ずっとむかしに読んだ本にこんな話がありました。


2人の旅人が、偶然どこかの酒場で一緒になりました。

2人とも長い旅をしてきていたので、

それぞれの旅の話に花が咲きます。

その中・・・2人が共通に訪れた

ある村のことが話題になりました。


一人は「その村ほどすばらしい場所はなかった、

村人はみな優しく接してくれた、」・・・と。  

もう一人の旅人は「あんなひどいやつらはいないよ、

今まで訪れたなかで最悪だった、

もう二度といきたくない、」・・・・と。




人によって同じ村の印象がなぜこんなに違っていたのでしょう。

もうおわかりですね、村人はきっといつもと

同じ生活をしていたのでしょう。

でも、違ったのは旅人の側の態度や接し方。


宿もお迎えするのもやはり人間ですから、相手によって

心を開いて思い出深い出会いをすることもありますし、

帰っていかれる後姿をみて「ほっと」することもあります。


でも悲しいのはその方が自分で警戒心をとくことが

できずに、ぴりぴりして同じご一行の皆さんも

なんとなくぴりぴりして、あちこちで騒動がおきてしまう。

そういう方に限ってここが悪い、あすこが悪いと

悪いとこ探しをきっとしてるんだと思いますが、

そのご自分の「感じ方」が悪いとは

夢にも思っていらっしゃらない。


そういう方は年に数人必ずいらっしやいます。 

接していて、あるいは接したスタッフの話を聞いて、

その方の心の内のさびしさとか、

悲しみを感じることがあります。

「わかってくれない」「どうしてわからんのだ」

「どうせあんたたちに私の気持ちなんてわからない」

「なんでこんなことがわからないの」  

結局そういう方のお気持ちってこんな感じでしょうか。

もちろんそれがすべてではないでしょうが・・・・


到着されたときそうでも、お帰りの時にはにこにこ、

これはこの業界の職業人としてうれしいですね。

人は鎧が必要なことがありますよね、

でも温泉宿では鎧は要りません。

身分も年も越えて、合法的に裸の付き合いができる場所。

(温泉博士の松田先生によると、むかしは男女も

 一緒で裸の付き合いができたそうですよ、

 とは言っても江戸、明治くらいの話だそうですが)


私も旅に出ることがあります、

私はいつも、いい出会いをさせていただいてますよ。

その方がずっと楽しいじゃないですか・・・・


北海道洞爺湖温泉宿 かわなみ 館主