タクティクスオウガ本編を続きモノの小説で紹介しています。

本日6,7更新予定です。

前回はこちら↓

http://ameblo.jp/k-lh/entry-10820793547.html




「僕たちは、」

説明しようとしたデニムをさえぎり、

ヴァイスが身を起こしながら勢いよく怒鳴った。

「オレたちはウォルスタ解放軍の戦士だ!

みんなの仇をとらせてもらう!」


ちるちる。

「仇だと……?」

独り言ちて、ランスロットは眉をひそめる。


「ずいぶんと手荒な歓迎だな。

……なんだ、ガキじゃないか!?」


ちるちる。

有翼人カノープスが槍を撫でながら、

二人の顔を見比べた。遅れてデニムのもとへと

駆け寄ってきたカチュアを認め、

更に渋面をつくる。

「ガキと嬢ちゃん?」


「ガキじゃない、戦士だ!」

沸騰するヴァイスを伸ばした腕で制しながら、

デニムは落ち着かない目で

相手の様子を窺っていた。


目配せを交わす彼らは、予想外の事態に

どこか呆気にとられている。

とぼけているようには見えない。

どういうことなのだろう。


実際、ぎらぎらと底光りする目で

殺気をぶつけられても、

ランスロットは冷静だった。

「待て。我らを知っているのか?

人違いではないのか?」

「おまえはランスロットだろうが!

なら、確かにオレたちの仇だ!」

「いかにも、私の名はランスロットだ。

なぜ、私を知っている?」

なぜ、なぜだって。ヴァイスはくぐもった声で反復し

癇性に笑ってみせた。

「1年前、この町を焼き払い、人々を殺したのは

おまえたち暗黒騎士団だ!」


「暗黒騎士団だと?」

聞き捨てならないと、身を乗り出したのは

有翼人カノープスである。

「ローディス教国の? そいつは……」

「カノープス」

カノープスを押しとどめ、

ランスロットは一歩前に進み出てみせた。

「やはり、誤解があるようだな。

我々は東の王国、ゼノビアからやってきたのだ」


──ゼノビア?


港町に住んでいれば、名前ぐらいは知っている。

新生ゼノビア王国。

それは、一、二年前に大きな戦いを終えて、

大幅に領地を拡張したという大国の名である。


「そんな、まさか」

思わず口走りながらも、

嘘を言っているのではないことは

伝わってきた。

沈黙を守っていたカチュアも、おずおずと口を開く。

「……そういえば、暗黒騎士ランスロットは片目だとか。

あなたは違うわ」

「片目の暗黒騎士……」

ランスロットは呟き、デニムと目が合うと、

気に留めた様子もなく破顔した。

「そうか。どうやら同じ名前のせいで

間違えられたらしいな」

あっけらかんとしたものである。

デニムは頷くことも言い返すこともできなかった。


陣羽織の見事さといい、

たずさえる武具の美しさといい、

どこからどう見ても、

身分の高い立派な騎士様である。

にも関わらず、

いきなり異国の子どもたちに斬ってかかられ

この屈託のない対応は、

普通に考えてあり得ない。


好人物なのだ。


それは、ランスロットの

一挙一動をさりげなく見守る、一行の視線

──困ったような誇らしげなような視線からも

うかがい知れた。

であればこそ、改めて自分たちが

犯してしまった過ちに血の気が引く。

「あの、も」

申し訳ありません、と言えるだけの間もなかった。

仕切りたがりのカノープスがしゃしゃり出て、

いきなり説明を始めたのである。