらく仕事から完全に離れる日まで学び続ける。これが筆者の考えるプロである。
ある道を究める活動を「旅」に例えることがある。技術にしろ、マネジメントにしろ、営業にしろ、商品開発にしろ、仕事のプロとして極めていくことは旅である。
どんな仕事であっても、一般的に認められているやり方、あるいは身近にいる他者のやり方を学ぶところから始まる。一定の経験を積むと、ある程度のことを習得し、実行できるようになる。
そこでもう少しうまくできるようになりたいと思い、自分なりの工夫を加えていく。工夫はうまく行かないこともあれば、うまく行くこともある。
試行錯誤しているうちに、こうすればうまく行くという自分のやり方を見つけることができる。ここまでくると一人前になったと言われる。
ここがプロへのスタート地点であり、プロとしての旅が始まる。さらに経験を積み、他者と交わり、自分のやり方を磨いていく。これが学び続けるということだ。
改めて「持論」を定義する
プロは何をどのようなメカニズムで学び続けているのだろうか。これが本稿のテーマである。
「学ぶ」とは何か。今ある自分の考えの中に新しい考えを加えることである。それは時として、これまで信じていた考えを捨てることも意味する。
「考え」とは何か。技術者であれば、どのようにすれば自分の専門とする技術を使ってうまく仕事を進めていくことができるかということである。
営業担当者であれば、どのようにしたら顧客を見つけ、提案し、注文をとるかということである。
マネジャーであれば、どのようにすればマネジメントしている仕事やプロジェクトをうまく進めることができるかである。
この考えを「持論」と呼ぶ。
辞書を引くと、持論とは「かねてから主張している自分の意見・説」などと書かれている。こう定義すると実践的に根拠のない説であっても持論になってしまう可能性がある。そこで本連載ではもう少し狭い意味で「持論」という言葉を使う。
日本のリーダーシップ研究の第一人者である神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は『リーダーシップ入門』(日経文庫)の中で「リーダーシップの持論」を「実践から生まれ、実践を導いている理論」と定義している。
この定義にのっとり、本連載では「経験から生まれ、行動を導いている方法論」を持論と呼ぶ。
持論のイメージを明確にするために例を挙げてみよう。筆者はプロジェクトマネジメント(PM)のコンサルティングやトレーニングを手がけているのでPMを例に取る。
どんな仕事であってもPMの要素を含むものだ。以下の例をご自分の担当している仕事に置き換えて読み進んでいただきたい。
プロジェクトでは、スコープ(範囲)、コスト、スケジュール、要員、品質に関するプロジェクト計画を作り、計画実行に当たってリスクマネジメント計画も作る。そして計画に従ってプロジェクトを実施していく。一般的に認められているやり方はこうである。
Aさんは一般的なやり方で何度かプロジェクトマネジャを務め、自らの経験から「計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダー(利害関係者)を巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要だ」と考えるようになった。
実際、Aさんはプロジェクトに取り組む際、計画を作る前に、重視するステークホルダーを決めてコンタクトし、計画の方針を必ず相談するようにした。これが奏功し、Aさんが担当するプロジェクトは毎回、問題が少なく、スムーズに進んでいた。
このように、経験から生まれ、行動を導くものが持論である。
「ステークホルダーを決めてコンタクトするなんて当たり前でしょう」と思われた方がいるかもしれない。Aさんの持論の普遍性や独自性を論じたいのではない。Aさんが自分の経験を通じてAさんなりに考え、行動に移した、これを持論と呼ぼうということである。
持論が必要な三つの理由
どんな仕事であっても一般的に認められている方法がある。名称が付いた方法論としてまとめられることもあれば、ベストプラクティスと呼ばれるものもある。ただし、いずれについてもその通りやれば必ずうまく行くということではない。うまくいく可能性が高まるに過ぎない。
著名な方法論を使う場合でも、自分なりに経験を踏まえて試行錯誤し、他者の意見を取り入れながら、自分なりの使い方を見つけなくてはならない。
筆者はこれを「スタイル」と呼んでいる。一人前になった多くのプロは頭の中にスタイルを持っている。これを形式化・文書化したものが持論である。
持論により行動が以下のように変わる。言い換えれば、このように行動できる人がプロである。
・行動のガイドラインを持ち、速やかに自信を持った行動をとれる
・仕事における工夫の効果を評価し、問題があれば是正する
・学び続けることができる
これら3点について見ていこう。
自信を持った行動をとれる
プロは常に自信を持って行動することが求められる。プロの自信に満ちた行動を見て、顧客や同僚や協力メンバーは初めて安心し、プロについていく。
プロジェクトマネジャーを例にとれば、持論によって、自分のスタイルでプロジェクトの構想を描き、計画を立て、実行の各段階のマネジメント活動を自信を持って実施していくことができる。
PMのトレーニングをする際、筆者は「初めてのプロジェクトのときは標準や教科書通りに進めて下さい。ただし2回目からは必ず自分の考えを入れ、自分のスタイルを徐々に作っていきましょう」と説明している。
もともとはプロジェクトマネジャーを育成するにあたり、考える習慣を付けてもらうためにこう話してきたのだが、ほんのちょっとでも自分の考えを入れることによって、プロジェクト全体に対し自信を持ってマネジャーが行動できるようになることに気が付いた。
「自分のものにする」という言葉がある。まさにその通りで、自分のものにならない限り、自信を持って実行できない。
自分のものにするからと言って、すべてを自分の考えに切り替える必要はない。自分が大切だと思うところに持論が入っていれば、全体が自分のスタイルになる。そして自信を持って実行できるようになる。
問題に気づいて是正できる
プロは自分の行動に責任を持たなくてはならない。行動の結果について「決められた通りにやったのですが」「言われた通りにしました」と発言するようではプロとは言えない。
責任を持つには、自分がやっている仕事の進め方や工夫について効果が出ているかどうか、注意を払わなくてはならない。
PMが狙い通りの効果を発揮しているかどうか、チェックするのはなかなか難しい。プロジェクトが計画通りに進んでいるからPMは効果を発揮している。こう言えるなら簡単だが、そうとは限らない。
PMは機能していなかったが、メンバーの頑張りなど別の要因で、なんとか計画通りに進んでいたとすれば、メンバーが頑張れなくなった途端、プロジェクトは崩壊しかねない。
そこで持論に注目したい。持論は「Xという行動をとればYという効果がある」という形であることが多い。こうした持論によって、プロジェクトマネジャーは現在の状況がPMの狙い通りかどうかを検証できる。
Aさんの例に戻ろう。Aさんが担当することになったプロジェクトで、顧客(発注者)の満足度向上が重要なテーマになっていた。そこでAさんは、この顧客の業務に精通しているBさんにプロジェクトに参加してもらおうと考えた。
Aさんの持論は「計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダを巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要」である。
ステークホルダーとしてBさんの上司がいる。そこでプロジェクトの計画段階でBさんの上司と話し合い、「彼の経験にもなるだろう」と上司からBさんの参加について賛同を得た。
ところがプロジェクトが始まると、Bさんは顧客の担当者と十分な話し合いの時間を取らず、手持ちの知識に基づいて「こうしましょう」と決め、仕事をどんどん進めて行った。進行は順調に見えたが、プロジェクトを機に業務を変革したいと期待していた顧客は困惑し、Aさんに改善を申し入れた。
Bさんの上司に相談したとき、Aさんは「Bさんの業務知識が今回は鍵になります」と強調した。ただ「顧客の業務改革を支援することで満足度を高める」といった本来の目的についてあまり明確に伝えていなかった。
Aさんは再度、Bさんの上司に説明し、目的や進め方を改めて理解してもらった。その上で、Bさんを交えて3人で話し合い、Bさんのやり方を顧客の期待に沿った形に変えてもらい、プロジェクトを成功に導いた。
持論があることによって、計画通りにプロジェクトが進まなくなったときに、適切なPMができているかどうかをチェックできる。行動がぶれていれば行動を修正する。行動はぶれていないのに、思った効果が出ていない場合には持論の適用の仕方を変えてみる。
Aさんの例でいうと「ステークホルダーの十分な巻き込みができているかどうか」を再確認することで、狙い通りの効果を発揮するように軌道修正できたわけだ。
学び続けることができる
持論によって自信を持つことが重要である。同時に持論を利用して、自分のプロとしての活動を謙虚に、常に振り返り、是正していくことが必要になる。
もう一つ重要なのは学び続けることだ。プロとしての学びのワンサイクルは、持論の適用に始まり、持論の修正をもって完結する。このサイクルを何度も繰り返していく。
持論を持ち、持論を中心に常時、振り返ることにより、仕事を成功させる方法を合理的に習得できる。言い換えると戦略的に成長できる。
振り返ることを「内省」と呼ぶ。持論は内省を誘発し、内省の結果を整理する役割を果たす。持論の成長とともにプロとして成長していく。
注意してほしいのは、内省した結果を持論として整理することは、持論を変えることに他ならないことだ。
Aさんが活動を是正した例を思い出してほしい。当初うまくいかなった理由をAさんは次のように振り返った。
「プロジェクトの鍵を握るBさんの上司と事前に相談したにもかかわらず、Bさんの上司とBさん本人に、プロジェクトのイメージを十分共有してもらえなかった」
イメージが共有できていれば、Bさんの上司の協力の仕方、Bさんの行動も、プロジェクトの目的を実現することに主眼を置いたものになっていただろう。
こう感じたAさんは持論を修正しようと考えた。修正案に基づいて次のプロジェクトを実施し、効果を確かめてから、Aさんは持論を書き直した。
従来の持論
計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダーを巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要だ。
修整後の持論
計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画段階でステークホルダーとプロジェクトのゴールやゴール達成のシナリオを共有することが重要だ。
あなたの「持論」は文章に書けますか?
「経験から生まれ行動を導く方法論」と共にプロへの旅を続けよう
「あの人はプロフェッショナル(プロ)だ」と言う場合、何をもってプロと呼んでいるのだろうか。
一般にはスキルとキャリアで語る傾向がある。
スキルについては「あの人の○○技術は凄い」(テクニカルスキル)、「難しいと言われる顧客でも必ず納得させる」(ヒューマンスキル)、「発想豊かな提案ができる」(コンセプチュアルスキル)といった具合である。
キャリアについては「どの地域を担当しても成果を挙げてきた」「10年間、売り上げを伸ばしている」といったように業績を含めて語ることが多い。
スキルもキャリアも欠かせないが、それ以上に重要なことがある。学び続けることだ。
あなたの周囲で何かのプロと目される人をじっくり観察してみてほしい。多くの仕事で成功を収め、周りを見ても並ぶ人がないくらい高いスキルを持つにもかかわらず、本人は色々なものを学び続けているのではないだろうか。
日々の仕事から常に何かを吸収する。立派なキャリアを持っていながら後輩から学ぶこともいとわない。直接仕事と関係ない活動にも取り組み、そこからも何かを得ている。
こうした人はおそらく仕事から完全に離れる日まで学び続ける。これが筆者の考えるプロである。
ある道を究める活動を「旅」に例えることがある。技術にしろ、マネジメントにしろ、営業にしろ、商品開発にしろ、仕事のプロとして極めていくことは旅である。
どんな仕事であっても、一般的に認められているやり方、あるいは身近にいる他者のやり方を学ぶところから始まる。一定の経験を積むと、ある程度のことを習得し、実行できるようになる。
そこでもう少しうまくできるようになりたいと思い、自分なりの工夫を加えていく。工夫はうまく行かないこともあれば、うまく行くこともある。
試行錯誤しているうちに、こうすればうまく行くという自分のやり方を見つけることができる。ここまでくると一人前になったと言われる。
ここがプロへのスタート地点であり、プロとしての旅が始まる。さらに経験を積み、他者と交わり、自分のやり方を磨いていく。これが学び続けるということだ。
改めて「持論」を定義する
プロは何をどのようなメカニズムで学び続けているのだろうか。これが本稿のテーマである。
「学ぶ」とは何か。今ある自分の考えの中に新しい考えを加えることである。それは時として、これまで信じていた考えを捨てることも意味する。
「考え」とは何か。技術者であれば、どのようにすれば自分の専門とする技術を使ってうまく仕事を進めていくことができるかということである。
営業担当者であれば、どのようにしたら顧客を見つけ、提案し、注文をとるかということである。
マネジャーであれば、どのようにすればマネジメントしている仕事やプロジェクトをうまく進めることができるかである。
この考えを「持論」と呼ぶ。
辞書を引くと、持論とは「かねてから主張している自分の意見・説」などと書かれている。こう定義すると実践的に根拠のない説であっても持論になってしまう可能性がある。そこで本連載ではもう少し狭い意味で「持論」という言葉を使う。
日本のリーダーシップ研究の第一人者である神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は『リーダーシップ入門』(日経文庫)の中で「リーダーシップの持論」を「実践から生まれ、実践を導いている理論」と定義している。
この定義にのっとり、本連載では「経験から生まれ、行動を導いている方法論」を持論と呼ぶ。
持論のイメージを明確にするために例を挙げてみよう。筆者はプロジェクトマネジメント(PM)のコンサルティングやトレーニングを手がけているのでPMを例に取る。
どんな仕事であってもPMの要素を含むものだ。以下の例をご自分の担当している仕事に置き換えて読み進んでいただきたい。
プロジェクトでは、スコープ(範囲)、コスト、スケジュール、要員、品質に関するプロジェクト計画を作り、計画実行に当たってリスクマネジメント計画も作る。そして計画に従ってプロジェクトを実施していく。一般的に認められているやり方はこうである。
Aさんは一般的なやり方で何度かプロジェクトマネジャを務め、自らの経験から「計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダー(利害関係者)を巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要だ」と考えるようになった。
実際、Aさんはプロジェクトに取り組む際、計画を作る前に、重視するステークホルダーを決めてコンタクトし、計画の方針を必ず相談するようにした。これが奏功し、Aさんが担当するプロジェクトは毎回、問題が少なく、スムーズに進んでいた。
このように、経験から生まれ、行動を導くものが持論である。
「ステークホルダーを決めてコンタクトするなんて当たり前でしょう」と思われた方がいるかもしれない。Aさんの持論の普遍性や独自性を論じたいのではない。Aさんが自分の経験を通じてAさんなりに考え、行動に移した、これを持論と呼ぼうということである。
持論が必要な三つの理由
どんな仕事であっても一般的に認められている方法がある。名称が付いた方法論としてまとめられることもあれば、ベストプラクティスと呼ばれるものもある。ただし、いずれについてもその通りやれば必ずうまく行くということではない。うまくいく可能性が高まるに過ぎない。
著名な方法論を使う場合でも、自分なりに経験を踏まえて試行錯誤し、他者の意見を取り入れながら、自分なりの使い方を見つけなくてはならない。
筆者はこれを「スタイル」と呼んでいる。一人前になった多くのプロは頭の中にスタイルを持っている。これを形式化・文書化したものが持論である。
持論により行動が以下のように変わる。言い換えれば、このように行動できる人がプロである。
・行動のガイドラインを持ち、速やかに自信を持った行動をとれる
・仕事における工夫の効果を評価し、問題があれば是正する
・学び続けることができる
これら3点について見ていこう。
自信を持った行動をとれる
プロは常に自信を持って行動することが求められる。プロの自信に満ちた行動を見て、顧客や同僚や協力メンバーは初めて安心し、プロについていく。
プロジェクトマネジャーを例にとれば、持論によって、自分のスタイルでプロジェクトの構想を描き、計画を立て、実行の各段階のマネジメント活動を自信を持って実施していくことができる。
PMのトレーニングをする際、筆者は「初めてのプロジェクトのときは標準や教科書通りに進めて下さい。ただし2回目からは必ず自分の考えを入れ、自分のスタイルを徐々に作っていきましょう」と説明している。
もともとはプロジェクトマネジャーを育成するにあたり、考える習慣を付けてもらうためにこう話してきたのだが、ほんのちょっとでも自分の考えを入れることによって、プロジェクト全体に対し自信を持ってマネジャーが行動できるようになることに気が付いた。
「自分のものにする」という言葉がある。まさにその通りで、自分のものにならない限り、自信を持って実行できない。
自分のものにするからと言って、すべてを自分の考えに切り替える必要はない。自分が大切だと思うところに持論が入っていれば、全体が自分のスタイルになる。そして自信を持って実行できるようになる。
問題に気づいて是正できる
プロは自分の行動に責任を持たなくてはならない。行動の結果について「決められた通りにやったのですが」「言われた通りにしました」と発言するようではプロとは言えない。
責任を持つには、自分がやっている仕事の進め方や工夫について効果が出ているかどうか、注意を払わなくてはならない。
PMが狙い通りの効果を発揮しているかどうか、チェックするのはなかなか難しい。プロジェクトが計画通りに進んでいるからPMは効果を発揮している。こう言えるなら簡単だが、そうとは限らない。
PMは機能していなかったが、メンバーの頑張りなど別の要因で、なんとか計画通りに進んでいたとすれば、メンバーが頑張れなくなった途端、プロジェクトは崩壊しかねない。
そこで持論に注目したい。持論は「Xという行動をとればYという効果がある」という形であることが多い。こうした持論によって、プロジェクトマネジャーは現在の状況がPMの狙い通りかどうかを検証できる。
Aさんの例に戻ろう。Aさんが担当することになったプロジェクトで、顧客(発注者)の満足度向上が重要なテーマになっていた。そこでAさんは、この顧客の業務に精通しているBさんにプロジェクトに参加してもらおうと考えた。
Aさんの持論は「計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダを巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要」である。
ステークホルダーとしてBさんの上司がいる。そこでプロジェクトの計画段階でBさんの上司と話し合い、「彼の経験にもなるだろう」と上司からBさんの参加について賛同を得た。
ところがプロジェクトが始まると、Bさんは顧客の担当者と十分な話し合いの時間を取らず、手持ちの知識に基づいて「こうしましょう」と決め、仕事をどんどん進めて行った。進行は順調に見えたが、プロジェクトを機に業務を変革したいと期待していた顧客は困惑し、Aさんに改善を申し入れた。
Bさんの上司に相談したとき、Aさんは「Bさんの業務知識が今回は鍵になります」と強調した。ただ「顧客の業務改革を支援することで満足度を高める」といった本来の目的についてあまり明確に伝えていなかった。
Aさんは再度、Bさんの上司に説明し、目的や進め方を改めて理解してもらった。その上で、Bさんを交えて3人で話し合い、Bさんのやり方を顧客の期待に沿った形に変えてもらい、プロジェクトを成功に導いた。
持論があることによって、計画通りにプロジェクトが進まなくなったときに、適切なPMができているかどうかをチェックできる。行動がぶれていれば行動を修正する。行動はぶれていないのに、思った効果が出ていない場合には持論の適用の仕方を変えてみる。
Aさんの例でいうと「ステークホルダーの十分な巻き込みができているかどうか」を再確認することで、狙い通りの効果を発揮するように軌道修正できたわけだ。
学び続けることができる
持論によって自信を持つことが重要である。同時に持論を利用して、自分のプロとしての活動を謙虚に、常に振り返り、是正していくことが必要になる。
もう一つ重要なのは学び続けることだ。プロとしての学びのワンサイクルは、持論の適用に始まり、持論の修正をもって完結する。このサイクルを何度も繰り返していく。
持論を持ち、持論を中心に常時、振り返ることにより、仕事を成功させる方法を合理的に習得できる。言い換えると戦略的に成長できる。
振り返ることを「内省」と呼ぶ。持論は内省を誘発し、内省の結果を整理する役割を果たす。持論の成長とともにプロとして成長していく。
注意してほしいのは、内省した結果を持論として整理することは、持論を変えることに他ならないことだ。
Aさんが活動を是正した例を思い出してほしい。当初うまくいかなった理由をAさんは次のように振り返った。
「プロジェクトの鍵を握るBさんの上司と事前に相談したにもかかわらず、Bさんの上司とBさん本人に、プロジェクトのイメージを十分共有してもらえなかった」
イメージが共有できていれば、Bさんの上司の協力の仕方、Bさんの行動も、プロジェクトの目的を実現することに主眼を置いたものになっていただろう。
こう感じたAさんは持論を修正しようと考えた。修正案に基づいて次のプロジェクトを実施し、効果を確かめてから、Aさんは持論を書き直した。
従来の持論
計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画を作るときに可能な限りステークホルダーを巻き込み、裏付けのある計画を作ることが重要だ。
修整後の持論
計画通りにプロジェクトを進めていくには、計画段階でステークホルダーとプロジェクトのゴールやゴール達成のシナリオを共有することが重要だ。