「再発」


大嫌いな言葉です。

今でも、この言葉を聞くと心がざわざわします。


良ちゃんは2002年10月に神経芽腫であることが

発覚し、

抗がん剤

手術

術中照射(手術で開腹した状態で、患部に放射線を照てること)

転移箇所への放射線照射

など、できる限りのの治療を受けた結果

2003年8月、寛解(ガンの症状がなくなり数値も正常になった状態)

になり退院しました。


抗がん剤治療は

手術前に腫瘍を小さくするために4クール

手術後に4クール行いました。


放射線治療は、頭がい骨、右大腿骨に照射しました。

照射した頭がい骨部分には髪が生えないかも、

大腿骨は、骨の成長が悪くなり、脚の長さに左右差がでる、

と副作用を説明されましたが


その時は、命が助かることがまず大事と思い、

副作用は、症状が出たときに対処を考えることにしました。


治療終了後も、自費で13cisレチノイン酸という米国から輸入した

経口薬を飲み続けました。


13cisレチノイン酸というのは、

日本では、神経芽腫の治療薬として認可されていませんが

米国の研究で、高リスクの神経芽腫の治療後の維持療法として

これを取り入れた方が、生存率が高いという報告があり

おそらく、初発の治療の後、飲むことを勧められる患者さんは

多いと思います。

これは、自費で、もううろ覚えになってしまいましたが

結構高く、その上、皮膚、特に顔や口回りの異常乾燥や

腎機能障がいなどの副作用がかなりあり

飲み続けるのは、結構大変でした。


我が家は、ロアキュタンというのを、

米国から個人輸入していました。


これだけのことをしても

常に再発の恐怖はついて回りました。


良ちゃんの病院では

再発の指標として、採血でNSE、採尿でVMA、HVAの数値を

見ます。

どれも20以下であることが目安なのですが、

これらの数値は、外来当日に結果が出ないのです。


一週間くらいで検査結果がでるので

もし、心配なことがあったら電話しますね、と。

この一週間は心ここにあらずという状態でした。

何をしていても、連絡があったらどうしようと

気が気ではありませんでした。



「再発したら、治る可能ははほとんどありません」

とずっと言われていました。


(誤解のなきように書きますが、

再発しても、治って元気にされている方もいらっしゃいます)


ただ、良ちゃんの主治医は、甘いことを全くいわない人

だったので、常に厳しいことばかり聞かされていたのです。



だから、再発が怖かった。本当に怖かったのです。


採った尿を検体置き場に置くときは

いつも両手を合わせて「再発していませんように」

と祈っていました。


余談ですが、

退院後の検査では、腕から採血します。

良ちゃんは、数えきれないほどの採血をしました。

腕に針を刺し、たくさんの血が採られていく様子を

痛いということも、もちろん、腕を動かして看護師さんを

困らせることも、一度もなく、常に落ち着いた表情で

じっと見ていました。

立派でした。


5年経てば、もう大丈夫と言われ、

祈り続けて、4年8か月。

誰もがもう大丈夫と思っていたころに

まさかの再発でした。