イチブトゼンブ

あなたは私のほんの
イチブしか知らない
勝ち誇るように
笑われても
それほど嫌じゃないよ
生まれてくる前
聞いたようなその深い声
それだけで
人生のオカズに
なれるくらいです





全て知るのは
到底無理なのに
僕らはどうして
あくまでなんでも
征服したがる
完璧を追い求め
愛しぬけるポイントが
ひとつありゃいいのに




もしそれが君の
ほんのイチブだとしても
何よりも確実にはっきり
好きなところなんだ
困ったとき少し
眉毛を曲げてみせたり
抱き寄せると
ホッとするような
柔らかさだったり




全て掴んだ
つもりになれば
また傷付くだろう
本当に要るのは
有無を言わせない
圧倒的な手ざわり
愛しぬけるポイントが
ひとつありゃいいのに




君にしかわからないこと
僕だけが見えていること
どれも本当のこと




全て何かの
イチブってことに
僕らは気付かない
愛しいわけを
見つけたのなら
もう失わないで
愛しぬけるポイントが
ひとつありゃいいのに

それだけでいいのに