奥州の繁栄を築いた武将・藤原一族の3代目当主となった藤
原秀衡の屋敷には、虎吉という使用人がいたそうです。
馬屋での仕事を任されていたのですが、非常に働き者で秀衡
には特に可愛がられていたということです。
しかしこの男には、秘密がありました。正体が、河童だったとい
うのです。それを隠して働いていたのですが、同僚にバレてしま
ったそうです。
そのことで秀衡の態度が変わったとか周囲からイジメに遭った
ということはないのですが、虎吉自身の気持ちがどうにもいたた
まれなくなって、屋敷を出てしまいます。
その後虎吉は色々な場所を転々としましたが、田子谷の沼に住
み着くことになり、伴侶と子宝にも恵まれて幸せに過ごすこととな
ります。
その田子谷の前を通りがかった酒職人が、虎吉が子供たちと楽
しく遊んでいるのを見かけます。その様子があまりに生き生きし
ているため、河童がいかに水と相性が良いかを認識します。そし
て酒造りも、水が大事です。
ということで職人は河童を神とすることが商売繁盛と考え、沼のほ
とりに堂を建立し、虎吉を祀りました。それが「田子谷カッパ明神」
の始まりとなったそうです。現在もその堂はありますが、縁結びに
も御利益があるということです。