人間には、「品性」と「品行」の両方が、あるそうです。そ
のうち、「品性」というのは、人柄や人品といった、本性の
こと。「品行」というのは、文字通り、行ないのことです。
そして、「品性と品行の両方が揃うのが一番いいが、そう
でなければ、品性の方が大事だ。品性下劣が、一番いけ
ない」という名言が、あります。
そこで思い出すのが、パスカルの『パンセ』に出てくる言
葉です。
「人間は天使でなければ、獣でもない。人間は天使のよう
にふるまおうと欲しながら、まるで獣のように行動する」
獣のように行動する。ついつい品行が方正でなく、下劣に
なってしまうわけです。しかし「天使のようにふるまおうと
欲する気持ちがあればまだ、品性がかろうじて失われて
いないのかもしれません。まだ救いはあります。
天使のようにふるまおうと欲する気持ち、いわば「理想」ま
でも失ってしまうのを、「品性下劣」というのであって、救い
がなくなるということでしょう。