絶景ポイント!! | 前川健二のブログ『メガネの方言』

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劇団スカッシュ、前川健二のブログ。岩手県は宮古市重茂出身、方言講座も!!

今でこそ電車は日常の足となっているけれど、

田舎にいたときは電車に乗るなんて、旅行や受験の機会でしかなかった。

といっても家族旅行は自家用車がほとんどだったし、
そもそもうちの田舎には電車が無い…

いや、なんというかあるにはあるんだけれどもディーゼル列車?
なんて言えばいいんだろう?
電気じゃない列車が走ってる。上に電線の無いやつ

三陸鉄道、御存知サンテツと
JRの山田線。

そんなわけで電車に乗るなんてちょとした旅行気分だった私が、
今や当たり前のように乗っけられてるな、
これじゃ電車に失礼だな、
なんて思い、

電車に乗るならテンション上げなきゃなと思うこの頃だ。

まあ何と言うか景色を楽しんだりしようかな、
と思う次第。


そんなこと言って、
このブログのタイトル、
絶景ポイント、と書いてしまったし、
なんか写真でもあるのかと言うと
写真撮れなかったわけだけれども…


小田急をよく使うのはもちろんなんだけれども、
横浜線や
田園都市線なんかに最近はお世話になっている。

先日、
横浜線にて八王子方面から長津田駅を目指していた車内でのこと…

田舎者の私は、電車は日常の足ではなかったわけだけれども、
もちろん電車を日常の足として利用している方々は沢山いらっしゃるわけで、
電車通勤、通学、こっちじゃ当たり前。

小さい頃から電車に乗り慣れてるってどんな気分なんだろうか?


車内で出会ったランドセルを背負った小学生二人組み、
学校からの帰り道らしかった。

この二人の少年になぜ興味を持ったのかというと、
一人の少年が紺色のいわゆる学生帽をかぶっていたのだけれど
その帽子が土まみれで、えらい汚れ様だったからだ。

帰り道、山ででも遊んできたのか?
頭上から土砂でも降ってきたのか?
だとしたら帽子かぶっててラッキーだったな、というか少しは土をはらったらいいんじゃやないのか?
そこまで思うほど汚かった。

もしかしていじめ?
なんて考えていたら、
ドア側の手すりにつかまって立っていたとドアの間にグイグイ入り込んできて、
二人して外の景色を眺めだした。

帽子かぶってない少年が、
「国語の宿題どうする?」
と話しかけるんだけれど、
帽子の少年は
「次は成瀬~、成瀬~」
と車内アナウンスの真似に夢中で質問には答えない。

かぶってない少年も
かぶってない少年って表記はちょっとどうなんだろうと思うけどまあいいか
自分の質問に答えてくれない事はどうでもいいのか
「あ、やきとりだ」
と、外の景色を見てつぶやいた。

帽子の少年はそれに反応してんなかしてないのか、
「あ、橋本から言える?言ってみようか、橋本~相模原~矢部~淵野辺~」
と駅名を唱えだした。

かぶってない少年はそれにはノーリアクションで、
「さっくっぶんどうしよかっかー」
とくねくねと楽しそうにしてて、
帽子の少年は相変わらず、
「古淵~町田~成瀬~長津田~」

まあそんなもんか、
小学生の会話ってまあこうだよな、と思った。
お互い話したいことを一歩的にガンガン話して楽しくて満足。

そんなもんだった。

こういう会話を台本にするのって面白そうだなぁなんて考えていたのだけれど、
そもそも何でこんなに帽子が汚れてるんだか気になって気になって、
まあ不審者と思われてもいいかと思い、意を決して聞いてみた、

「帽子、どうしたの?」って

すると帽子の少年は、
私を一瞥した後、不意に

「あ!絶景ポイントがあるんだ!」

と、反対のドアの方へ走っていった。

かぶってない少年もつられるように走っていって、
そちら側にも何人かの乗客がいたがグイグイ入っていって、景色を窓の外に目をやっている。

「絶景ポイント」

おそらく小学校2,3年生であろう少年の口から飛び出した思いがけない言葉に引き込まれ、
この路線沿いにそんなポイントがあったのか、見落としていたな、
さすがは電車を日常の足としている小学生だ、
と私もそちら側の外の景色に目を凝らした
質問には答えてくれないのかしら?と、ちょっとさびしくなりながら。


二人の少年は楽しそうに外を眺め、絶景ポイントがやってくるのを待っている。
車内には、もう間もなく長津田の駅に到着するというアナウンスが流れていた。

長津田駅近くの絶景かー、一体どんな?
もう減速し出したけどな…なんて思っていると、

「横浜線ー!、田園都市線ー!、こどもの国線ー!」
と帽子の少年。

三線の乗換駅でもある長津田駅に居並ぶ電車たちに目を輝かせている少年の姿があった。


あ、そうなのね、鉄ちゃんなのね
なんだよ、乗り換えの度に見てるわ


まあそんなもんか、絶景ポイント…
鉄橋があるわけでもないしな


件の少年たちはまたこちら側に戻ってきて、私とドアの間にまたしてもグイグイと入ってきた。
どうやら私と同じく長津田駅で下車するらしい。

「乗り換えにーちょうどいいーー」
と独自の音階で口ずさむ帽子の少年と
「俺は、今日こっちからー帰るー」
と息巻いているかぶってない少年

ドアが開くと、二人とも別々の方へ走り出した、
短く「じゃあね」とお互いに別れの言葉を発して

乗換えで混雑するエスカレーターに一番早くたどり着いた帽子の少年はエスカレーターをスルスルっと駆け上がっていった。
人目を気にせず走れるって、子供っていうのはカッコいい


エスカレータを半ばまで駆け上がった少年が不意にこちらを振り向いた。

目が合った!

気がしたけれど、もう一人の少年の姿を上から確認しただけかもしれない。

それとも大人たちの間をすり抜けていち早くエスカレーターにたどり着いた自分を確認したかっただけなのか

帽子、なんであんなに小汚かったのだろう?

また会えたら今度こそ確認したい。