イサクが年をとり、
目がかすんで
よく見えなくなったときの
ことである。
彼は上の息子エサウを呼び寄せて、
「わが子よ」と言った。
すると彼は
「はい、ここにおります」と答えた。

イサクは言った。
「見なさい。私は年老いて、
いつ死ぬか分からない。

さあ今、
おまえの道具の矢筒と弓を取って
野に出て行き、
私のために
獲物をしとめて来てくれないか。

そして私のために
私の好きなおいしい料理を作り、
ここに持って来て、
私に食べさせてくれ。
私が死ぬ前に、私自ら、
おまえを祝福できるように。」

リベカは、
イサクがその子エサウに
話しているのを聞いていた。

ーー

ヤコブは父のところに行き、
「お父さん」と言った。
イサクは「おお。おまえはだれかね、
わが子よ」と尋ねた。

ヤコブは父に、
「長男のエサウです。…」と答えた。

ーー

ヤコブが父イサクに近寄ると、
イサクは彼にさわり、
そして言った。
「声はヤコブの声だが、
手はエサウの手だ。」

ーー

「本当におまえは、
わが子エサウだね」と言った。
するとヤコブは答えた。
「そうです。」

そこでイサクは言った。
「私のところに持って来なさい。
わが子の獲物を食べたい。
そうして私自ら、
おまえを祝福しよう。」
そこでヤコブが持って来ると、
イサクはそれを食べた。
またぶどう酒を持って来ると、
それも飲んだ。

ーー

イサクがヤコブを祝福し終わり、
ヤコブが父イサクの前から出て行くと
すぐに、兄のエサウが
猟から戻って来た。

彼もまた、おいしい料理を作って、
父のところに持って来た。…

父イサクは彼に言った。
「だれだね、おまえは。」
彼は言った。「私はあなたの子、
長男のエサウです。」

イサクは激しく身震いして言った。
「では、いったい、
あれはだれだったのか。
獲物をしとめて、
私のところに持って来たのは。
おまえが来る前に、
私はみな食べてしまい、
彼を祝福してしまった。
彼は必ず祝福されるだろう。」

エサウは父のことばを聞くと、
声の限りに激しく泣き叫び、
父に言った。
「お父さん、
私を祝福してください。私も。」

父は言った。
「おまえの弟が来て、だましたのだ。
そしておまえへの祝福を
奪い取ってしまった。」

ーー

エサウは父に言った。
「お父さん、
祝福は一つしかないのですか。
お父さん、
私を祝福してください。私も。」
エサウは声をあげて泣いた。

創世記27章
1~5,18~19,22,24,25,30~35,38節


・補足・
イサクの妻リベカは、
エサウではなく
ヤコブが祝福を受けるように、
イサクの好む料理を作り、
ヤコブにはエサウの衣を着せ、
滑らかな肌のヤコブに
子ヤギの毛皮を巻き付けて、
毛深いエサウのようにした。
(11~17節)

祝福は長子(長男)の特権。