なんか日がな勉強(おしごと分の予習)に追われて

ばたばたしています。

今も勉強中なのですがちょっと息抜きです(笑)。


この間、妖怪人間ベム(ドラマ)を観ていたら、

ベムが「あなたのためならただの妖怪になっても構わない!」

みたいなことを叫んでいて、

ああやっぱ西田さん脚本だなあと思いました。

これをあえて男女の恋愛とか、わかりやすいところで

やらないのが西田さん脚本。


びっくりするぐらい曇りのない憧れに

積み重ねた時間が加わって、

すべてを投げだす覚悟さえ決めてしまえる。

タイバニのふたりも2クール後半で顕著でした。

わたしは西田さんの作風のそういうところがすきです。

ベムは正直、感情移入をするというより普通に面白く観ている感じ

なのですが、タイバニはどかんと感情移入して観ていたので

ほんともう……24話……。胸が苦しくなりました。


西田さんの作品は二作しか知らないので

えらそうに批評はできないのですが、

この二作を観ると、斬新なことをしてやろうという意気込みより

まず安定感を優先する丁寧な作家さんなのかなと思いました。

(タイバニは設定こそ斬新ですが、あれは西田さんが作り上げたわけでは

ないので)

イメージ的にはその安定感が器で、

透明感のある想いがいっぱいに詰まっているかんじ。

物語のエッセンスが誠実さに支えられている印象です。


その誠実さのなせるわざなのかどうなのかはわかりませんが、

メッセージが一方的にならないよう

常に注意をはらっていらっしゃるように感じます。


たとえばタイバニ。

主人公虎徹には憧れのヒーローがいます。

マッチョイズムの象徴かと思うようなムキムキ巨漢の

スーパーマンみたいな男で『レジェンド』という人物です。

子ども時代、超能力者差別に悩まされ、

彼に憧れることでなんとか救われた虎徹。

記号的に解釈すれば、ある意味で彼の『息子』なわけです。

しかし、タイバニには、

ダークヒーローとして『ルナティック』というキャラがいます。

(ここからネタバレ注意)




































ルナティック。

彼はレジェンドの実の息子です。

しかも、彼は幼いころ、レジェンドから母親ともどもDVを受けていました。

「見て見ぬふりをしてはいけない」という父本人の教えに従い、

彼は母をかばい、父を手にかけます。

このレジェンドがなぜ、DVを始めたかといえば

自分のヒーローとしての超能力が減退してしまったことで

自信を喪失したからでした。

そして、物語の後半、虎徹も同じ症状に悩まされ、

ヒーロー引退の覚悟を余儀なくされるのです。


虎徹には亡き妻がのこした娘がいます。

いつまでも子どもの成長を認識できずにいる虎徹と

娘との関係性もこじれにこじれるのですが、

結局、虎徹は自分の減退を受け容れ、

娘の言葉にちゃんと耳を傾けていなかったことを心から謝罪します。


ここで虎徹はルナティックとコントラストをなすと同時に

レジェンドとコントラストをなすわけです。


タイバニは親子関係に焦点をあてていますが

一方的に理想の親子像を押し付けるのでなく

親を愛せなかった子どもの痛みをちゃんと描いているのが

いいところだと思います。

最終回でルナティックは

自分の弱さを受け入れながらも頑張ることを決めた虎徹の姿に

思わず微笑むのですが、そこには救いがありました。


こじれた親子関係や喪失した親子関係を負った子どもたちが

別の出会いで救われていく話とも解釈できる。

ここには希望があります。

親子関係は選択できませんが、

人生の出会いは可能性そのものでもあるからです。

そして、メインキャラであるバニーもそうした要素のひとつを

成しています。

虎徹とバニーの関係もある意味で疑似親子だからです。

(ちなみにバニーは幼いころ両親を殺されていて、

心がどこか時間を止めたまま大きくなったキャラクターです)


あるべき親子像を押し付けるより

救われる可能性に焦点を当てているのだとしたら

それはすてきなことだなあと。


もっとも、ラスト手前で

娘が「お父さんかっこいい」と言うとか、

いろいろ父性の物語が予定調和している部分もあるのですが

(ただ、娘がさらっと何の気なしに言ってる演出なのは

良かったです。バーン! じゃなくてほんと良かった)

下手をすると、父性とか男性性の象徴になりかねない虎徹が、

作中を通して何度となくバニーにお姫様だっこを

され続けてしまうことで

旧態依然としたジェンダーの枠組みが

うまい具合に揺さぶられている気がするし。

なによりやっぱりザ・男性性のレジェンドが

肯定的に描かれなかったことが良いし。

故意かどうかはとにかくメタファーの部分を細かく見ていっても、

素敵な部分をいろいろ指摘できる作品な気がします。


あ! でも、いわゆるボクっ娘のホァンちゃんに

「女の子らしくしなさい」と周囲の大人が説教するのは

やめてほしいかも…。

あれはあれでおいしいのもわかるんですが

そのままでいいじゃん! 

とどうしても腹が立ってしまうのでした。

女の子らしくってなに!(笑)

本人の持ち味を認めてあげてよー!