これまでジャズピアニストとして活動してきたけれど、僕は、最初からジャズが好きだったわけではありませんでした。
僕がジャズに触れたのは、19歳、大学の軽音楽部に入ってからのことです。
それまで僕は、ロックが好きで、ロックしか聴かないロック少年でした。大晦日にも、家族と一緒に紅白歌合戦を見ることなんかせず、自分の部屋でロックのレコードをかけて年を明かしたりしていました。
そのときの僕を夢中にさせていたのが、エリック・クラプトンのブルージーな速弾きや、ジミ・ヘンドリックスのクレイジーなギタープレイでした。
なかでも衝撃を受けたのは、イギリスのプログレッシブ・ロックのEMERSON,LAKE & PALMER(エマーソン、レイク&パーマー、略してEL&P)のキース・エマーソンのキーボードでした。
僕が音楽を始めたのは中学生の頃でしたが、ピアノよりもエレキギターやドラムが好きで、ピアノのお稽古そっちのけで ギターを弾いたりドラムを叩いたりしてばかりいました。それが、キース・エマーソンのプレイを見て、鍵盤楽器というものに対するイメージを根底から覆されたのです。
彼が現れるまで、鍵盤楽器といえばロックバンドの中では脇役でしかありませんでした。
それが、ジミ・ヘンドリックスのギターのように大音響で音を歪ませ、キーボードを二台も三台も操る超絶技巧で、聴いたこともないサウンドを作り出しているのです。
EMERSON,LAKE & PALMER ”HOEDOWN”
僕は、彼に近づきたいと思って練習をはじめました。
今でも僕のプレイには、彼の影響が見られると思います。
大学に入学して軽音楽部に入るまで、僕は、音楽で生きてゆくとするなら、ロックミュージシャンになるものだとばかり思っていました。