映画「ショーシャンクの空に」は、映画の会で二年前に上映された「大脱走」を思いださせましたね。

ラストのシーンで、壁に貼ってあったポスターはトンネルを隠すためのものであったことが明かされ、アンディが脱走していきます。

 

 すべては脱走するために準備されていることが明かされます。

ハンマーをレッドにお願いして入手すること、アンディは地質学を勉強しており、トンネルを掘るにはいい地層であるとわかること、石を削って彫刻を作ることが趣味であること、トンネルの入り口を隠すためにリタのポスターを入手すること、いつまでも同じポスターでは怪しまれるので10年ごとに変えること、そしてトンネルを掘っていたのだと観客がわかったときに、掘った土をズボンに隠しておいて運動場に撒いておいたことが明かされます。ここのところは「大脱走」へのオマージュでした。

 

 映画「大脱走」は第二次世界大戦時に、ドイツの空軍捕虜収容所から、イギリス空軍の捕虜が大量に脱出した実話を元にした映画です。こちらの脱走は、個人の自由への希望というばかりでなく、大量に脱出して後方撹乱するというイギリス軍の使命として組織的に行われるのですが、脱出できた捕虜たちは、ほとんどが捕まってしまい、ゲシュタポに銃殺されてしまいます。戦争捕虜に関する国際条約によって、捕虜の人権は保証されているので、ドイツ空軍はそれを遵守しているのですが、ゲシュタポはそんなことを無視していたひどいやつらだと思わせる映画でした。

 

 しかしこんな映画は深刻すぎますので、アメリカ的なハッピーエンドにします。そのため、英国空軍捕虜のなかに、なぜかアメリカ兵士としてスティーブ・マックイーンがまぎれこんでいました。組織的かつ地道なトンネル掘削作業とは別に、このアメリカ兵士は勝手なことをやって映画を盛り上げ、みんなといっしょに脱出してからは、バイクで逃げ回る大アクションをやり、最後は捕まってしまいますが、元気に捕虜収容所にもどってくる、というところで幕になりました。

 

 「大脱走のマーチ」とともに、この映画は超娯楽作品となりました。ヨーロッパ的な深刻映画とアメリカ的ハッピーエンドの幸せな結婚でした。

 

 なお、アンディは銀行マンですが、地質学の素養がある、という設定を不思議に思いませんでしたか。銀行マンでも地質学を勉強したっていいではないか、と思ったかもしれません。日本ではちょっと想像がつかないかもしれませんが、アメリカの大学教育では、これが普通のことなのです。理科系だからといって、数学や物理化学ばかりやるのではなくて、自分の専門以外の科目を勉強することが義務づけられています。例えば、物理が専門だとしても、生物学を勉強して、すべてが論理的にいくわけでもないことを学びます。おそらく、アンディは経済学ばかりでなく、地質学を大学で勉強していたことを、それとなくほのめかしているのでしょう。