魂萌え !/桐野 夏生
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読みながら、こんなに落ち込んだのは

川上弘美作品以来です。

久々の桐野夏生作品。

相変わらず、毒が効いていて

読んでいて息苦しさと閉塞感に泣きたくなりました。

突き放して面白がりきれない、

圧倒的な憂鬱さ。


物語は、60歳に手が届こうという主婦が、

夫を亡くしたのを境に

悪意に満ちた世間というものを

否応なく思い知らされるという内容。


息子や娘に財産をもっていかれそうになったり、

夫が生前不倫していたことが判明したり、

自分も不倫をしてしまったり、

友人たちとの人間関係がこじれたりと

まあいろいろと嫌なことがいっぱい起こります。


だから、ラストシーンで、

ご都合主義なぐらい、さわやかな風が吹いたのが

ほんとうに意外でした。

そう、この作品、ラストは明るいんです。

あのラストがなければ、作品の力に引きずられて

しばらく落ち込んだかと思います。


そのぐらい力のある作品ではありました。


ドリームタイム/田口 ランディ
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この作者さんも久々。

田口ランディ。

こーれーは……

少なくともわたしにとっては、面白くなかったです…。


短編が何本も入った小説かと思いきや、

エッセイ、になるのかな。

とりあえず、出てくる主人公は作者です。


田口ランディ作品は結構読んできたし、

デビュー作の『コンセント』なんかは

本当に鮮烈で面白かった。


だからこそ、ここまで作者の価値観が、

予定調和を望む姿勢が、

前面に出過ぎて説教くさくなると

「いやいやいや」

と腰が引けてしまいます。


スピリチュアルとかオカルトに分類されるような内容を、

世界を読み解く方法として物語に鮮やかに

組み込むのが彼女の味だとするのなら、

これは「スピリチュアルやオカルトの本です」

といった方が正しいような感じ。


しかも、読み解こうとする姿勢より先に、

押し付けたい答えがあるように感じられます。


最後まで勧誘されているような気分で

逃げ腰で読んでしまいました。


ううん、残念。