ふた昔ほど前、『ごけぞこ』(べた底)の徳利を初めて見かけたことがある。

 持ち主の若い女性に聞いたところ「友人が作ったものを買った」とのこと。

 

 徳利は、先人の永い間にわたる経験からだと思われる、道理にかなった

工夫が施されている。

 

 それは「上げ底」である。

 

 床(机)との接地面積が広ければ、それだけ、せっかく温めたお酒が

冷め易いのは道理である。

 

 作り手の職人も、その道理を十分にわきまえたうえで上で、徳利を

作っていたのではないか。

 

 たとえ、知らなかったとしても、先人からの❝習い❞として、当たり前のこことして

身に付けていたのだろう。

 

 その道理を無視したものを見かけると、何か寂しいものを感じる。

 

 因みに、「碁笥」とは、碁石を入れておく器のことであり、

『碁笥底』を「後家底」と思い込んでいる人がいるようだが、

それは、誤解である。

 

 

 ※参考:『広辞苑』 岩波書店

      『原色陶器大辞典』 加藤陶九郎編 淡交社