他の登山者がそそくさと上を目指す中、私は別の時間を過ごす。数歩進んでは、周りの景色を眺めて写真に納める。
山紫陽花が白い美しい花を咲かせていた。
少し進んだ所、いつも鳥がたくさん鳴いているお気に入りスポットがある。
そこにはいつも会う鹿もいる。
彼らのお散歩コースになっているようで、柔らかい若葉を美味しそうに食べている。この子は去年会ったときは子鹿だった。
まだ少し幼げな表情の名残があるけど、愛らしさは変わらずだ。
去年の子鹿の時もそうだったのですが、興味津々にこちらをじっと見詰めてくるこの子は、今回はこんなに近くまで寄ってきた。もう目と鼻の先だ。
警戒して来た雰囲気ではなく、そろりそろりと近寄ってくる。
覚えていてくれたのだろうか?
もしもそうだったら嬉しい。
私は登山が目的ではなくて、会いたい彼らがいるから山へ入らせていただく。そして、ほんの少しの時間を彼らの穏やかな暮らしの傍らで、私も森林浴を満喫した。
熊や猪には出くわさないことを願いつつ、また会いに行こう。