2024年1月歌舞伎座
壽初春大歌舞伎
昼の部
荒川十太夫
神田松鯉 口演
竹柴潤一 脚本
西森英行 演出
尾上松緑の荒川十太夫

新作歌舞伎としてはかなり早い再演とのことおめでとうございます㊗️

2023年は通し狂言ではなくても
忠臣蔵多めに過ごせた一年。暮れには討入時の忠臣蔵外伝の物語(『松浦の太鼓』、そして『荒川十太夫』につづく講談原作の新作『俵星玄蕃』)を二本続けてみることが叶いました。年明けて今月、討ち入り後の物語『荒川十太夫』を目に出来て時系列で忠臣蔵外伝を楽しめる趣向に感謝。

初演時は実は私は
荒川十太夫という男が弁舌上手く切り抜けた可能性も考えながら楽しんでいました。(私自身のその思考が論理的に破綻していたとしてもこの時の私はそう考えても見ていました)つまりこの男にとって大きな賭けにはなるけれども赤穂義士たちの人気も活用して上手く出世した系の可能性。法廷劇ならありそうな展開では?そんなふうにも疑いながらも荒川十太夫という男を見ていた私です。推理劇のようにも脳みそのかたっぽで楽しんでいました。

でも今回はもっともっと素直に荒川十太夫が大石主悦、堀部安兵衛を間近にし、その姿に眩しさを感じたというその心を味わいました。

事情を知らず厳しい態度だった杉田さん(吉之丞さん)たちが彼の心に寄り添い労いを見せてくれるところやっぱりホロリといたします。彼は嘘をつきたいわけじゃなかった、その嘘には人間としての弱さも優しさもあった、それを受け止めてくれ采配してくれる彼らと亀蔵さんのお役(そして彼等の演技!)に見ているこちらが救われたりします

中車さんの堀部安兵衛、所作のひとつひとつも美しく、こういう、私、男と男の邂逅、男が一瞬で男に惚れるその瞬間を、生の舞台で目にできて、嬉しかったです。
猿之助さんにしても中車さんにしてもそういう男に惚れられる男の色っぽさの感じ、演技や表現がおもしろいですし魅力的だと思っています。

左近さんは今回は前回よりちょっぴりはお顔目にできたのですが、これまた荒川十太夫が眩しく感じてしまうような、義士としてのつよさ散りゆく命の美しさのようなものも、増したのでは

(そう思うと前回よりも今回のほうが荒川十太夫の中の弱さ、ある種の卑屈さ?よりも真っ直ぐに相手に惚れていく素直さが強かったような気がしました)

猿弥さんの住職さまも器が大きく感じてエンディングを受け止めきるような懐の深さがあって素敵でした



一階席でも見たかったのだけど(左近さんの表情見たい)資金が尽きて・・・でも想像の中で左近さんの素敵な最期の表情受け止めてるんで!!!


私、心がすぐ荒む弱い人なので
あったかい物語をありがとうございます