死者の供養や追善のために墓地に立てる細長い木の板のこと
を、「卒塔婆」といいます。この「卒塔婆」の生産日本一を誇るの
が、東京都西多摩郡にある日の出町という所です。
そうなったきっかけは、江戸時代の或る出来事に、遡るそうです。
元禄時代(1688~1704年)に、この地に住む村人が伊勢参宮
に出かけました。
その帰途となる浜松で、急病の僧侶と出会い、介抱したそうです。
僧侶はそのお礼に、「卒塔婆」というものと作り方を丁寧に教えた
ということです。
日の出町にとって幸運だったのは、「卒塔婆」が主に樅ノ木で作ら
れることでした。樅は柾目が白く、清浄です。そのため、戒名や経
文などを書く場合に墨がにじみにくく、コントラストの強い文字が表
れるという特徴があるのです。
更に樅ノ木は、風雨や日照にも耐えられ、虫害や腐食にも強いの
で、棺桶や船舶にも使われるなど、重宝しているのです。
日の出町はこの樅ノ木が、豊富にありました。なので「卒塔婆」の
生産には持ってこいなのです。そして技術力のある職人も豊富に
いたため、「卒塔婆」の生産が一気に進んだのでした。