真実はいつもピカチュウ。MEWです。

 

 GBシリーズ紹介記事ももう4回目。こんな記事を見てくださっているみなさんは「懐かしい」「へ~こんな時代あったんだ」なんてそんな興味本位で見てくれているのでしょうが、

 

ここから先は地獄だぞ 覚悟しておけ

 

 

 ということで今回は、

  1. それまで好調だった「遊戯王携帯ゲーム」という期待を裏切り、
  2. ポケモンにも決して負けていなかった遊戯王の携帯機ゲームブームにトドメを刺し、
  3. (据置、携帯機問わず)遊戯王ゲームブランドへの期待値を下げ、
  4. 後の良作ゲー(タッグフォースシリーズ等)への客足の遠さにも影響を及ぼす

 という大きな影響を与えた、そんな作品のご紹介です。

 

 

 

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遊戯王デュエルモンスターズ4

 最強決闘者戦記

発売日:2000年12月7日

定価:4,800円

収録カード:900種類

 

 本作は3バージョン同時発売(上記画像左から「遊戯デッキ」「海馬デッキ」「城之内デッキ」)。それぞれのバージョンで冠しているキャラが原作で使用していたカードをメインで使える、というコンセプト。

 前作「3」ではそれっぽいタイトルをしていながら使えなかった神のカードを本作では本格的に使用することができます。

 

 なお、パッケージ裏で「OCGルールと原作ルールに完全対応!」と堂々と謳っておいて全く再現できていないのは、いつものこと(というよりGBシリーズの根本的な部分)なのでスルーしてしまって構わない。

 

 

【DM4の大きな変更点・その1】

 前作の多くのカードが「下級に負ける上級モンスター(笑)」「融合(笑)」「儀式(笑)」になってしまったバランスを危惧したのか、本作では必要生け贄数に応じて能力最高値が独自に設定され、下級・上級・最上級モンスターのステータスラインが完全に決められることになった。

 具体的には、攻守の高い方の数値が以下に当てはまるように全モンスターのレベルが改訂された。

  • ☆4以下・生け贄必要なし……1350以下
  • ☆5・☆6・生け贄1体……1400以上2000以下
  • ☆7・☆8・生け贄2体……2050以上2750以下
  • ☆9~・生け贄3体……2800以上

 目に留まりやすいポイントであるため批判の対象になりやすいが、一部下級モンスターが飛びぬけて優秀だったために他の下級モンスターが採用する意義が無かったり、上級モンスターをまともに使用できなかったりした対戦バランスの前作からすれば、本作の仕様はかなりマトモ。

 後発のカードで調整できるOCGならばともかく、限られた容量内でゲームバランスを取らなければならないGBゲームの場合は、その作品内で完結させる必要があったため、なんとかモンスター間の差を補おうという誠意と気概を感じる。

 その意欲こそMEWは素晴らしいと評価するが、残念ながらこれが「成功」したとはとても言えない。

 

 このレベルと攻撃力の基準だが、製作サイドでどういう議論が交わされてこのようなステータス設定になったのか、非常に気になる。

 特に下級最大攻撃力がなぜ1350という中途半端な数値になったのか。コレガワカラナイ

 デュエルのメインとなるレベル帯であるにもかかわらず、最大攻撃力1350のモンスターは

  • レオ・ウィザード
  • ディスク・マジシャン
  • 舌魚
  • ベヒゴン
  • マーダーサーカス・ゾンビ(海馬デッキ限定)

 という地味すぎるメンツ。一部は名前自体、初めて聞く人も大勢いるだろう。

 

 自分だったら下級最値を種族も召喚魔族も豊富で取捨選択が楽しい1400帯にするんだけど…。

 原作でも活躍したエルフの剣士砦を守る翼竜が最高攻撃力持ちの一画になり、グレムリンドリアードが最高守備力持ちになるなど、原作やコアなファン層にもよっぽど配慮できる仕様だと思うのだが。

 まぁ女戦士カナンが攻守共に最強、本の精霊ホーク・ビショップ妖精の贈り物なんかがメリット効果持ちになるなど問題もあるけど、少なくとも今回の☆4最高数値持ちのメンツより、多くの選択肢をプレイヤーに与えられたうえに画面に華も添えられる選択ではないだろうか。

 当時のスタッフは「1350」という数値をどこから導き出したのだろうか…。

 

 とはいえこのレベル改正のために地雷蜘蛛のような突出したステータスの持ち主はいなくなり、「せっかく融合召喚したのに攻撃力が2200に届いていなかったから速攻破壊された。もう融合なんてフヨウラ!」などといったことは無くなった。

 これによってモンスター間の攻守や駆け引きの面白さが増した。この点はレベル改正の大成功ポイントだろう。

 しかし、このバランス調整は別の点で大問題が発生してしまうことになる。(後述)

 

 ちなみに上級最強ラインが2000であるため、原作の遊戯の主力であるブラック・マジシャン・ガールが遊戯デッキ☆6の最高攻撃力持ちになる。同じく海馬なら復讐のソード・ストーカーが、城之内は漆黒の豹戦士パンサーウォリアーが上級のエースとして使用可能になっているのは原作ファンからするととても嬉しいものである(なんか海馬だけ地味な気がするのは気のせいか…?)

 

 

【DM4の大きな変更点・その2】

 DCシステムも見直され、コストが軽すぎて存在意義が希薄だった前作と比較し、投入コストが全体的に上昇。強力な下級モンスターは簡単にデッキに入れられなくなった。

 このため本作では前作で空気気味だった融合召喚の重要性が対戦ルールを問わず大きく向上。前々作であるDM2以上に融合が重要視される。

 特に融合素材の組み合わせもその指定も前作以上にユルユルで、例えばサンド・ウィッチなら「岩石族」+「女性モンスター」という組み合わせで召喚できる。

 

 融合システムを把握しておけば、プレイング次第では初期デッキをちょっと強化した程度のデッキでラスボスのペガサスにも勝てるほど。

 つまり、弱いカードの組み合わせ(コンボ)で強いカードを倒す、という原作の雰囲気がかなり忠実に再現されている。

 

 こうしてレベル改訂と融合組み合わせの拡大によって、対戦バランスは過去最高クラスになる。

 

 ハズだった。

 

 

【DM4の問題点その1・バージョン商法】

 上述の通り、本作はバージョン別商法にて同時発売された。この頃はポケモンの大ヒットにあやかろうとしたのか、同じような商法を行うゲームが多数存在しており、DM4もそのひとつ。

 

 しかしながら本作はポケモンのような「基本同じで細かいところが違う」ような完成されたバージョン商法とは程遠く、「使えるカードが各バージョンごとに制約がかかる」という仕様となっている。

 例えば、サンダー・ボルトは海馬デッキでのみ使用可能となり、他2バージョンではデッキに投入する事すらできない。

 これらの使用不能カードはせっかく手に入れても使用できず、観賞用または別バージョンか過去作への交換用にするしかない。

 CPU戦に何回勝とうがパスワードを入力しようが、文字通り「使えない」カードばかり入手してしまうことも多く、デッキ強化は至難の業。

 後述するが、バージョン間のバランスも崩壊しているため、バージョン分けした利点はほぼ無い。

 推測になるが、前作「3」からわずか5ヶ月というスピード発売に間に合わせるために、単純分別してバランス調整を怠った結果と思われる(そもそものスピード発売の理由としては年末商戦に間に合わせるためかと)。

 

 ……念のため今のうちに書いておきますが、本作以降のGBシリーズは毎回バランス崩壊しているので、残り2回の紹介記事もそのつもりで。

 

 

【DM4の問題点その2・罠カードの凶悪な仕様】

 前作まではセット後、発動するしないに関わらず1ターンしか存在できなかった罠カードが、本作から発動条件を満たさない限り場に残り続けるようになった。

 今まで十分凶悪だった罠カードの、更なる上方修正である。

 

 この変更自体は、除去手段や対処方法がそれなりに確立されていれば、何の問題もない。

 実際、これ以降のGBルールシリーズではこの仕様でも成り立つバランスになっているのだから、この仕様自体は特に大きな問題ではない。誤解なきよう。

 

 ところが本作では、貴重な罠の除去手段であるハーピィの羽根帚を使えるのが「城之内デッキ」しかなく、「遊戯デッキ」「海馬デッキ」の罠解除は生け贄召喚が必要なカードを狩る死神に頼るしかないのだが、「生け贄召喚しなければならないので遅すぎる」「フェイクもありうる」という理由からあまり現実的ではなく、結局のところ、両バージョンでの罠解除手段は「見えている地雷に自爆覚悟で特攻を仕掛ける」ぐらいしかないというあんまりな状況。

 < …ってやるしかないのよ

 除去手段のバランスがとれていない以上、この罠カードの仕様変更は悪手としか言えない。

 

 またレベル改正にともない、攻撃力数値を条件としていた罠カードが凶悪化する。

 例えば「攻撃力1500以下」という扱いにくい条件だったベア・トラップは☆4以下を全て刈り取る凶悪罠カードに変貌した。

 実用的な罠の種類の相対的増加も、罠カード極悪化に拍車をかけている。

 

 そして強力な罠カードのほとんどは「城之内デッキ」が独占。他2バージョンには残りカスみたいなショボイ罠しか使わせてもらえない。

 

 

【DM4の問題点その3・召喚魔族間格差の拡大】

 上述の通り、本作では下級モンスターの最大攻守数値が1350に下げられた。

 しかしこれは「手軽に召喚できるモンスターの数が減った」ともいえる。

 

 前述した下級最大攻撃力数値のモンスターは召喚魔族が微妙に被っており、フィールド魔法によるバフデバフの関係もあって、実質3種類ぐらいしか選択肢がない。

 コンストラクションモードの完全削除に伴い、「不遇の召喚魔族をオリジナルカードで補う」ということもできない。

 そのため「下級モンスター取捨選択の楽しみ」が大幅に損なわれてしまったうえに、一部召喚魔族では攻撃力の高いモンスターがほぼ存在しない事態まで発生し、せっかく前作で均等になった相性格差は広がってしまった。

 

 

【バージョン間の格差】

〔遊戯デッキ〕

 コンセプトは「使用できる魔法・罠は少ないが、効果モンスターを多く使用できる」というもの。…と思われる。

 しかし本作に限らずGBシリーズでは、効果モンスターはかなり弱い。効果の内容が貧弱だったり少なかったり、等ではなくシステム上モンスター効果が非常に使いづらい。

  • 効果を使用するとそのモンスターは攻撃表示を強制され、攻撃権も放棄される。
  • なのに攻撃力の低いモンスターがほとんど。なので返しのターンの攻撃でほぼやられる&LP大量消費。
  • そもそも場に出さなければならないので、1ターンに1度しかない召喚権を必ず行使&消費しなければならない。
  • 特殊召喚なんてものもないので、モンスター効果は基本的に1ターンに1回しか使えない。
  • しかもそのほとんどが魔法か罠で代替が効くものばかり。「遊戯デッキ」でそれらは全て使用不可。

 当然同一ターン中に連発したりモンスターの召喚や攻撃を別にできる分、魔法罠の方が優位なのは明らか。一部優秀な効果モンスターは他バージョンでも使用でき、「遊戯デッキ」でしか使用できない独自の効果モンスターに有用なものが少ないなどの欠点もある。

 決定的なのが除去能力の低さで、特に使用可能な罠カードに除去能力を持ったカードが1枚もないのが大きく響く。上述の通り罠カードは本作の重要なカードであるにもかかわらず、である。制限指定でもいいから、《聖なるバリア-ミラーフォース》ぐらい用意できなかったものか。

 フィールド魔法を含めて強化手段すらほとんど使用できないトンデモ仕様で、他バージョンに簡単にパワー負けしやすく、罠による防御もままならないのだから、結局は強化された融合システムすら満足に使用できない。

 これらのことから、他バージョンとの通信対戦はおろか、通常プレイの対CPU戦ですら苦戦するレベル。このバージョンで遊ぶすること自体が縛りプレイである。

 しかしながら光の護封剣死者蘇生などの専用強力カードも多く、トラップ・マスター死者の腕など、魔法や罠の不足分を補える効果を持ったモンスターはちゃんといるので十分戦える。特に大嵐は数々のハンディキャップを吹き飛ばす一発逆転のハイパワーカード。

 純粋にプレイヤーの腕が試されるバージョンなので、やりごたえは十分ある。

 力で押す事ができない分、原作の遊戯のような高度なプレイングを求められる玄人向けのバージョン。辛い難易度であることは変わりないが、それはそれで楽しいものがあるというのは奇跡のバランスといえるかもしれない。

 

 

〔海馬デッキ〕

 正直、3バージョンの中で一番退屈

 サンダー・ボルト等の除去カードと火炎地獄等のバーンカードに長けたコンセプト。…なのだが他2バージョンと比較して攻撃・防御いずれも中途半端かつ器用貧乏で、突出した戦法は作り辛い。謙虚になり過ぎたためか、他の2バージョンと比べて作れる戦術バリエーションが圧倒的に少ない。

 ちなみに攻略本などでは「海馬デッキは除去に長けている」などと書かれているが、城之内デッキの方が除去手段も使いやすさも、その投入可能枚数も段違い。なんでそうなった。

 また、

  • レベル改正のために生け贄が3体も必要になったせいで海馬の象徴たる青眼の白龍が対戦で全く使われなくなる
  • 原作で海馬が使用したモンスターカードの中で☆4以下がサイクロプスしかない(闇道化師のサギーですら☆5)
  • 召喚されやすい下級モンスターの最高ラインが1500に届かなくなったためウイルスカードの使用機会が減って使い辛くなる

など、ルール改正やバージョン分配のあおりを一番喰らい、結果として原作のイメージから最もかけ離れてしまった不遇なソフト。

 青眼の白龍を使用しない海馬」など誰が見たいというのか。

 

 

〔城之内デッキ〕

 もはや製作者と寝たとしか思えない露骨な贔屓っぷり。

 本作で仕様強化された罠カードのうち、除去効果持ち罠を全て使用可能で、しかも全て3枚投入可能。先述の通り他バージョンでは自爆特攻以外での解除が困難なため、この大量投入される罠カードに対してまともに太刀打ちできない。

 融合素材を次のターンまで耐えさせることも、プチモスの進化さえも、罠の連発による高い防御力と除去能力が全て解決させてくれる。(ちなみにグレートモス系統も城之内デッキ専用カード)

 魔法も強力で、ブラック・ホール闇への手招きによる除去の豊富さ、心変わりによる永続奪取、強欲な壺による手札増強とスキが全くない。

 他デッキほどではないものの、効果モンスターも割とそこそこ扱え、使用カードが本当に強い。

 以上の事から3バージョン中、文句なしのぶっちぎり一強。

 

 

【神のカードについて】

 本作最大のウリは「神のカードが使用できる」というもの。これには当時のチビッ子たちが大興奮したものの、神のカードの強さにも明らかな差があった。

 神のカード3枚は3枚とも初期攻撃力が4000であり、効果は原作やOCGのそれとは結構異なり、

  • ラーの翼神竜(城之内デッキ専用)……敵味方の墓地のモンスターを蘇生し、更に一番強力な相手モンスター1体を永続奪取
  • オベリスクの巨神兵(海馬デッキ専用)……敵モンスターを全滅させ、4000のライフダメージ
  • オシリスの天空竜(遊戯デッキ専用)……手札1枚につき1段階アップ(最大2段階まで)

 他2体は字面ですらわかるぐらいド派手な効果であるため、ロマン砲としての魅力があったのだが、攻守が1000しか上がらないオシリスの天空竜にはその価値すらなく、「効果を使わず殴ったほうがいい」と言われる始末。ここでもバージョン格差が発生してしまっている。

 

 

 

【本作の注目カード】

レオ・ウィザード

 冗談抜きで本作最重要カードの一画。

 1350という下級最強クラスの攻撃力に加え、同ステータス帯の中では唯一召喚魔族が2体以上被っていないことからやや対策されにくく、申し訳程度だが守備力もかなりの数値で、本作における最も強力なモンスターの1体。

 本作とOCGとの需要の落差で今でもネタにされる。

 

アンブレラ・キメラ

 唯一の下級最大守備力持ち。OCG化されていない、本作オリジナルモンスター。

 壁としての性能ももちろん高いが、ここにマブラスを融合させることで下級2体融合モンスターの最高攻撃力を持つ紅陽鳥を融合召喚できる(ただし召喚魔族の点で難あり)。

 このカードをはじめ、GBオリジナルモンスターは割と多いが、今のところOCG化されたものはない。本作以降、GBルール以外のゲーム作品ですら登場していない。

 …でも過去のカードを拾っていっている今のOCG化の流れならワンチャンある?

 

 

死者の腕

 OCGではバニラだが、GBシリーズでは効果モンスター。相手フィールドで最も強力なモンスターを道連れにして墓地に行く。
 これで切り札除去後に死者蘇生で奪うのは「遊戯デッキ」の最重要コンボ。元々除去手段の乏しい(というかこのカード以外は「無い」と言っていい)「遊戯デッキ」ではあらゆる構築で必須レベル。

 生きた六芒星の呪縛ことマンモスの墓場と融合させれば金色の魔象の融合召喚も可能だ。

 

トラップ・マスター

 効果によってノーコストで硫酸のたまった落とし穴をセットする。罠カードに不足する遊戯デッキと海馬デッキでは貴重なアド稼ぎ要員。

 主な用途は罠で攻撃を回避しつつ次のターンまで生き残り、上級召喚の生け贄にしたりする他、闇の訪れで効果を再使用するなど。特に決定的な罠不足である遊戯デッキでは超重要な存在。

 

激流葬

 DM4屈指のインチキカードの1枚。城之内デッキ限定カードだが、その効果はサンダー・ボルトと同じ。罠カードの仕様強化によって極悪性はこれまでGBシリーズで紹介したカードの比ではない。

 また万能地雷グレイモヤがコスト200と割高になって弱体化したのに対して、このカードはコスト60とかなり安い。

 これはおそらく「遊戯デッキ」の大嵐や「海馬デッキ」のサンダー・ボルト等、そのバージョンの「必殺技」のような位置付けのパワーカードはゲーム中盤から使えるようにわざとコストを軽くしているものと思われるが、激流葬はこの中で唯一無制限カードなので3投可能。やっぱりおかしい。

 

 

【DM4の対戦環境】

 対戦環境自体の見直し自体は一通り出来ていた(完成してるとは言っていない)ため、なんやかんやで同バージョン同士の通信対戦は非常に面白い。

 「遊戯デッキ」同士なら、決まれば強い強力なカードやコンボが特徴的な分、いかにそれを通すかがキモとなり、また如何に警戒・対策するかが重要となる。まるで囲碁か将棋みたいに試行錯誤して一手一手を動かす、緊張感ある対戦ができる。

 「城之内デッキ」同士ならハーピィの羽根帚が採用可能な事から、罠解除が容易なので罠カードが必ずしも決定打になるとはいえず、いかにして相手のパワーと罠を越えていくか、また偽物の罠などのフェイクカードを見破れるかという慧眼を問われる。

 海馬デッキはノーコメント。

 

 ただ、別バージョンとの対戦だと、先のバージョン別格差のせいで城之内デッキ無双になることは間違いない。

 

 

●遊戯デッキの場合

 とりあえず「死者の腕死者蘇生」のコンボさえ覚えていれば、大抵のデッキ相手には手痛い反撃を与えられる。

 強化値が高いフィールド魔法を使うのがベストな本作で、唯一フィールド魔法を使えないバージョン。ならばモンスター効果で変えていくしかないが、その効果持ちモンスターが軒並み☆5を超えるのも痛い。

 フィールド魔法を戦術のひとつとして使うのならば、海神竜で海にできる【海デッキ】あたりになるだろう。

 1枚1枚のカードパワーは決して低くなく、むしろ死者蘇生を絡めた瞬間火力は他デッキを圧倒するレベルなので、3バージョンで最もやりごたえがある。突き詰めるまでやり込む覚悟があるのなら、このバージョンでプレイしても損はないだろう。

 

●城之内デッキの場合

 「強力な罠を全部詰めばおk」。もうこの一言に尽きる。それだけ罠カードが強力すぎる!

 大量の罠カードで防御面が大幅に補強されているため、素材や生け贄モンスターをフィールドに残しやすいため、上級モンスターが採用しやすく、攻撃面で構築を練るのがメイン。

  • デッキ内のモンスターの召喚魔族をバラけさせて弱点突き特化構築にする
  • 融合に特化した構築にする
  • グレートモス系統のモンスターを主力にする(ラーバモスですら普通に採用圏内)
  • OCGと違ってメッチャ強いラーの翼神竜をフィニッシャーにした構築にする

等が考えられる。

 

●海馬デッキの場合

 正直、一番語る事が無いバージョン。

 罠は中途半端、バーンカードは主力にできるほどのものじゃないし、モンスターにも他より特化したような性能のものもない(そのためのレベル改正なのだから当然だが)。

 得意なのはゲームシステムの改正により打ち所に困る事が多くなった除去魔法ぐらい。

 とにかく実践的なデッキの幅が少なく柔軟性に乏しいため、どんなデッキを組んでも「劣化城之内デッキ」になりがちで、「遊戯デッキ」以上に構築幅が狭くつまらない。

 もう「除去して殴る」という正攻法でいくぐらいしかないが、悪く言えばそこぐらいしか突き詰める部分が無いため、ゲーム全体の作業感がすごく強い。

 キャラ愛がなければ他バージョンで遊ぶのをお勧めします。

 

 

 

【余談】

●本作での原作からの収録カードはバトルシティ編の光&闇の仮面戦まで。

 同時期にOCG化したカードが新たに収録されており、当時人気リクルーターだった《キラー・トマト》らの姿もある。…ホントなんで下級ラインを1400に(以下略)

 

●登場キャラは前作より減っている。またペガサスがラスボスポジションに復活。シモン・ムーランといったキャラもちゃんと続投。

 ……ところで、ごんぶとり遊戯を知っている人って今どのくらいいるんだろう。

 

●本作では神のカードが全て収録されているが、自身が扱える神のカードはそのバージョンでは絶対に手に入らない。

 例えば、「遊戯デッキ」なら3神のうちオシリスの天空竜のみが使用可能だが、これをドロップする敵と戦う事ができないため、入手ができない(神のカードにはパスワードが設定されていないため、パスワードによる入手も不可能)。

 そのため、神のカードを使いたいのならば他バージョンから交換で入手するしかない。

 また当時《ラーの翼神龍》はまだその全貌がはっきりしておらず(まともな登場すらしていなかった)、本作では完全オリジナル効果での収録となった。

 

●原作やカード人気絶頂期に発売したためか、本作は250万本という売り上げを記録。同時期発売の怪物ゲーム「ポケットモンスター クリスタル」の187万本すら圧倒し、キャラゲー売り上げでは未だに歴代最高。

 まぁその内容の出来は前述の通りなのだが…。

 人気や売上額と内容は必ずしも一致しないという好例として、後世のゲームクリエイターの方々のいい形での刺激になって欲しいものである。

 < いい刺激の一例

 

●本作で初めてゲームに登場し、OCG化までに10年以上かかった《魔道化リジョン》だが、OCGのパスワードを10年以上前のゲームである本作内で入力してもちゃんと入手できる。

 あなたが今もこのソフトを持っているのならば、《魔道化リジョン》のカード左下に書かれているパスワードを入力し、10年の時を超えてゲーム内ゲットしてみるのもいいだろう。

 何とも言えぬ感動があなたを待っているはずだ。