数独では(計算機プログラムで)でたらめに初期配置を設定すると,多くの場合は解を持たないか,複数個の解を持ち,解が一つだけというのは却って珍しい現象である。そこで逆手を取って「規則的な配置の多重解」を人工的に作ってみた。ここで数学用語の「置換群」(permutation group,対称群ともいう)を導入する。異なる N 個の数字を並べ換える操作は「群」を成す;これを置換群といい,記号 S(N) であらわす。この群の要素数は N! 個である。

 

下図左側の赤で囲んだ部分の1と2を入れ換えても解になることはすぐにわかる:これは S(2) の例で解の縮重度=2である。なお1と2は他のブロックにもあるがこれらは変えても変えなくても良い。前回には別のタイプの S(2) の例を挙げた。

同様にして S(3) の例を下図右側に示した。赤で囲んだ1・2・3を一斉に置換したものが解になることはすぐにわかる。この場合の解の個数は 3!=6 である。もっと複雑で対称性の良い S(3)xS(3)xS(3) の例も作ったのだが,ここでは省略する。

 

こういう場合,解の個数の対数を考えると便利である:これは「残留エントロピー」に他ならない。初期配置が与えられるとそれが持つエントロピーが決まる。そしてエントロピーがゼロになる初期配置が「一意解を持つ(数独にとっての)適切問題」ということになる。

それゆえ数独の問題は,物理におけるスピングラス問題に似ていて,普通(generic)の配置では縮重の大きいスピングラス相をもたらすわけである。なお,解を持たない(エントロピーがマイナス無限大)配置も頻繁に生じるがこれは問題外とする。

 

以上のことに想到した結果として数独への興味が急速に失せてしまったのは残念なことである(笑)。数独の問題はプログラムで作ることも解くことも出来てしまうからだ。残っている疑問は「人間はどんな問題・解法を面白いと思うのか」であるが,これはたいへん難しい問題で私の手には負えそうにない。

 

 

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