『六つ花とひだまり』⑰ | 乙葉BOX

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風のように、月のように。




 
――翌朝。



「…………ん」


カーテンの隙間から差し込む朝の陽射しに眩しさを覚え、
眠いと訴える瞼を擦る。


重いカラダがギシリと悲鳴をあげて、オレは気怠さにゴロリと寝返りを打った。



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「……おはよう、翔太。よう眠れたがか?」


すぐ隣りから聴こえる掠れた声。

まどろみの中、
そこにはゆったりと柔和に微笑む愛すべき人が居て…。



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はだけた着物から覗く厚い胸板が、
昨夜の情事をフラッシュバックさせる。



「……っ、おはよぅ…ございます」


気恥ずかしさに丸まり、蹴り上げてた布団を慌てて手繰り寄せた。


…うわっ、

着物…メチャクチャだ…っ!


幕末の頃とは何もかもが違う現代、

便利な世の中、


オレも龍馬さんも最初は戸惑ったけど、今ではこの時代で普通に暮らせている。


それでもひとつだけ手放せないモノがあって…。



「…やっぱり龍馬さんは着物が似合いますね」


「ほうか? 翔太もよう似合うとるぜよ」


日本人として当然なのか、
それとも染みついた“慣れ”のせいなのか、

やっぱ着物が落ち着くんだよな…。



「…翔太、風邪を引くといかんき、もうちくとこっちに寄れ」


力強い腕に腰を引き寄せられて、
はだけた胸元にピタリと寄り添う。


瞬時に伝わる溶けるような熱…。


広くてあったかくって、
その温もりに触れてるだけで、


他になにも要らなくなってしまう。



「……翔太、昨日、“話したい事がある”っちゅうてた事なんじゃがな…」


ふと昨日の電話を思い出し

オレの髪に頬を寄せている龍馬さんを仰ぎ見た。



それは…、

オレも気になってた事だ。


今更ながら、
“別れ話”って事はなさそうだけど…。



「……はい、なんですか?」


龍馬さんはオレの頭にひとつキスを落として、

掠れていたけれど
ハッキリした口調でその言葉を告げた。



「一緒に、暮らさんか?」


「……………っ!」



クリスマスの朝、
それはサンタからの贈り物なのか、

キラキラと眩い光がひと筋の線を描き、


ふたりを照らすかのように、
温かなひだまりを作る。