時は夜。
場所はファミレス。
三砂 雅は続けた。
「だから知らない方がいいと言ったんだ」
彼は冷静に言った。
「何で殺したの・・・?」
素朴過ぎる質問だった。
中年男性を殺したのは雅だった。
「僕は糸を持つと人が変わるんだ。
だからあの場から君を逃がした。
あの状態では自分が何をするか分からない。
天谷さんを巻き込んじゃ悪いから」
確かにそうだった。
基本的に彼の性格は温厚なのだ。
しかし、さっきの戦闘といい、人が変わったような眼つきをしていた。
「返り血を浴びるのは僕だけでいい。
天谷さんは浴びちゃいけないんだよ」
俯いて彼は悲しそうに言った。
「他に・・・」
「?」
「他にやり方はなかったの!?」
口調が強くなった。
いや、なってしまった。
「あったのかもしれない」
冷めた返事だった。
そして曖昧だった。
これが美鈴の神経を逆撫でした。
「・・・」
「でも、あの時の僕は殺害を選択した」
「ちょっと外に出て・・・」
自然とその言葉が出た。
そして、お金を払い外へ出た。
幸いドリンクバーだけの値段だった。
ここじゃ場所が悪いと言い、美鈴と雅はは近くの空き地に向かった。
着いた。
その直後。
美鈴が振り返り、雅を殴った。
パーではなくグーである。
「うぐっ!!」
想定外の攻撃に雅はよろけた。
女子の一撃とは思えない重さだ。
「アンタ命を何だと思ってるの!?
殺す事は無かったじゃない!
今日の事だって下手したら殺人じゃないの!!」
「・・・でも」
「何よ!!」
「僕は蛇蜘蛛だ。
蛇の様に這って近づき
蜘蛛の様に相手を捉え、食らう。
それが僕だ。
僕はそう育って来た」
月を見上げて言った。
これには美鈴もゾッとした。
どういう事なのか分からない。
が怖かった。
「僕は江戸時代暗躍した
三砂流暗殺術師範
三砂 隆一(ミスナ リュウイチ)
の末裔なんだ。
だから暗殺術を持っている」
「三砂君が暗殺者・・・」
「正しくは末裔だけどね」
微笑を浮かべながら言う。
月明かりの中だから妙に怖い。
彼はとんでもない人生を送って来たに違いない。
それがこの微笑に出ていた。
悲しい笑顔だ。
「武器が糸ってそういう事だったのね」
「ああ。」
あの中年男性の首を糸で切ったのだ。
ボスヤンキーのキズも糸で切ったものらしい。
「・・・分かった。」
美鈴は決心した。
「?」
「私があなたを変える」
「はい?」
「私と付き合って」
美鈴は自分で何を言っているかというのが熱くなると分からなくなる。
正に猪突猛進の女の子。
それがこの言葉に現れている。
そして、何を言われているのか分かっていない男もいた。
「え?」
「私の事気になってたんでしょ?
ならいいじゃない!」
何とも強引だ。
「いや、あれはアイツが勝手に・・・」
「私は好きだよ!!」
「は?」
「私は三砂君好きだよ!」
美鈴は正直に伝えた。
雅を見た瞬間から今までの気持ち。
それが「好きだよ」という言葉となった。
「!」
「だから付き合って!」
「だから僕は危険なんだよ」
雅は渋る。
もし付き合って美鈴をキズ付けてはいけない。と。
「それも引っ括めて好き!!」
「だって!私の事助けてくれたじゃん!
糸持ってても!
三砂君は三砂君なんだよ!」
「だから!
僕は人を傷付ける事しか知らない!
僕は!
優しくされた事もない!
暗殺しか知らない!」
珍しく大声をだす雅。
暗殺。
これが彼の人生だった。
「この分からずや!」
美鈴は言い放った。
「私は三砂君がどんな人生を送って来たか知らない!
まだ三砂君がどんな人かもよく知らない!!!!
でも三砂君が優しくされた事が無いなら!!!!
私は三砂君に優しくする事しか知らない!!!!」
猪突猛進。
正にそれだ。
美鈴の言葉は力強かった。
暫くあって
「うぁぁぅっ!!」
雅は崩れ落ちた。
泣いていた。
こんな言葉を掛けられたのも始めてなんだろう。
「僕は・・・」
「一緒に変わろう、三砂君」
「僕の糸は殺めるものだった。
けど、これからの僕の糸は
護る糸にする」
雅の人生の1つが変わった。
殺める。
のではなく
護る。
それも、愛する人を。
「天谷さん・・・」
「何?」
「ありがとう・・・」
今度の笑顔は明るかった。
「じゃ、よろしくね!雅君!」
「え?雅君・・・?」
「だってもう彼氏じゃん」
「ああ、そうか」
「私のことは美鈴って呼んでね!」
「えええっ!?」
「はい!呼んでみて!」
「み、美鈴・・・」
「なんか可愛いね!雅君!」
「う、うるさい!」
これから雅はどれだけ茶化されるであろう。
そして、どんな人生が待っているであろう。
だが大丈夫。
雅には護るべき人がいる。
護る男は強い。
「あ、そうだ雅君!」
「何?あまが・・・美鈴」
「私はどれ位になった?」
「ん、特盛ステーキかな」
「ありがと!」
「あ、あまが・・・美鈴?」
「何?」
「今度食べに行こう。ステーキ」
「うん!」
2人の影が伸びている。
今宵は満月だ。
~続く~
第5話です。
読んで頂きありがとうございます。
どうでしょうか?
蛇蜘蛛の意味を明かす回であり、
美鈴の恋心の回。
そして雅の秘密。
精一杯妄想しました。
頑張りました。
そして美鈴の健気さに
可愛いと思ってしまいました。
自分で作ったキャラなのに。
美鈴が理想のタイプなのかもしれません。
危ないです。
自分が怖いです。
とりあえず、一段落付きました。
皆さんの応援のお陰です。
ありがとうございました。
まだ続く「蛇蜘蛛」です。
これからもよろしくお願いします。
皆さんの楽しみに
この作品がなってくれれば嬉しいです。
感想待ってます。
これが案外次回の面白さに繋がるのかもしれません。
おまーるえびふらい