――翌朝。
「…………ん」
カーテンの隙間から差し込む朝の陽射しに眩しさを覚え、
眠いと訴える瞼を擦る。
重いカラダがギシリと悲鳴をあげて、オレは気怠さにゴロリと寝返りを打った。
「……おはよう、翔太。よう眠れたがか?」
すぐ隣りから聴こえる掠れた声。
まどろみの中、
そこにはゆったりと柔和に微笑む愛すべき人が居て…。
はだけた着物から覗く厚い胸板が、
昨夜の情事をフラッシュバックさせる。
「……っ、おはよぅ…ございます」
気恥ずかしさに丸まり、蹴り上げてた布団を慌てて手繰り寄せた。
…うわっ、
着物…メチャクチャだ…っ!
幕末の頃とは何もかもが違う現代、
便利な世の中、
オレも龍馬さんも最初は戸惑ったけど、今ではこの時代で普通に暮らせている。
それでもひとつだけ手放せないモノがあって…。
「…やっぱり龍馬さんは着物が似合いますね」
「ほうか? 翔太もよう似合うとるぜよ」
日本人として当然なのか、
それとも染みついた“慣れ”のせいなのか、
やっぱ着物が落ち着くんだよな…。
「…翔太、風邪を引くといかんき、もうちくとこっちに寄れ」
力強い腕に腰を引き寄せられて、
はだけた胸元にピタリと寄り添う。
瞬時に伝わる溶けるような熱…。
広くてあったかくって、
その温もりに触れてるだけで、
他になにも要らなくなってしまう。
「……翔太、昨日、“話したい事がある”っちゅうてた事なんじゃがな…」
ふと昨日の電話を思い出し
、
オレの髪に頬を寄せている龍馬さんを仰ぎ見た。
それは…、
オレも気になってた事だ。
今更ながら、
“別れ話”って事はなさそうだけど…。
「……はい、なんですか?」
龍馬さんはオレの頭にひとつキスを落として、
掠れていたけれど
ハッキリした口調でその言葉を告げた。
「一緒に、暮らさんか?」
「……………っ!」
クリスマスの朝、
それはサンタからの贈り物なのか、
キラキラと眩い光がひと筋の線を描き、
ふたりを照らすかのように、
温かなひだまりを作る。