5月サクラを見ながら


実はかわなみの温泉は温泉学の開祖、

かの有名な温泉教授の松田忠徳さんが選んだ

最初の日本100名湯に入っているのです。


これは大変なことで、草津や登別や別府や玉川や有馬や

本とに誰でも知ってる有名温泉郷のお仲間という事です。

(宿としての評価は又別ですが、こちらは松田さん

おすすめの温泉宿25点満点の20点で番付の

中ほどに入れていただいています) 

「日本100名湯」はすでに固有名詞として通用する

状態になっているといって差し支えないと思います。

そもそも松田さんはなぜこのようなことを始められたかと

いうと、当時(1980年ごろ)は温泉といってもその湧出量を

はるかに超えた容積の浴場が日本中に作られ、そのために

温泉を循環、過熱、ろ過、そしてその過程で塩素による

殺菌消毒、さらには加水など、食品であれば混ぜ物、

添加物、賞味期限無視などといったことが当たり前に

行なわれ一番の問題は外からそれが

とてもわかりにくかったということがありました。


また全くただの井戸水や水道水を加温していても

「何々温泉」と名乗っても普通のことだったのは、

皆さんご存知のことと思います。 

全国の温泉めぐり2500湯を達成された当時の松田さんは、

同じ温泉でも、施設によって湯の使い方、管理方法が違う

ことに気がつかれ、その中でご自分の体験とそのなかで

培われた「選湯眼」をもって良質な泉質+環境+接客姿勢

など訪れる側の視点を交えて選ばれ、「日本100名湯」

という美しい本をまとめられ、同時に、良い温泉と共に、

危ない温泉、名ばかりの温泉もあること、その簡単な

見分け方なども本にして出版されました。


その後、湯布院、黒川温泉といったところから始まった

爆発的かつ日本回顧的温泉ブームと、いくつかの

レジオネラ菌の異常繁殖による事故を経て、温泉表示の

仕組みが法的にも整理され、現在は保険所の温泉施設に

対する監督が強化され、何十年も使っていた温泉分析書

の有効期限や浴槽ごとの温度や加温、加水、循環ろ過の

表示などが義務となり、

とてもわかりやすい状態が実現されています。

さて、昔から日本人は温泉大好き人種ですが、

松田さんが温泉を一つの体系にくくった影響もあって、

また他の良い温泉関連本がたくさん発刊され、その結果、

「ディープな温泉マニア」と呼べる層が出現したわけです。


彼ら(彼女ら)の中には松田さんの信奉者が結構おられ、

そして松田さんの選んだ100名湯を片っ端から制覇する

という人生の目標(あるいは趣味?)をもって全国行脚

されている方が相当数来られるようになりました。 

そのようなマニアの方(今はオタクといいますね)は、

当然入湯体験に基づいた確かな「選湯眼」はとても鋭く

またその評論をお聞きすると、

一つの温泉に長く関わっただけの私など足元にも

及ばないような見識をお持ちなのです。

当然日本100名湯は松田さんの主観で選ばれている

わけで、絶対評価ではありませんので、選に入って

いなくてもすばらしい温泉はたくさんあまたあるわけです。

この種の温泉マニアの方に共通するのは、

例えばワイン好きが本当にワインを愛でて、かつ分類し、

そしてうまいかまずいjかを評価し、いいワインには敬意を、

悪いワインにはその訳を探るといった、そのプロセス自体を

楽しまれているわけですが、それゆえに本当に

名品に出会った時に「偉大なワイン」などという表現を

とてもうれしそうにおっしゃるわけです。

と同じように良い温泉を「心と体」で感じられて評価され、

その行為自体がとても 「すばらしい時間のすごし方」 

になっているわけです。

この種の方がたにはうそは全く通じません、

入浴されてお帰りのお客さんにさりげなく

「温泉はいかがでしたか?」とお聞きすると、

「いやー実は松田さんの日本100名湯の

65番目なんですよ」なんていう方が結構おられます。


こういう方はあまり宿泊はされずに、その地域の温泉を

一日に3つ、4つと入っていかれる方がおおいようです。


当館の源泉は2000年の有珠山噴火以降温度が

約10度低下しそれもあって加温はしています。

当然掛け流しですが、皆さん

「さすが松田先生の日本100名湯ですね、すばらしい!」と

絶賛されながらお帰りになります。


無色透明、無臭で見た目は何の変哲もないお湯ですが、

なぜかを考えたとき思いあたったのが、温泉成分が浴槽や

タイルに付着する勢いがすごいんです。

要するに成分がとても濃いということでしょうか。

マグネシウムイオンが一定量含まれていると、

他の成分の効果を増幅するということが

わかってきたようです。その理屈はまた書きたいと思います。

まあ、そんな難しいことは考えずに、日本中にある温泉に

気楽に浸かるのが本来の温泉入浴法かもという気が

しますし、そこまでいけば達人の域なのかなという気もします。

なにせ、複雑怪奇、せわしない時間の中に生活せざるを

得ない日本人がリセットするために温泉があるんですからね.


今はかつての温泉ブームも沈静化し、そこに湯があるから

だけでは人が集まらなくなってきたように思います。

ゆっくりと湯につかることのすばらしさは

これからが本番ですね・・・・

(北海道洞爺湖温泉 かわなみ館主)


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