2017年9月12日(火)中国外交部の耿爽報道官による定例記者会見
<http://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/t1492279.shtml>
※中印関係部分のみ仮訳

問:第1に、中印ドクラム対峙事件が8月28日に解決されてから一定期間が経過したが、中国側はインドの公的なヒンドゥー教巡礼団のために、シッキム区域ナトゥラ峠経由の聖地巡礼ルート再開につき検討しているかどうか。第2に、中国側が依然としてインド側に関連する水文資料を提供していないのは、明らかに対峙事件により発生したものだ【*1】。これらデータは下流の水害状況を予測するうえで非常に重要だが、中国側は関連する水文資料の提供を再開するのかどうか。

答:第1の問題について、長期にわたり中国側は、中印友好関係の大局から出発し、巨大な困難を克服し、大量の事務作業を行い、インド側の公的なヒンドゥー教巡礼団によるチベットの聖地巡礼に必要な融通を提供してきた。両国指導者が達成してきた共通認識及び中印国境シッキム区域は中印両国が共に承認した画定済の国境であるとの事実に基づき、2015年、中印国境シッキム区域ナトゥラ峠経由のチベット聖地巡礼路線の開通に中国側は同意した。過去2年、関連する活動や手配、運用状況は良好だった。今年6月、インド軍が中印国境シッキム区域の国境線を越えて中国領内に進入し、国境地域の情勢に緊張をもたらしたため、インドの公的なヒンドゥー教巡礼団がナトゥラ峠経由で聖地巡礼に入国することにつき、中国側は安全上の考慮からしばらく停止した。中国側は、中印両国の民間交流及び文化交流を重視しており、訪中巡礼団に関する事務について、インド側との間でコミュニケーションの保持を継続したいと願っている。

 第2の問題に関し、長きにわたり中国側は様々な困難を克服して、国境に跨る河川について水文及び増水情報提供に関する協力をインド側との間で展開してきた。(しかし、)去年発生した洪水のために(水文観測所を含む設備の)復旧が必要になったこと、また、(水文観測所を含む設備の)更新及び改良の進行等の技術的要因から、今のところ中国領内の水文観測所【*2】が水文に関するデータを収集できる状況になっていない。水文のデータを改めて提供できるかどうかは、この(復旧)工事の進展状況次第だ。
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問:インド側へ水文データを提供していないことにつき、あなたが(先ほど)述べた理由は、すでにインド政府には説明済なのか。

答:私が把握している情報に基づくならば、インド側は十分に承知しているはずだ。

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*1: 対象河川は、ブラマプトラ川(中国(チベット)側名称:ヤルンツァンポ川)とサトレジ川(中国(チベット)側名称:ランチェンツァンポ川)で、この両河川は共にチベット自治区を上流としている。インドメディア報道によれば、中印両国による水文データ等共有メカニズムは2006年から開始され、2016年までは順調に進行していたとのことである。ドクラム対峙後になって水文データ等の通知・共有がなされていない問題は、8月下旬からインドメディアの報道で指摘が始まっていた模様である。報道例として、“China
won't share hydrological data until India withdraws from Doklam,”
Zeenews, August 20, 2017.
<http://zeenews.india.com/india/china-wont-share-hydrological-data-until-india-withdraws-from-doklam-2034614.html>

*2: 原文「水文站」