CBR1-0003
Hepatojugular Reflux (肝頸静脈逆流、腹部圧迫試験)について、正しくない記載はどれか

1. 正常人に腹部の圧迫を行った場合、頸静脈拍動点は不変または低下する。

2. うっ血性心不全の患者では、 頸静脈拍動点は上昇する。

3. 右室不全の患者では、利尿剤投与にて静脈圧を正常化すれば、 肝頸静脈逆流は陰性となる。

4. 腹部の圧迫が強すぎると、正常人でも 肝頸静脈逆流は陽性になる。

5. 肝頸静脈逆流陽性所見は、心不全患者のみならず、収縮性心膜炎、下大静脈閉塞、重度三尖弁閉鎖不全症、心タンポナーデ、肺塞栓、上大静脈症候群の患者にも認められる 。







A1-0003
(答)3
1. 正常人に腹部の圧迫を行った場合、頸静脈拍動点は不変または低下する。腹部の圧迫は、
① 大腿静脈から右房への血液灌流を減少させること、
② 横隔膜の下降を妨げ、胸腔内圧を減少させることにより、頸静脈圧を減少させる。
右上腹部(right upper quadrant, RUQ)を10-30秒以上圧迫した時に、JVPの拍動点が4 cm以上上昇し、圧迫をやめても10秒以上、JVPの上昇が見られる場合は、陽性所見である。

2. うっ血性心不全の患者では、 頸静脈拍動点は上昇する。うっ血性心不全の患者では、 心拍出量が低下しているため、交感神経の興奮、血中カテコールアミンの増加が起こり、静脈緊張(venous tone)が増大している。そのため、静脈は拡張不全にあり、腹部を圧迫しても、下肢からの血液灌流を妨げることができない。また、心不全患者、特に右心不全では、右室、右房は増大し、コンプライアンスが低下しているため、血液灌流が妨げられ、腹部圧迫により、静脈内充満圧が上昇する。

3. 右室不全の患者では、利尿剤投与にて静脈圧の絶対値が正常化しても、 静脈の緊張亢進が見られるため、腹部圧迫にて肝頸静脈逆流は陽性となる。

4. 腹部の圧迫が強すぎると、交感神経興奮により、正常人でも 肝頸静脈逆流は陽性になり得る(偽陽性)。このような頸静脈圧の偽性上昇を防ぐには、穏やかに圧迫しはじめ、苦痛を与えない程度に徐々に圧迫を強くすること、暖かい手で圧迫すること、できるだけ局所的な圧迫をしないように指を広げて広範囲に圧迫の力を分配するように注意することが大切である。腹部圧迫試験が偽陽性になる原因としては、これ以外に、
① 重症の閉塞性肺疾患あるいは低肺活量をきたす状態(腹部圧迫により横隔膜を挙上したとき、その下方への運動の抵抗に耐えられない場合)、
② 循環血液量の増加、
③経静脈性のカテコールアミン投与や疼痛、急性心筋梗塞などの原因による交感神経刺激の亢進、などがある。

5. 肝頸静脈逆流陽性所見は、心不全、収縮性心膜炎、下大静脈閉塞、重度三尖弁閉鎖不全症、心タンポナーデ、肺塞栓、上大静脈症候群の患者に認められる 。
*なお、まれであるが、奇静脈より下流で上大静脈が閉塞した場合は、 腹部圧迫試験が陽性になることがある(図B)。

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