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松竹歌舞伎舞踊公演(巡業)初日
練馬文化センター
感想つづきです

河竹黙阿弥:作
連獅子
長唄囃子連中

巡業の前半はAプログラム配役
・狂言師右近
後に親獅子の精:中村芝翫
・狂言師左近
後に子獅子の精:中村歌之助
・僧蓮念:中村福之助
・僧遍念:中村松江

長唄に鳥羽屋里長さん♪豪華な☺️✨お声が響き渡るとどんなはじめての会場でもいつもの場所、戯場国となるなとほっと落ち着きます。
この暑い中でも演奏家さんたちはコロナ対策のための黒いマスクとしての布地つけてお声出したり演奏したりで大変だなと思います。お疲れさまです。そして全国にもこうして巡業で飛びまわってくれているのだと思うと感謝と感動でいっぱいです。一万円以下で彼等の響きを味わえることを思うと会場の個性差も色々になってしまうでしょうけど(邦楽向きじゃない会場もあるだろうし)なんとお得なのか巡業と思っています。

さて、ざっくりと。

狂言師として現れた芝翫さんに年輪を感じハッといたしました。私の中では芝翫さんは四十代のイメージで止まっているのですが、老けて見えるということではなく年齢を重ねてきた人間の滋味が出ていて、そういう人間の迫力と重みにどきりといたしました。(でも目元は涼やかなハンサムさんな狂言師なのです)そして小さい頃の印象がつよい歌之助さんがお父さんの身長より伸びたような体格で並んでいるので一層月日の積み重ねを思いました。私も年齢を重ねているのだなヒェェ^^;

宗論は福之助さんと松江さん。
落ち着いたユーモア、丁寧に。福之助さんお声裏返ることもなくきっちりと演じていました。眼力アップしたように思った福之助さんでした。玉三郎さんとの日々どんなものだったのでしょうね。
落ち着いた、けれどユーモラスな味わいを発揮しているのが松江さん。飄々としていてとぼけたような面白味。雰囲気や仕草、息にお父様の東蔵さんも持っている間とあの豊かな味わいを感じていました。それを堪能出来てとても充実した気持ちになりました。

獅子の精になってからの芝翫さんと歌之助さんはおもしろいことに芝翫さんが柔で歌之助さんが剛くらいの雰囲気の違いがありました。壽曽我対面で五郎を歌之助さん、十郎を芝翫さんでやってもいいかもくらいに感じた雰囲気でした。でもさらにおもしろいことに、芝翫さんの方が美しく若々しくすら見える年齢不詳さを見せるのに対して歌之助さんは逆に二十歳とは思えないある種の老け感と鋭さを見せていたのが印象に強かったです。狂言師のときとのそれぞれの二人の出していた印象からの逆転ぶりが不思議でした。芝翫さんの方がゆとりがあるからなのか。当たり前のように舞台に息し存在している芝翫さんと必死に居んとする歌之助さんの違いなのか。わからないけれど興味深かったです。

芝翫さんの獅子頭のぱっくんぱっくんがなんとなし好きでした。

歌之助さんのお顔がゴツゴツとした強みがあって私はそのゴツゴツした骨格を惚れ惚れと眺めていました。私は基本的にはがつんとした男臭いようなお顔が好きなのです。楽しいです。彼がこのお役で見せてくれた集中力と重みに、時代物ならなんのお役をやるだろうか、今回のこのイメージなら助六さんも観てみたい、そんなことも思っていました。芝翫さん白酒売やりなよ、なんて思ったりも。

獅子の精になってから前半少しリードしていた芝翫さんが後半は明らかに受けに周って歌之助さんを見る、見せる、ことを優先していたように見受けました。親子や師弟関係としてなるほどと感心しつつ、でも私はビリビリとやりあう芝居も好きなので、どうしたらこの人はもっと本気を出してくれるだろうかと(本気じゃないとは思ってないけど)それこそ獅子になって強靭な爪と牙を持ちその急所ののど元に喰らいついてみたいような衝動に駆られました。私では届かないだろうが。

芝翫さんの親獅子の精で印象に残ったのは、谷底から戻ってきた子獅子の精を見つけて再会してからの【こぼれる喜び】でした。今まで連獅子を獅子の精の細々としたお顔が見れる位置で観たことがなかったので正確な比較が出来ませんがその喜び溢れる芝翫さんの親獅子の精の雰囲気と表情が忘れられません。
歌之助さんの子獅子の精はある種のきびしさをたたえていたので(でも断然余裕もゆとりもあるのは芝翫さんの親獅子で険しい山も谷もけろっと当たり前のようにサクサク進んでる感じなのです。だからかいっそ彼が無邪気に見えるのかも。)……この親子獅子は面白い関係性だなと思いました。歌之助さんは子獅子としての若々しさがもっとあっても良いのかもしれませんね。

壁に沿った短い花道もつくってくれてあって花道での演技、見せ場もありました。
やっぱりきちんとした花道が恋しいけれどとても嬉しかったです。いっぱい歌之助さん見たよ。

乱れる息、それを整える呼吸、ちょっとした掛け声、踏ん張るための力む声、流れる汗、今回はじめて連獅子で舞台に近いお席だったのでありとあらゆることが新鮮で迫力でとても面白くて役者さんてすごいなーという気持ちでいっぱいなのでした。

二人の獅子の精のやり取りと迫力に会場ヴォルテージはかなり高まって大盛りあがりしていましたがぐっとこらえて?さっと切り上げる芝翫さんなのでした。巡業なのでカーテンコールになってしまうと関係各所に迷惑がかかるので座頭としての冷静な判断をしたのだろうと思います。そうではなくても成駒屋らしい引き際を見せる人ではありますが。(故に私は彼を寸止め王と呼ぶ)


いつかまた今度は思いきり
挑みやり取りできる場所で
向かいあえたらと
思いました


一万円以下でこの満足感
ありがたやありがたや


千穐楽までどうかご無事で
今日も
素敵で無敵な一日になりますように

では、また🐱🐱