「きわもの」という言葉、よく使われますね。漢字だと「際
物」と書きますが、今はあまり良い意味では使われていない
ように思います。
似た使い方をされている言葉に、「ゲテモノ」がありますが、
これは感じだと「下手物」と書かれ、趣味が悪いものを表現
する際に使われます。まあ字の如く「下手(へた)」、ただ
し「特長が際立った下手(へた)」を意味する場合にも、使
われます。
「際物」もその「ゲテモノ」と同じ意味で使う人は多いです
が、それはいささか違うのです。
江戸時代に「際物師」という商売がありまして、これはなか
なか人気がありました。どういう仕事かといいますと、季節
の商品を売る行商人です。
正月には、初夢を見るために使う「宝船の絵図」や「春の七
草」など、3月にはひな祭りの人形、五月は節句物、その後
は七夕やお盆に関連した商品などを、扱っていました。勿論
それらはほんの代表的な例でして、特別大きな行事のない季
節にもその時の情緒に合わせて工夫された商品を売り歩いて
いました。
「際物」というのは「間際の物」ということから生まれた言
葉でして、「今買わないと時期を外してしまいますよ」とい
う呼びかけでもあります。「瀬戸際の物」という解釈も、出
来ますね。
なので扱う商品はバラエティーに富んでいて、「際物師」は
なかなか粋な商売でもあったのです。