私は何をやっているんだろう。

鈴木さんと二人で、私は喫茶店にいた。



朝起きて、私はシャワーを浴び、準備をした。

鈴木さんと合流した後、私達は警察署に行った。桂木さんはいなかった。事故とはあまり関係がないからか、それとも後日になったのかは分からない。

警察署に行き、警察に昨日の事を説明する。その時は鈴木さんとは別れたが、その後合流。


お昼頃だったという事もあり、鈴木さんがご馳走してくれる事になったのだ。

何でも良いと言われたが、私はコーヒーが飲みたいと言った。

近くの喫茶店に行き、席につく。


「ごめん、煙草吸って良いかな?」

互いに煙草を吸うという事もあり、私も煙草を取り出した。

煙草の煙を吐き出しながら、私達は会話をする。何も喋らないというのは互いに苦痛であったし、私には色々と聞きたい事があった。


事故の事を聞いてみる。

私はやはり車に引かれたらしい。車は私の左側から来た。といっても、左足はあまり痛くないのだから、後輪が当たったぐらいなのだろうと思う。

それで、私は宙を舞ったらしい。

鈴木さんの言葉に、私は驚いた。そのまま吹き飛ばされたのかと思って確認したのだけど……確かに、宙を舞ったらしい。ぶつかり、空中を飛び、その後、体の右側を地面に打ち付けた。

事細かに話してくれる鈴木さん。

いまだに状況の分かっていなかった私は、少しそれで落ち着いた。

漠然としているよりも、はっきりとしているほうが人間は落ち着くものだ。


コーヒーが来た。

ついでに頼んでいたパフェも来た。

私が食べていると、鈴木さんが自分のことを話し始めた。

彼は昨年会社を辞めて、独立した人らしかった。小さい所ではあるけど、なんだか社長さんらしい。

コンピュータ関連の仕事らしいけれど……そこらへんは忘れた。

「事故ってしまったの初めてだから、どうして良いのか分からなくて、混乱してた」

と、鈴木さんが言った。

当たり前だ。そう何度も事故られていたら困る。そんな事を考えていたが、私も軽く微笑み、

「私もですよ」

と言っておいた。

病院を出ると、駐車場に警察が待っていた。

私、鈴木さん、桂木さんの三人とも色々な事を聞かれた。事情聴取、というものだろうか。

「詳しく聞きたいので、明日警察署に来てくださいね」

そう言われ、その日は警察と別れた。


これからややこしくなる事がすごく面倒くさかった。

私は帰ろうとした。それを鈴木さんに止められた。

互いの携帯番号を交換する。

その後、自転車の修理代として二万を渡された。私はいらない、と言ったのだが、それでは申し訳ない、と言ってきた。ひどく哀れに思えたので、受け取った。


その自転車は事故のあった現場に置いている。

そのまま放置して、私は鈴木さんに家まで送ってもらった。

幸い、歩けないほどは痛くない。片足を引きずりながらなら、歩ける。だが、さすがに病院から家までは遠かったからだ。

家に着いた後、鈴木さんが言った。

「ごめんね」

その言葉が、妙に恋人との別れの言葉と重なった。



ひどく憂鬱な状態で、ベッドに寝転がった。

シャワーを浴びたい。そう思っているのに、気がついたら私は寝てしまっていた。



病院は目の前にあった。

けれど、交差点がややこしくて――結局15分ほどかかってしまった。

その間、びしょ濡れの私は男性二人の車の後ろの席で座っていた。

空虚感に囚われながら、窓の外を眺める。

雨が降っているな。あぁ、あそこでぶつかったのか。

ぼんやりとそんな事を思った。


男性の名は鈴木さん、と言った。40代前半の男性は桂木さん。

私も相沢です、と名乗る。互いの自己紹介が終わった後、鈴木さんは私に謝ってきた。

哀れすぎて、私は「いいですから」と言葉を切らせた。

5、60代の男性が本当に申し訳なさそうに謝ってくる。しかもその当時18だった私に。

ひどく、悲しかった。


病院に着いて受付をした後、私は数分待たされる事になった。

鈴木さん達は会社で残りの仕事があるからと、一度帰って再び仕事に向かう所だったらしい。

そんな時に事故だったからか、鈴木さんは会社に電話をしていた。もちろん、その前には警察にも電話をしている。桂木さんと私は沈黙のまま、椅子に座ってぼーっとしている。


この空虚感が、たまらなく気持ちよかった。

右腕の傷を見る。雨で路面が濡れていたからか、さほど深い傷ではない。擦り傷だ。

でも、それが心地よかった。

己の傷を具現化しているようで。今の自分を表しているようで……。


暫くして、私は診察室に通された。

そこで右腕に包帯を巻かれる。

額も怪我していたようで、右目の上、眉の少し上辺りに、ガーゼを貼られた。

そこの看護婦さんが何故か私の傷を見て怒っていた。

「何で先に警察に連絡してないの?」

よく分からない怒りだった。それは鈴木さんに言うべき事なのでは? でも、鈴木さんもちゃんと警察に連絡はしていた。この看護婦さんの言っている事がよく分からなかった。

私は「錯乱していましたから」と言って苦笑いした。


右足が妙に痛いな、と思っていたら、足首を捻っていたらしい。医者に触られてから、ようやく理解した。それまでは漠然とただ右足が痛い、だけだったのだ。

どうやら、私はぶつかってから右に倒れたらしい。右側が痛い。


その後、私は脳にも何かあるかもしれないからと、検査をする事になった。

MRIやCTなんて初めてだった。貴重な体験だ。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫!? ねぇ、ちょっと!」


二人の男の声がした。

微かに目を開く。頭がぼーっとしている。寝起きのような、そんな感覚。

私は平然と身を起こした。側で自転車が寝ている。私は淡々とその自転車を立たせ、跨った。

そこまでの動作をしていても、私はぼーっとしていた。

今の状況を把握できていないのだ。そんな中で、私の行動はひどく日常的な行動。頭は働いていないが、肉体が必死に状況把握をしようとしているのか。それはその時の肉体に聞かないと分からない。


「君、大丈夫かい?」

5、60代の男性に話しかけられた。よく分からなかったが、私は「大丈夫」と連呼していた。

「いや、君、大丈夫なわけないよ。ちょっと待って」

もう一人の男性、これは40代前半だろうか。彼が私の腕をつかんだ。

「大丈夫ですから」

なんだかよく覚えていないが、私はとにかくその言葉を連呼してその場を立ち去ろうとしていた。

二人の男性が何者なのか。今の状況がどうなっているのか。

そんな事は関係なかった。


……ただ、熱いシャワーを浴びたかった。



男性に指を指されて、ようやく私は気づいた。

右肘から手首にかけての擦り傷。

それを自覚した途端、私はようやく自分が事故にあったんだ、と理解した。

幸い、死には至らなかったようだ。

だが、急に右足に激痛が走った。

「痛っ!」

思わず声が出る。その声に反応し、オロオロと5、60代のおじさんが私を見回した。

「大丈夫かい?」

この人が私を引いたのだろう。

髪が薄く、皺のある顔。スーツ姿を見る限り、サラリーマンだろう。

……彼の姿が、ひどく哀れに思えた。

「大丈夫ですから。それじゃ」

それが情けから出た言葉だったのか、それとも本当に大丈夫だったのか。

私は自転車を動かした。右足はぶらんとさせておき、左足だけでペダルを踏む。自転車がゆっくりと動き出す。だが、それは1メートルも動かずに止められた。

「とにかく病院へ行こう」

40代前半の男がそう言った。

雨が降ると、私は交差点を思い出す。

もう二年前になるのだろうか。

私がコンビニでまだ仕事をしていた時の話だ。


その頃、私は恋人と別れ、表向きは平然としていたものの、ずるずるとその気持ちを引きずっていた。

「ごめんね」

「友達に戻ろう」

その言葉が耳に残る。

ボーっとしていると、その相手の顔が浮かんでくるのだ。その子は何もしない。ただ、私の記憶の中のその子が映像として浮かんでくる。

楽しかった日々。

つらかった日々。

――その時には分からなかった、その子の心理。

今では懐かしく思うぐらいで、既に傷は塞がっている。けれども、その時の私にとっては何も分からない。ただ闇雲に答えを見つけようとして、もがき、あがき、苦しんでいた。


恋人と別れた日。その日は雨が降っていた。

「傘持っていっていいよ」

別れたばかりの私達は、どこか淡々としていた。うまく距離を作り出そうとして、互いに失敗をしているような、微妙な距離感。私もその子も、その事に気づきながらも平然とした態度で接している。


玄関には傘があった。でも私は――

「いいよ。家近いし」

と言って、その子の優しさを断った。

これ以上甘えたら、自分がもっと引きずってしまいそうで……。

これを失恋の思い出として終わらせよう。そう決心していた。


そう思って三ヶ月が経っていた。

いまだにずるずると未練がましく引きずっている。彼女とは連絡が取れないというのに。


友達と遊びに行った帰り、突然雨が降った。

それは次第に強くなり、私はいつの間にかずぶ濡れ状態。予想していなかったため、傘も持っていない。あいにく、現金もその時持ってはいなかった。


傘を差さずに自転車をこぐ私。

その自分の姿が、三ヶ月前恋人と別れた時の日の事を思い出させた。

みじめだ。

そう、思った。

雨で路面が濡れているというのに、私は全力でこいだ。

交差点が見えた。

ここを曲がり、まっすぐ行った所に私の家がある。

早く、家に着きたかった。

雨は全てを流してくれない。心の奥まで、水は届かない。

熱いシャワーを浴びたかった。


赤色から青色に変わる。

タイミング良いな、と思いながら、自転車を一度も止めずにこぎ交差点へと辿り着く。

同時に、一台の車が右折した。

何か来る……。そう直感した途端。


私の視界は暗転した。


給料が入った。


家賃(二か月分)に消え、

携帯代に消え、

電気代、ガス代に消え、


手元に残ったのは1万円。


――その中から、必ず参加しなければならない飲み会とかの費用を抜いてみた。


……マイナス二万円。


ちなみに、この中に食費は入っていなひ……。


よーし、これから一ヶ月マイナス二万円生活だぁっ!!(しくしく)

財布を開いた。

――35円。



通帳を見た。

――88円。



ひゃ、123円あればなんとかなるさっ!!

ほわわわ~ん。


「あー、そうそう! これよう調べとんなぁ~」


「え、何? 準備してるから忙しいんだけど」


「お前の買った雑誌読んでたんやけど、男女の心理っつーとこがあってな。そこに色々書いてたけど、結構当たってる」


「へぇ。どこらへんが?」


「たとえばここ。家でするなら、どんなHがしてみたいかって書いててさー。“彼女が実際に着ていた制服があったら、それでコスプレエッチしたい、と男は妄想する”だってさ。あー、めっちゃ当たってるわー」


「ふーん。あぁ、やばっ、遅刻する……!」


「あ、それで女のほうは、OLと学生のシチュエーションで書かれててさ。“泊まった翌朝、学生の彼を置いて仕事に出ようとしたら、玄関で、いってらっしゃいH。夜はお帰りHをしてみたい”って書いてるんよね」


「ちょっとごめん! もうそろそろ行くわ! 遅刻しちゃう!」


「……へへっ。待てよぉ~。(もみもみ)」


「何してんの!?」


「好きなんじゃないの? こういうシチュ……(どがっ)」





ほわわわ~ん。


「――ていう事が昨日あってなぁ……。遅刻しそうって言ってんのに何しとんじゃボケェ、だって(しくしく)」


くじら

「だから顔にあざが……」



※男はアホだ。

ぎゃふー!!Σ(‘■‘)



いや実は7月6日にね、


「THE PREDATORS」の1st Mini Album「Hunting!!!!」が


RELEASEされていたんですよっ!



AhHAーHAーHAーHAーHAHAHAー!!!(聞けば分かる/笑)



それで、近所に売っていなかったもんだから(しくしく)通販で頼んでおったのです。

それが、今日来て、もう「うはぁ」ですよ。

「うっひっひ」が「えっへっへ」で「うがえあたgヴぁあえが」ですな(笑)


THE PREDATORSというのは、

山中さわお様(the pillows)

JIRO様(GLAY)

ナカヤマシンペイ(STRAIGHTENER)

の三人で結成したバンドなんですね。


私は「フリクリ」というアニメを見てから、the pillowsにはまっていまして。

仕事をしている時に有線で山中さわお様の声が聞こえてくるではありませんか!

「あれ、ピロウズ!? にしては何か違和感が……。てかザ・プレなんたらとかバンド名紹介してたしなぁ……」

違和感ばかりを覚えつつ、家に帰ってネット検索してみたところ、プレデターズの真実に気づいたわけですな。今アドレナリンフル回転しているのでナニを書いているのか正直あまり分かりまへん。

ただ本能のままに!!

とにもかくにも、このお三方の一人でも好きな方は絶対に聞くべき!

いや、てか普通は好きだったら知ってるか……。


それじゃ私はこれからずっとTHE PREDATORSの曲を聴くのだ!!


話しかけんじゃねいやーいっ!!(笑)

電車に乗った。

向かいに座っている美人な女性がスカートをはいていた。

O脚なのか、それともそれが自然体なのか、微妙に足が開いている。
こ、こら見えるじゃないか。とか思いつつも視線はそちらへ。
あぁ、仕事をし始めてから何だか微妙にエロさ倍増かっ。とか思いつつも視線を逸らす。

……でも気になるのでやっぱりチラリ。

見えるか見えないの微妙なライン。そこに色気を感じているのか。
加えて彼女が綺麗な人だからか。
いや、でもやっぱりいけない。いくら見えそうだからって、じっと見ているのはよくない。
相手に失礼だ。


……私は視線を逸らした。


右へ。


左へ。





周りの男達は気にせずガン見していた。





はぁ(≠_=)y~~~