◆プロローグ◆
17年前の冬、そうあれは大晦日俺は働いていた六本木のバーを辞めて、当時住んでいた三軒茶屋のマンションで
先の無い不安で途方に暮れていた。
当時はバブルが崩壊直後で、内容の無い俺でさえイタリアのスーツに身を包み、人から貰ったポルシェを乗り回し、目の前の人生を謳歌しているだけの哀れな人間であった。
ちなみにポルシェは勤務先のバーの顧客のひとりから頂いたものである。
俺には数名の顧客がいて、例えば別の顧客は俺に「ちょっと箱根の自分のマンションまで運転手をしてくれないか」と、お礼にと、帯で100万円をくれた。
また別の顧客は「しゃぶしゃぶを一緒に食べたい」と言うのでお付き合いしたところ、帰り際お礼に200万円をくれた。
六本木のバーテンだった俺の給料は月25万円。
それ以外でお客さんから頂くチップがだいたい月50~100万円。
そんなふざけた時代だったのだ。
もう既に一人暮らしをして8年目になろうとしていた。
夢と希望しか無かった筈の若者は、いつの間にか現実に流され、見失い、夢がポケットからこぼれ落ちていた。
