近年世界で日本軽視(Japan passing)とか日本無視(Japan nothing)が進行しているという主張が日本のメディアで盛んに行われている。今や、多くの日本人がそれを信じていると思われる。現政権の無様な有り様が気持ちに拍車を掛けているのだろうか。

ところが、世界は依然として日本の肯定的な影響力が極めて大きいと認識している。
英国放送協会BBCは、2005年以来世界主要国(日本は2006年以降)について、肯定的及び否定的両面の影響力調査を実施している。本日7日発表された調査は、昨年12月2日から本年2月4日までの期間、主要16ヶ国の影響力について、27ヶ国約3万人の市民に質問したものものだそうだ。
それによると、日本は、肯定的影響力でドイツに次いで世界第2位(2009年まで1位、昨年2位)、米国では否定的見方が7%増の18%だが、肯定論は4%増の69%であり、各国とも総じて肯定論が上昇している。否定的見方が肯定論を上回ったのは、中国とメキシコのみで、中国の日本否定論71%が際立つ。
但し、これは、政府に対する評価とは必ずしも直結しない。日本「国」に対する評価である。
因みに今回調査では、肯定的影響力で、ブラジル(7位)、米国(8位)、南ア(10位)、インド(11位)が上昇し、下降傾向の中国(9位)は下げ止まり、否定的見方のトップはイランで、北朝鮮、パキスタン、イスラエル、横ばいのロシアと続く。

日露戦争以降、第二次大戦後の奇跡的復興、その後の文化・芸術・スポーツでの活躍から世界の日本化とも言えるスシ、カラオケ、マンガに至るまで、日本という国は、無視できないどころか、注視すべき国であり続けている。凶悪犯罪が増えたとは言え、世界から見れば安全で清潔な国でもある。
以前南米各地の移住地を廻った時に、日系の古老いわく、「昔は、日本人は、生の魚を喰らい、ゴム草履を履く野蛮人と言われた。今では母国日本の興隆のお陰で、スシは世界のファッションになり、草履も、日本人がやることだから良いことだと、彼等もゴム草履を履き始めた。」と。

Japan passingやJapan nothing論は、新しいキャッチフレーズだから、容易に「ニュース」になり、世界を駆け巡るし、加えて成功への嫉妬や、日本製品に駆逐された怨念もあるから流行る。見下げたことを言われたら、余り過小評価や侮りが過ぎると、いつか後悔しますよといなすべきであろう。

勿論、世界が日本のことをしょっちゅう考えているわけではない。
例えば、1990年代初頭、日本叩きの真っ最中でも、世論調査によると、カリフォルニア市民の四大関心事は、犯罪、麻薬、ギャング、それに水不足だった。
首都ワシントンでの政治や立法の動きはおろか、教育や経済でさえずっとあとの方にあって、その経済のところで、日米経済摩擦が介在したわけで、経済摩擦や日本叩きは、市民の日常の主要関心事ではなかった。それでも両国のマスメディアを騒がせた。

経済や教育問題が主要関心事となる日本は幸いであるが、残る課題は、政治であろうか。