まだ僕が物語をこのブログに書いていた頃、自分たちの存在をアピールするためアイドルたちが時々やってきて痕跡を残してくれていた。
- 前ページ
- 次ページ
以前働いてた職場の方に社員にならないかと誘われてて。
ルミナリエの光に包まれた愛らしいレンタルショップ店員がこう切り出す。
アルバイトをしている限り、いずれは訪れるカミングアウトの瞬間だけれど、まだ予想してなかった言葉に戸惑いを隠せない。
愛らしいレンタルショップ店員が愛らしいOLになるだけなのに、永遠の別れを切り出されたように感じる。
だから、もう会えないんです。
あえて彼女が声にしない言葉がそこにあるような気がした。
気がした。というか、言葉を切ったのは彼女の優しさなんだろうと思う。
いい話だね。おめでとう。
アルバイトを続けるよりも安定して働くことができる。
しばらくは落ち着かないよね。
こんな杓子定規な言葉しか出てこない。
刹那のものだと分かっていても、もう少し彼女の笑顔に触れてたかった。
色々なレターセットをさがしたかった。
桜や紫陽花を愛でて、波の音が心地良く響くビーチで缶ビールを酌み交わしたかった。
全て叶わないものであったとしても、そんな夢をもう少し見ていたかった。
あまり意識をしてこなかったけど、愛らしい彼女の笑顔や思わず微笑んでしまうような可愛い字が僕は本当に大好きだったんだ。
心底楽しかったんだ。
こんな年齢になっても心の底から楽しいと思えることがどれだけ貴重なことなのか痛感した。
社員登用というのは本当にいい話。
でも、素直に喜べない自分がいる。
ルミナリエの眩い光が遠くに感じる。
認めたくないけれど悲しみで体内が埋め尽くされていくのが分かる。
今まで呆れるほど別れや悲しみなんて味わってきたのに、どうして免疫力がついてないんだろう。
自分勝手なことばかり思う自分自身に苛立ちを覚える。
醜い自分に腹立たしくなる。
彼女が旅立つまで、あと一月半。
悲しむのは後でもできるから、残された時間をめいいっぱい楽しまないと。
一緒に過ごす時間が幸せなものだったと感じてほしい。
どれだけ遠くても、どれだけ多忙を極めても、会いたいと思う気持ちが今は薄っぺらくても、彼女がまた一緒に過ごしたいと強く思うくらい楽しい時間を過ごしてもらわないと。
たしかマカロンが好きだと言ってたっけ。
次、会える時は、頬張るだけで嬉しくなるくらい美味しいマカロンを用意しよう。
岡本にあるグラモウディーズなら間違いない。
まだまだ食べ足りない美味しいものや観てない素敵な景色がある。
少しでも一緒に味わいたい。
息を飲むような美しい景色に感動したい。
幻想的なイルミネーションが御堂筋を歩くサラリーマンやオフィスレディの心を温かくする
光の響宴 2014
が始まった日、僕は探し物を求めてキタからミナミまで歩く途中にあるコンビニやステーショナリーショップに立ち寄っていた。
探し物。
レターセット。
42歳にして、直筆の手紙を書くとは思ってもみなかった。
この二ヶ月ほど前までは。
愛らしいレンタルショップの店員さんと週に何度か
交換日記
をLINEでしているうちに、いつの間にか直筆の手紙を交換するようになった。
僕にとってはなんとも懐かしく嬉しいものだけれど、思春期を迎えた頃にはパソコンが当たり前のように普及していた26歳の彼女にとって、直筆の手紙を交換するというのはどのようなものなんだろう。
僕と同じように相手の顔を思い浮かべつつ便箋にペンを走らせ、封筒を開けるときは何とも形容し難い胸の高鳴りを感じているのだろうか。
心を落ち着けて、愛らしい彼女を思い浮かべつつ小さな便箋にペンを走らせる時間は、この上なく満たされた気持ちになる。
一人で家に居るときに、これほど嬉しい気持ちになれるとは。
あえて時間をかけるという行為も悪いもんじゃない。
そのようにして、僕は週に一度は直筆で手紙を書くことになった。
家に残っていたレターセットが底をつきそうになり、僕はレターセットを求めて御堂筋を歩いていたわけだけれど、今時、需要が少ないのだろう。
これがなかなか見つからない。
ステーショナリーショップにいっても、至って事務的な形の便箋や封筒ばかり。
少しだけ並べられていたレターセットもなんとも味気ないもの。
昔はよくわからない絵柄や様々な動物、色々な花々で彩られていたレターセットがたくさん売られていたのに。
まあ、書ければそれでいいし、手紙に乗せた思いが伝わればいいわけだけれど、レポート用紙のような便箋に無地一色の機能的な封筒はなんとなく素っ気ない。
さて、どうしよう。
と考えつつ歩いていた時、ふと目の前に現れた100円均一ショップ。
ここならあるかも。
何でも100円で揃うのがウリなんだもの。
きっとある。
そう思い、100円均一ショップの文房具コーナーへ。
100円という金額設定もあってか、ちょうどいい大きさの便箋がついたレターセットがあった。
罫線が広かったり、一枚が大きすぎると字が汚いのがより目立ってしまうので、手の大きさくらい、B6版辺りが程よい。
これで彼女の喜んでくれる顔を思い浮かべて手紙が書ける。
愛らしい彼女はいつまで僕のような平凡極まりないサラリーマンと手紙の交換を続けてくれるのか。
僕はいつまで拙い文章で愛らしい彼女を喜ばせてあげられるのか。
考えたって答が見つかるわけでもないことは考えないでおこう。
少なくとも今は愛らしいレンタルショップ店員は僕の手紙を心待ちにしてくれている。
と思う。
それだけで十分。
これからもいろんな種類のレターセットを探すことができますように。
夏に知人の報道関係者がこう話していた。
『震災から20年だから色々と取材をね』
そうか、20年なんだ。
震災の後、電車が開通するのを待って南京町に出かけた。
三宮の高架下にある歩道は大きなひび割れがそこかしこに残されたまま。
南京町の店も店内で料理を作ることができないのか、どこの店主も店前で調理したものをお客様に振る舞う。
店前に並べられた点心でお腹を満たすことが彼らの力強い再生に向けた意欲の後押しになればいいのにと思い、夏空の下で炒飯を頬張ったことを思い出した。
その年の冬、神戸の街が煌びやかな明かりに包まれる。
鎮魂の光
希望の灯
神戸ルミナリエ
大阪で暮らしていた僕は震災で失ったものなんて何もない。
でも、20年を振り返ると胸が詰まる。
『バイトの空き時間があるようなら、ルミナリエ行こうか』
愛らしいレンタルショップ店員を誘った。
20年にこだわったわけでもなく、イルミネーションがどうしても観たかったわけでもない。
愛らしいレンタルショップ店員と一緒にゆっくりと過ごしたかった。
『はい、とても楽しみです』
二つ返事で可愛く頷く彼女。
いつ以来だろう、ルミナリエ。
待ち遠しい。
鎮魂と希望の光に微笑む彼女が見たい。
第20回神戸ルミナリエ
2014/12/4~2014/12/15
![今1番行きたいところ](https://stat.ameba.jp/common_style/img/home_common/home/ameba/allskin/ico_kuchikomi2.gif)
コンビニでも
ブックストアでも
ステーショナリーショップでも
100円均一ショップでも
この時期になると一番目立つところにあるカレンダーと手帳。
カレンダーだって書き込みもしないし、手帳が必要なくらい用事がわんさか入るわけでもないので、普段は年が明けてからしか買わない僕が珍しく11月に買った来年の卓上カレンダー。
2月がない。
1月の裏にもない。
3月の後にもない。
どこにもない。
108円(税込)では2月まで手が回らなかったのか。
この商品を作ったどこかの国、どこかの地域では2月という概念が存在しないのか。
僕の運がなかったのか。
普段しないことをしたらこんなものなのかも知れない。
こうなったら意地でも108円で2月があるカレンダーを手に入れてやる。