御庭番、いわば隠密。スパイです。そしてその役目をしてい
たのが、忍者でした。
この御庭番は、様々な職業の人間に身をやつし、各地を廻っ
て情報を集めます。その職業は、薬売りの他、僧侶、猿回し
の芸人などがありました。
ここまでは戦国時代以前と同じなのですが、江戸時代になっ
て変わったのは、各藩ごとに担当が振り分けられることです。
そのために必要となったのが、方言の習得でした。その担当
場所の方言を、土地の者と変わらぬほどにマスターするので
す。結構大変でした。
そこまでして集めた情報を将軍に直接報告するのですが、そ
のやり方には独特の方法があったそうです。
吹上御苑というのがありまして、天気の良い日、将軍は午後3
時からそこを散歩するのが日課でした。その吹上御苑の真ん
中には池があります。池の横に、御籠石と呼ばれる大きな石が
あるのでした。
将軍のその御籠石の上に立つと、物陰に潜んでいた御庭番が
素早く寄ってきて、他の者たちは逆に姿を消すのです。そして報
告が行われるのでした。勿論、他の者たちは一切その間、近づく
ことはできません。『暴れん坊将軍』で、毎回見られた光景でした
ね。