1610(慶長15)年、関ヶ原の戦いから10年が経ち、徳川
家康が事実上天下を取った頃です。その家康の許に、1本
の奇妙な植物がメキシコ特使から届けられました。
寺島良安が『和漢三才図会』で「身かと思えば枝、枝かと思
えば葉、葉かと思えば実、まことに奇樹なり」と説明している
ように、家康を始め多くの日本人がその植物を見て、驚きま
した。
その奇樹というのが、サボテンです。種類としては、ウチワ
サボテンの一種だったと、言われています。
これと同じ頃、ポルトガルから日本に、石鹸が入ってきていま
した。これを当初は、ポルトガル語の通り、「シャボン」と呼ん
でいました。
石鹸、つまりシャボンの用途は、汚れを落とすことです。そして
実はサボテンの汁にも、油や汚れを落とす作用があるのです。
従って、江戸時代はこのサボテンの汁を、洗剤のような用途で
使っていたそうです。
なのでこの奇樹は、「シャボンのような」という意味の「シャボン
テイ」という名前になり、なまって「サボテン」と呼ばれるように
なったそうです。
今、サボテンが石鹸と結びつけて語られることはないし、石鹸
のような用途で使われることも、ほとんどないですね。